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実例に学ぶ ブログ炎上第2回

やらせ系ブログの炎上

2007年01月01日 00時00分更新

文● 伊地知晋一

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今日もどこかでブログが燃えている。 コメントが殺到し、閲覧不可能になってしまう、世に言う「炎上」である。炎上を過度に恐れ、ブログをビジネスで使うことに及び腰の企業が存在する。しかし、直接的な顧客やユーザーとの接点の場を持つことができるというメリットを考えれば、ブログを利用しない手はない。炎上アナリストとして数多くの炎上ブログを観察してきた専門家が、そのメカニズムを解明し、ビジネスシーンでのブログ活用術をアドバイスする。

企業がPRにブログを利用

 企業の代表者やスタッフが、IRや自社商品のPRのためにブログを書くケースが増えています。社長ブログばかり集めたサイト「News2u 社長ブログ」も登場している状況です。

 うまくいけば、広告宣伝費をほとんどかけずに、口コミ的に情報は広がりマーケティングに貢献しますが、下手をすれば、炎上に繋がり顧客ロイヤルティ(忠誠心)は低下するでしょう。

 ブログやソーシャルネットワーキングサービスなどのWeb2.0型のメディアを利用した、口コミマーケティングの威力は見逃せない反面、テレビやラジオ、新聞、雑誌といった、運営者から消費者へ一方的に配信される既存メディアを利用したPRの場合では、従来のマーケティング担当者があまり経験したことがない、批判的な力が同時に働いてしまう世界です。

やらせブログ
(身分を偽って企業のPRを行なうブログ)

 2005年11月に、ソニーが新しいウォークマンの発売に合わせて、製品を使用している4人の消費者のブログを紹介したことがあります。「ウォークマン体験日記」というブログです。しかし、そのブログを見た人達から、掲載されている写真が不自然であることから、素人のふりをした企業のやらせブログではないかとの疑いを持たれました。その結果、ブログのコメントにやらせである根拠や批判的な意見の書き込みが増大し、オープン3日で閉鎖に追い込まれた事がありました。これはブログの閲覧者が、「やらせ」のような嘘を嫌うことで発生する炎上の例です。

 ブログを使ったPRに企業が作ったお仕着せの宣伝文句を載せたり、批判的な意見を書かれることを恐れるがあまりに、その企業が用意したプロのライターに、ブログを書かせることがありますが、それ自体は特に問題がある訳ではなく、プロのライターであることを明かして(身分を偽らず)ブログを書けば炎上は起こらなかったと思われます。また、一般の消費者(素人)が書いたブログでないと口コミが発生しない訳ではないことも理解すべきでしょう。

 結論として、ブログを閉鎖せずに、誤りがあれば謝罪し、身分を明かした上で再スタートするのが、失ったロイヤルティを回復し、当初の目的であったPRを実現するための方法だったのではないかと思われます。

女子大生のブログ炎上

 企業から1回数千円の費用をもらい、自身のブログにPRの記事を掲載するサービスが出始めています。また、これらのブロガーを束ね数万人のネットワークを組んでいるエージェントも現れており、企業からの依頼でブログの作者に声をかけ、商品PRを書かせています。

 実際に、2006年11月3日放送のNHK「ニュースウォッチ9」で、女子大生である坊農さやかさんが、企業の口コミマーケティングのためにお金や試供品を貰ってブログを書いていることが紹介されました。

 このことをきっかけに坊農さやかさんのブログ「Miss Cam Blog Tiara Girl」を読んでいた人たちの反感を買い、「2ちゃんねる」でURLが掲載され掲示板に批判的な投稿が殺到(ネットの世界で「祭り」と呼ばれる現象)、同時にブログのコメントに批判的な意見が集中する炎上が発生しました。

 私自身は企業からお金を貰ってブログ上でPRに協力する事自体は何ら問題ないことだと思っています。ただ、故意でないにせよ、その事実を表に出さず、このブログの作者が本当に自分の興味があるものについて書いているとのだと信じていた読者(ファン)の人達が、裏切られた気持ちになった事が原因で炎上が発生しました。

 特定のブログのファンになった人は、「やらせ」などの嘘を強く嫌うところがあります。テレビなどの既存メディアでは、多少の着色があってもクレームになりませんが、ブログに関しては、身近にその人と接しているようなリアリティを持っているため、現実の世界と同様に、嘘に対して違和感を感じやすいのです。

 このケースは、ブログの作者に元々ある程度カリスマ性があるので、企業に依頼されてPRしていることを明示して運営すれば、何の問題も無かったでしょう。

 現在、坊農さやかさんのブログは平穏に運営が続けられています。

ブログはリアリティのある世界

 ネットの世界には情報が溢れており、ネットを使い慣れた人は、自分でその情報が正しいのか、そうでないのか、を判断する力を身に着けている人が多いようです。そのために「やらせ」のような嘘を見抜くことに長けているように見えます。

 SONYのブログと違い、坊農さんのブログが全焼しなかったのは、負けずに続けたことに尽きます。たとえ炎上しても閉鎖せずに、自らの言葉で謝罪なり弁解なりを行ない継続する。それでも炎上する時は、さらに謝罪や弁解を行なう粘り強さがあれば、いつかは鎮火するということです。

 ブログはホームページと異なり、よりリアリティがあり、ここだけの話的な雰囲気があります。そのせいか1対N(多)のメディアでありながら、1対1に錯覚してしまうような特性があります。別の言い方をするとラジオの深夜番組に近い感覚なのかもしれません。

 そのために、騙されたと受け止められてしまった時には、ロイヤルティが高い読者ほど強い違和感を感じてしまうのでしょう。

 Web2.0型メディアの特徴である双方向が、従来のメディアよりも、人と人の結びつきを強くしてしまうからこそ、口コミの効果もあるが、裏切られたと感じた時のマイナスの力も強くなるのです。

著者・伊地知 晋一(いじち しんいち)プロフィール

伊地知氏
伊地知氏写真

株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役。 1968年生まれ。e-mailを活用したマーケティング会社を経て、2000年ライブドア(当時オン・ザ・エッジ)へ入社。執行役員として2003年「ライブドアブログ」をスタートさせ、国内最大のブログサービスに育て上げる。その後、2年半の間に「やわらか戦車」のプロデュースを行なうなど、50以上のネットサービスを手がける。著書に『CGMマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ)がある。


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