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日本HP、ノートPCの「東京生産」を開始した昭島工場を公開!

2011年08月25日 22時00分更新

文● 大河原克行

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 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は、2011年8月8日から、同社昭島事業所においてノートPCの生産を新たに開始した(関連記事)。

「MADE IN TOKYO」を実現する日本ヒューレット・パッカードの昭島事業所。一日6000台のPCを生産している

社内に掲示されている東京生産を標榜するポスター。生産ラインにはMADE IN TOKYOの文字が張り出される

東京生産のこれまでの歴史

2011年8月8日から東京生産を開始したhp ProBook 6560b Notebook PC(左)とhp Elitebook 2560p Notebook PC(右)

 昭島事業所の前身となる旧コンパック時代のあきる野事業所で、1999年7月から法人向けデスクトップPCの生産を開始。2001年7月からはワークステーションの生産を開始。日本HPに合併後は、昭島事業所としてこれを継承。2006年6月から生産しているx86サーバー、2007年3月からスタートした個人向けデスクトップPC、2010年6月から生産を開始したオールイン型個人向けPCとともに、いよいよノートPCも、昭島で最終組立を行なう体制を整えることになる。

 日本HPの取締役副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏は、「まずはビジネス向けノートPCの2機種から東京生産をスタートしたが、11月には第2弾として扱う機種数を増やし、年内にはかなりの機種に広げたい。来年2月には個人向けノートPCを含めて、ミニノート以外のすべての製品において、東京生産を行ないたい」と語る一方、日本HP パーソナルシステムズ事業統括PSGサプライチェーン本部本部長兼昭島事業所 清水直行所長は、「お客様に高信頼の製品を自由にカスタマイズし、短納期でお届けできる。これが東京生産のメリット。日本のお客様に最も近いIT企業になる」とする。

日本ヒューレット・パッカードの取締役副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏

日本ヒューレット・パッカードパーソナルシステムズ事業統括PSGサプライチェーン本部本部長兼昭島事業所・清水直行所長

 今回のノートPCの東京生産は、岡副社長が約6年にわたる米本社との交渉の結果、ようやく実現したものだ。

 「ノートPCは、構造上の特性から、ODMで集中生産したほうが効果が出やすいと言われていた。そのため、日本での最終組立に本社は強く反対してきた。だが、日本のユーザーは、納期を重視したり、導入時の効率化を図るために事前にカスタマイズしてほしいといった要求が強い。従来はデスクトップPCだけだったが、これを市場の7割を占めるノートPCに広げることで、さらにシェアを拡大できる」と語る。

 昭島事業所では、カスタムインテグレーションサービス(CIS)として、BIOS設定、資産管理タグの貼り付け、指定品の同梱といったサービスを提供。企業ごと、あるいは企業内の個人ごとにカスタマイズしたパソコンを生産できる点が特徴だ。これは東京に日本法人独自の生産拠点があるからこそ成しえるものだ。

 岡副社長がシェア拡大に直結すると語るのは、東京生産を行なってきた製品がことごとくシェアを拡大してきた実績が背景にあるからだ。

 法人向けデスクトップPCでは、首位を争う領域までシェアを拡大。同じく東京生産を行なっているワークステーションのシェアも40%を越える。

 「ノートPCは海外で生産をしていたため、受注から納品までの期間は約2週間となり、国内のPCメーカーと比べても納期が大きな課題となっていた。タイミングによっては、いま発注して納品が来月となるため、販売機会損失となっていたり、ディストリビューターが独自に在庫を抱えて短納期で収めるという形になり、パートナー会社にコスト負担をかけることになっていた。だが、今回のノートPCの東京生産により、デスクトップPCと同じ5営業日での納品が可能になり、販売機会の損失を防げる」。

東京生産によって、スピードと柔軟性が高まるという

 14日間の納期を5日間とすることで、実に9日間の納期短縮が可能となる。つまり1ヵ月に換算すると、3分の1にあたる日数が短縮できる計算だ。「1ヵ月の3割の日数を短縮できれば、ノートPCの販売台数を3割伸ばしてもいい」と、岡副社長は意欲をみせる。

 東京生産による納期短縮が、シェア拡大に有効に作用するというのが、岡副社長の経験則からのものだ。

 米国本社を説得して、日本だけ唯一ローカル生産を認めさせたのも、こうした日本における長年の実績が背景にある。また、世界的にみても、事業体質が強固であることが追い風となっている。

 同社の全世界でのPC事業の営業利益率は5.9%となっている。各地域における営業利益率は明らかにしていないが、「日本は、世界各国の状況と比べても健全なビジネスを行なっている」という状況にある。こうした健全な経営体質へと転換していることも、最後の壁であったノートPCの東京生産を可能にした要因のひとつだ。

 「国内におけるビジネスノートPCのシェアでは第4位。次のステップとして、トップグループの中でビジネスができるポジションへと、早期にシェアを引き上げたい」と岡副社長は語る。

 もちろん、人件費が高い東京生産は、海外生産に比べればコストの上昇はあるだろう。しかし、トータルコストとしてみた場合には、プラス効果があると岡副社長はみる。

 「2週間の納期としていたノートPCは、日本に輸入される際には飛行機を利用している。この物流コストまで含めると、中国生産も東京生産もそれほど差はない。また、過去3年で人件費が2倍になったといわれる中国で生産を続けるほうが、コスト上昇幅のリスクが大きい。

 PCビジネスの損益を左右するのは、製品の投入タイミングや、販売機会損失、過剰在庫による最終処理コストといったものがほとんどである。5営業日で納品できれば、ディストリビューターも不用意に在庫持たなくて済み、在庫を処分するという売り方をしなくて済むようになる。こうした点でもメリットは大きい」とする。

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