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実例に学ぶ ブログ炎上 第6回

コミュニティ内の炎上

2007年01月01日 00時00分更新

文● 伊地知晋一

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リアルな世界に社会常識があるように、インターネットの世界にもマナーがあります。それを無視した言動をすれば、いかに大企業のサイトといえども炎上を招くという事態になります。ひとたび炎上すると、企業のブランドイメージを傷つけることはもちろんのこと、対応がまずければ抗議活動や不買運動にまで至るケースも想定されます。

ドコモのコミュニティサイト、
10日あまりで閉鎖

 NTTドコモは新サービス「プッシュトーク」のPRを目的に2006年6月13日、国内最大手のSNS「mixi」内に「プッシュトークです、どーぞっ!」という名称のコミュニティを開設しました。mixi側に利用料を支払い、公認コミュニティとして立ち上げたものです。

 プッシュトークはNTTドコモの携帯電話を使って最大5人までのグループで通話ができるコミュニケーションサービスで、ユーザーの認知度を高めるため、mixiのコミュニティを活用した口コミマーケティングを狙っていました。

 しかしながら、結果は惨憺たる有様でした。コミュニティ内のトピックの書き込み欄がアッという間に炎上し、開設からわずか10日後の同月23日にコミュニティを閉鎖することとなりました。

 炎上した原因は管理人がコミュニティを拒否するかのような行為に出たため、ユーザーからの反発を買ったことでした。このコミュニティでは、NTTドコモから任命されたという「プッシュガール」という管理人がmixi利用規約にはない独自の運営方針を掲げていました。たとえば、「管理人の承諾のないトピック、イベント、アンケート、レビューの作成はご遠慮ください」といった形で、ユーザーの自由な発言をできないように制限したり、ユーザーからの意見を募集したときも「すべてのご意見にはお応えできかねますので、予めご了承ください」と書き記し、ユーザーからの質問の多くに答えませんでした。

 管理人はプッシュトーク以外の話題の書き込みや承諾のないイベントおよびアンケートを禁止するだけでなく、友人のリスト「マイミクシィ」への申請を拒否するなど、mixiの機能そのものを無視するような運営を行ないました。当然ユーザーからは「コミュニケーションを無視するなら、mixiでやる意味がないのではないか」といった批判が起こり、意見を述べても無視されたユーザーの気持ちを考慮しないで一方的に企業の論理を押し付けるやり方がmixiユーザーの反感を買ったのです。すぐに、2ちゃんねるなどで「祭り」状態にされた挙げ句、炎上を招きました。

一方的な企業の論理は通用しない

 会員同士のコミュニケーションが目的であるコミュニティサイトでコミュニケーションを拒否するような態度に出れば、ユーザーが不快感を抱くのは当然です。当初は管理人に対して考えを改めるよう促すコミュニティ参加者の声もありましたが、あくまでかたくなな管理人の対応にいら立ち、「何のためにこのコミュニティを立ち上げたのか」との疑問から「mixiにいるべきではないのではないか」、ひいては「mixiから出て行け」との動きとなったようです。

 特にコミュニティでは、同一コミュニティ内のユーザー同士で互いの同質性を求め合う傾向にあります。たとえ個人であろうと企業であろうと、価値観を共有できない相手には厳しい対応をしてしまうのです。これは禁煙席で喫煙する人や、電車内で大声を出して携帯電話を使用している人に対し周囲が反感を持ちやすいというのと同じことです。

 ドコモ側が独自のルールを明確にしたのは、本来の目的であるプッシュトークのPRだけを効率的に行なえるよう、コミュニティを主体的にコントロールしたかったからだと思います。しかしながらブログやSNSのようなWeb2.0系のサービスは、読者と1対1で接する要素が強いので、感情を持った生き物を相手にしているという感覚を持っていなければなりません。このため、必ずしも自分たちの思い通りに物事が進むとは限りませんし、「お金を出して宣伝するのだから、自分たちの思うようにやらせろ」という企業の論理は通用しないのです。同じネット広告でも、バナー広告のような従来型の延長線上にある広告媒体とは異なるので、単純に安価で情報が広まりやすい便利なツールだと思っていては痛い目に遭うことでしょう。 マナーを知らず実害に発展することも

 もっとも、わずか10日でサイトを閉鎖したNTTドコモにとっては、有名人を起用したテレビCMのような大金をかけたわけでもないので、それほど大した損害にはならなかったはずです。ブロガーのなかには「ドコモはリテラシーの低い会社だ」との書き込みもみられ、多少はブランドイメージに影響したかもしれませんが、実害は軽微でしょう。

 ただ、インターネットのサイトは閉鎖してもgoogleのキャッシュ機能があるため、「汚点」は残り続けることになります。キャッシュ機能とブロガーによるリンクによって、最近の大きな炎上事例は1年ほど語り継がれる傾向にあるようです。

 NTTドコモの場合はmixiという閉鎖された空間であったのでコミュニティ炎上と閉鎖で事態は収束を迎えましたが、下手をすると企業は大きな実害を被ることもあります。

 たとえば、2005年夏に起きたいわゆる「のまネコ問題」は、エイベックス・グループ・ホールディングスが2ちゃんねるなどで広く使われていたアスキーアートによるキャラクター「モナー」に類似した「のまネコ」の商標登録を出願し関連グッズを発売したことに端を発しました。

 2ちゃんねらーの多くは、「すでに広く使われている自分たちのキャラクターを1企業が金儲けに利用している」などとの理由で反発し、2ちゃんねるでの「祭り」状態となりました。しかしながら、事態はそれだけでは収まりませんでした。エイベックス側が「モナーなどの既存のアスキーアートキャラクターの使用を制限する意図はない」などとする見解を発表して「燃料投下」したこともあり、エイベックス関連商品の不買を促す書き込みや、リアルな世界での抗議活動にも発展し、最終的にはエイベックス側がグッズによるロイヤリティを放棄し、公式謝罪するまでに至りました。このように、ネットユーザーのマナーを無視するような行為を行うと抗議活動や不買運動にまで発展する可能性もあるのです。

 ネット上のコミュニティを使って企業がプロモーション活動を展開するなら、そのコミュニティの空気を読み、ユーザーに反感がもたれないような対応をしっかりと心がけるべきです。

著者・伊地知 晋一(いじち しんいち)プロフィール

伊地知氏

伊地知氏写真

株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役。 1968年生まれ。e-mailを活用したマーケティング会社を経て、2000年ライブドア(当時オン・ザ・エッジ)へ入社。執行役員として2003年「ライブドアブログ」をスタートさせ、国内最大のブログサービスに育て上げる。その後、2年半の間に「やわらか戦車」のプロデュースを行なうなど、50以上のネットサービスを手がける。著書に『CGMマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ)がある。


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