『アンティキテラ』を読んでいるのと並行して、ここ数週間ほどの間、学研『大人の科学マガジン』Vol.24として発売される「4ビットマイコン」の付録コンピュータをいじっていた。現在のコンピュータの直接的な先祖は、英国で1948年に完成した「BABY」だとされている。BABYと名付けられたこの機械の記憶容量は128バイトである。ところが、大人の科学の付録コンピュータは、BABYよりさらに小さい、プログラム領域が40バイト、データ領域が8バイトしかない。
漢字にして俳句(17文字)以上、短歌(31文字)未満の情報量しかないコンピュータというわけだ。それでも、一応プログラムを書いて結果を数字1桁のLEDなどで表現できる。これに比べたら、古代ギリシャのアンティキテラの機械は、むしろいまのパソコンで実行すべき精巧な天体シミュレータともいうべきものだろう。
4ビットマイコンをいじっていると、BABYでデジタルの新天地に踏み出した研究者たちの気分を、おそらくこうだったろうと感じることができる。そして、古代ギリシャでアンティキテラで世界を模倣しようとしたその製作者(アルキメデスではないかという説もある)の気持ちも分かるような気もしてくる。60年、2000年と時間をさかのぼるのは、ちょっとしたタイムトラベルのような感じではないか(4ビットマイコンとアンティキテラの機械はまるで似ていないのだが、計算しようとするピュアな心が共通しているのだ)。
それでは、いまのコンピュータは何のために作られ、使われているのだろう? 世界中の情報を整理してアクセスできるようにするというグーグルは、その先に何をめざしているのか。新検索エンジンやクラウド戦略で巻き返しをはかるマイクロソフトは、何を考えているのだろう。どこにも、そのことまでは書かれていないのだ――そんなことを考えたくなる、2つのコンピュータだった。
アンティキテラの機械から2000年経った現在の、最新のコンピュータともいえる「iPhone」についてのトークセッション『次世代モバイルは世界をどう変えるか ~iPhone利用調査+次世代モバイル徹底討論~』を開催します。
アスキー総研調査によるiPhoneの利用実態をご報告するほか、元マイクロソフト会長の古川 享氏らが、モバイルコンピューティングの未来を語ります。
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