MMDは3Dツールとして「コロンブスの卵」的なもの
―― MMDの魅力はどんなところでしょうか。
ポンポコ 昔、LightWave※3などの専門ツールを使ってみたとき、サッパリ分からなかったんですよ。MMDのすごいところは、あにまささんのモデルが最初から付いていること※4なんです。ツールというよりはセットで用意されているので、初心者でもすぐに動かせるんですね。
※3 LightWave : 正式には「LightWave 3D」。モデル制作からアニメーションまで制作できる3DCGソフト。3Dソフトの中では安く、個人ユーザーも多い。
※4 MMDには初音ミクを初めとするボーカロイドキャラクターのCGモデルが初めから入っている。これは3Dツールとしてはとても珍しいもの。
樋口 3Dの映像を作るのは、モデリングから始めて、スキニング※5をして、動かして、というふうに行程がすごく長いんですよ。モデリングとスキニングが終わり、ようやく動かせるってころには疲れ果てて動画を作る気が起きなくなる、なんてことを聞きます。
かんな (魅力は)2つあると思うんです。モデリングがあらかじめセットされているということと、レンダリングが必要なく動画がすぐ見られるということもデカイですね。
※5 スキニング : リブと呼ばれる、3次元形状の元になる断面図を並べ、それをつなぎ合わせて複雑な曲面からなる形状を作り出す技法。
樋口 そうですね。最初にBlenderで動画を作っているときも、リアルタイムレンダリングじゃなかったんですよ。1分の動画で振り付けをやって、実際にそれが動画になっているのを見るまでにはレンダリングだけで8時間くらいかかっていたんですね。
なので出来上がった動画を見て気にくわない部分があると、その時間はムダになりますよね。だったらDirect Xでリアルタイムレンダリングで書けるようになるといいな、というのは、MMDを作った大きな要因です。
ポンポコ 作品作りってモチベーションが大事じゃないですか。でも、時間をかけたモノが全部ムダになるっていうのはすごくモチベーションが下がるんですよ。でも、MMDの場合、ちょっと動かして、ちょっと修正というのがストレスにならなくて。そのあたりも魅力の一つですね。
―― すぐに動画が見られるというのは、他のソフトだと実装されていないんですか。
樋口 リアルタイムで動かすことは出来るんですけど、その場合、何時間もかけてレンダリングした結果とは全然違う絵になっちゃうんです。色が付いていないとか、解像度が落ちるとか。出力した結果と同じ状態で見られるのはあんまりないですよね。
―― それはプログラム上のすごい工夫があるんですか?
樋口 いや、たとえば3Dのゲームなんかはリアルタイムで表示されてますよね。その技術と同じことしかやってないんですよ。3Dの映像を作るツールはもっと複雑な計算をして綺麗に見せているので、時間がかかるんです。
かんな 3Dソフトとしてはコロンブスの卵的な発想なんですよね。あえてすごいシンプルな見せ方で、リアルタイム性を追求するという事を、ゲームじゃなくて映像ツールとしてやるっていうのは、他の3DCGソフトでは品質優先なので、そういう発想がなかったんですね。