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注目株「UpNext 3D NYC」をクローズアップ

NYの街が3Dでスルスル動く! iPhoneアプリ開発の舞台裏

2009年07月09日 17時00分更新

文● 宮本朱美

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iPhoneはAndroidに比べて検証が楽

── Googleマップと比較した場合の、UpNextのウリはなんですか?

ラジさん:Googleマップはドライブに最適化されていると思います。どこからどこに移動するとか、ストリートにフォーカスしている。

 一方でUpNextは、建物ひとつひとつにフォーカスしています。ビルごとに、どんな店があるか、店舗情報を建物ごとに見られる。もちろんオフラインで地図が見られたり、地下鉄地図をオーバーラップして表示できるのも強みです。

地図右上のマークをタッチすると、現在表示中の地図に地下鉄路線図を重ね合わせて見られる。オフラインでも地図とGPSを使ってナビゲーションできる


── ニューヨーク以外の都市ガイドも考えていますか?

ラジさん:はい、サンフランシスコの3Dガイドはもう開発を進めており、現在プロトタイプを試験中です。都市によって、交通手段や情報ソースが違うので、きめ細かなローカライズの必要があると感じています。

 例えばニューヨーク版では、建物地図に重ねて地下鉄マップを表示できますが、ロサンゼルスの地図を作るんだったら、地下鉄網がないから別の交通手段を見せなければならない。また、地図以外の情報、ユーザーレビューや店の情報を集めたサイトが、都市によって異なるので、そういったサイトから情報をひっぱってくる仕組みも変更しないとなりません。


── サンフランシスコの建物は自分たちで3D化したんですか?

ラジさん: ニューヨークは自分たちで3Dモデル化しましたが、サンフランシスコはほかの会社からモデルを買いました。ただしそのまま使うのではなく、iPhoneで高速に表示できるように改造してあります。具体的には、ポリゴンの数をできる限り減らすことです。


── Google Earthには、ユーザーが作って投稿した3Dビルディングが数多くあります。あれを利用できないんでしょうか?

ラジさん:技術的には可能ですが、ライセンス的にはNGです。Google Earthにユーザーが投稿した3Dデータは、ほかのマップアプリではそのまま使えません。

 そうしないとマイクロソフトがGoogle Earthの3Dオブジェクトをそのまま引っこ抜いて、自分たちの地図サービスに組み込む可能性もありますよね? だからグーグルは他の地図アプリには3Dオブジェクトの使用許可を与えないはずです。


── 今後の開発予定は?

デジタルコンパスを活用したiPhone 3GS標準の「コンパス」アプリ

ラジさん:新しいiPhoneにはデジタルコンパスが搭載されたので、そうなるとユーザーがどちらの方角を見ているかもiPhoneで判別可能になります。地図アプリとしては、ジャイロスコープに対応するアップデートは必須でしょう。

 あと、CPUの高速化や、メモリー容量が増えたのは、私たちのアプリにとってはうれしいですね。いまは建物しか3Dモデル化されていませんが、今後は木々も3Dで表示したいと考えています。街路樹が追加されれば、街や公園のイメージがいっそうディテールを増して、より本物に近い感覚になると思います。


── AndroidやWindows Mobileなど、他のケータイ用アプリの開発は考えていますか?

ラジさん:Android版も開発したいのですが、現在市場にあるAndroid携帯はCPU処理能力や3D性能がiPhoneより低く、残念ながら私たちの3Dマップを表示する性能を満たしていません。

 ただし、今年は複数のメーカーから新しいAndroid携帯が登場すると思われるので、もっと高速な端末が出てきたら開発に着手したいです。


── でもそうなると、どの機種なら動くかどうかテストが大変ですね。

ラジさん:そうなんですよ。iPhoneの場合はモデルが限られているので動作テストの手間が少なくて済むのですが、アンドロイドケータイはいろんなメーカーから異なるハードウェアで登場するので、動作テストが大変なことになると思います。


── ラジさんが注目しているiPhoneアプリは何かありますか?

ラジさん: 私はあまりTwitterを使わないのだけれど、「Tweetie」には感心しました(iTunes Storeで見る)。スクロールがものすごく高速なんですよ。


── 最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

ラジさん: 東京は巨大な都市なので、建物を3D化するのはとても大変ですが、やりがいのあるチャレンジだと思います。私自身、2年前に日本に2週間滞在しましたが、東京の街の構造は地下街など立体的なので、3D化したらとても便利だと思います。ぜひ東京版も出したいですね!


筆者紹介──宮本朱美


MacPower、週刊アスキーの編集者を経て、現在はフリーランス。iPhone用ノートアプリ「RainbowNote」(iTunes Storeで見る)の開発も行っている。



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