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実例に学ぶ ブログ炎上 第3回

不謹慎な発言で炎上

2007年01月01日 00時00分更新

文● 伊地知晋一

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ブログやSNSで不謹慎な発言が横行し、炎上に至るケースが増えています。主に個人のブログで発生することが多いので、企業にとってはリスクだと考えていないことが多いでしょう。しかし、炎上した個人の所属する会社や組織にまで苦情が殺到する場合もあり、無関心ではいられない状況となってきています。

飲酒運転などを自慢気に日記に書き込み炎上

 2006年11月、SNS内の日記に、大阪のある未成年の大学生が飲酒運転を行なったことを書き込みました。その結果、その学生が所属する大学のコミュニティなどで「不謹慎だ」「指導が不十分」といった批判が殺到し、炎上が発生しています。実際に大学側にまで批判がよせられたため、大学が記者会見を行ない、監督不行き届きを謝罪しました。

 また、その後大学のホームページで「未成年飲酒・飲酒運転の禁止について」というテーマで、学校側が声明文を発表し、学生向けに周知を徹底する対応を取らざるをえなくなっています。

 ほかにも、同じく11月「飲酒運転事故を起こした父親の代わりに、飲酒の検査をする風船を膨らまして、飲酒運転を免れた」と日記に書き込んだユーザーがいました。

 ユーザーとしては軽い気持ちで日記を書いたのでしょうが、こういった犯罪行為に関してネットユーザーは強い反発を示します。コメント欄には「笑えない」「犯罪者日記ですね」といった批判のコメントが殺到しました。

 公衆の面前でこれらのような「飲酒運転をした」といった発言をすれば、当然批判されることは予想されるのにもかかわらず、ネット上で公開してしまう人が後を絶ちません。

 これは、ブログやSNSは個人的な日記の雰囲気があるために、ネットの向こう側でたくさんの人が見ていることを忘れてしまうからだと思われます。

執筆や講演などを行なっている言葉のプロでも炎上

 2006年10月には、評論家の池内ひろ美さんのブログ「池内ひろ美の考察の日々」が炎上しました。

 「期間工(トヨタ)」と題された回で、会社経営者と医者の友人で居酒屋へ行き、そこで出会ったトヨタ自動車の期間工とのやりとりを書いています。その中で、「彼らはトヨタを漢字で書くことができるのだろうか」「彼らに年間300万円払っているトヨタは偉い」などといった記載が「期間工を馬鹿にしている」と反感を買いました。

 その後、批判的なコメントを受けて、池内さんは後日のブログで、「差別をしたわけではない。文章をきちんと読めば分かるはず」と自己正当化した記載を行なったため、閲覧者にとって「燃料投下」(批判的なコメントに対して、さらに怒りを買うような反論を行なうこと)となり、炎上に至っています。

 テレビや講演で発言し慣れている人がどうしてこのような事態に至ってしまったのでしょうか?

 誰しも失言してしまうことはあると思いますが、TVや新聞などはどんどん新しい情報が出てきますし、過去のアーカイブを見られないという“利点” があります。一方、ネット上では見たいと思ったら誰でもすぐに見にいけるのです。そのため、ブログやSNSでの失言は、良いことも悪いことも予想外の反響が起きたり、長く尾を引く傾向があります。

 さらに、自分のブログを読んでいる人は自分と同じ感覚、もしくはそれに同調しやすい人しか読んでいないと錯覚して記事を書くことも炎上の原因となります。そのことを池内さんが十分認識していなかったということでしょう。

常にネットの向こう側に居る人達を忘れない

 これらの事例に共通している点は、PCに向かってブログやSNSで日記を書いていると、その向こう側にたくさんの知らない人達が居ることを忘れがちだということです。

 ネットに掲載することは公に発表することでもあるので、悪口を書けば、書かれた人も見ている可能性が高いと考えたほうが正しいのです。 ある人が、誰にも気づかれていないと思って書いていたブログが、実は皆知っていたというケースを何度か見たことがあります。

 現実の世界で非難されるような発言は、ネット上でも例外ではなく批判されますし、むしろネット上ではより大きな問題になる可能性があることを理解すべきでしょう。

 たとえば、コンビニエンスストアやファーストフード、書店、イベント会場の売店などといったさまざまなケースで店員がブログや日記で客の悪口を書き込んだことがきっかけで、その店員を雇用する会社に抗議が殺到し、その結果会社が正式に謝罪にするケースも少なくありません。

 とりわけ、SNS内では、実名、住所、年齢、誕生日などの個人情報を公開している人も多く、そういたユーザーの日記/ブログが炎上すると、あっという間に所属企業や学校などがウェブ上でさらされ、現実の世界にも被害が及びます。

 このようなことから、会社でブログやSNSに参加していなくても、炎上とは無縁ではありませんし、ブログに対するリテラシーを社員に十分浸透させていないと企業や組織がダメージを受けることになるのです。

 リンクやブログのトラックバック、RSSなどのインターネットならではの機能により、ブログやSNS内の書き込みは、旧来メディアよりも強力に口コミで伝染(リンク)していきます。それだけでなく、ネット上で情報を発信するときには良い情報も悪い情報も尾を引く、「ロングテール」と言われるインターネットの力学を十分に認識する必要があるのです。

著者・伊地知 晋一(いじち しんいち)プロフィール

伊地知氏

伊地知氏写真

株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役。 1968年生まれ。e-mailを活用したマーケティング会社を経て、2000年ライブドア(当時オン・ザ・エッジ)へ入社。執行役員として2003年「ライブドアブログ」をスタートさせ、国内最大のブログサービスに育て上げる。その後、2年半の間に「やわらか戦車」のプロデュースを行なうなど、50以上のネットサービスを手がける。著書に『CGMマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ)がある。


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