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ENERMAX ECO80+シリーズを研究所で徹底解剖!

2009年04月25日 20時00分更新

文● KONG

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サージ耐圧試験

 さて、ここからが電気的試験の本番、サージ耐圧試験だ。
 サージ耐圧試験とは、「雷」の強力なノイズを再現するもので、前項の瞬間停電よりもかなり深刻な問題をPCにもたらす試験だ。瞬間停電で壊れる恐れがあるのは、保存していないデータくらいだが、雷の場合、電源ユニットを含むPCパーツが破損する可能性を秘めている。なおこのテストは本物の雷をブチ込むのではなく、あくまでも雷が発生した際のノイズを再現するものだ。こちらもテストに使用した電源ユニットは「EES400AWT」だ。

中央のマシンが「電源ライン雑音許容度試験装置」で、ノイズ研究所の「EMC-9000」という機械

最大で20kVまたは4kAまで印加可能だ

電源ユニットはATXコネクタ16-17ピンをショートさせた状態で放置

雷ノイズを発生させた様子

 電圧ノイズの印加テストでは、500Vから始めて、1kV、5kV、そして最大の20kVまで印加したが、EES400AWTは壊れることはなかった。EES400AWTは電圧ノイズにかなり強いようだ。なお他のテストのように何かが動いているわけでもなく、スイッチを押して雷サージをAC100Vラインに印加するだけなので、テストそのものは非常に地味である。目の前で雷でも落としてくれれば……と思ったのだが、一般的に目の前のPCにピカッと光って雷がダイレクトに落ちるなんてことは、ありえない(ホントに落ちたら目撃者も黒コゲ)ので、今回はそんなテストは行なっていない。

電流ノイズはどうかな?

 この試験機では電圧ノイズのほかに、電流ノイズを印加することもできる。実は電流の方が耐えるのは困難で、よほど強力なサージプロテクターを搭載していないと耐えることは難しい。先ほどは電圧ノイズのみだったが、今度は実際の雷により近付けるために、電圧と電流ノイズを同時に印加して試してみよう。EES400AWTは、本当に雷からPCを守ってくれるのだろうか?
 通常の雷の電圧は10kV前後と言われている。そこで電圧は10kVに設定し、同時に500Aの電流ノイズを印加してみた。
 すると、一瞬にして電源ユニットは停止した。
 調べてみるとヒューズが切れていた。ヒューズを交換すれば普通に使えるだろうが、それじゃつまらない! ということで、ヒューズを直結状態にして、再びサージノイズを印加してみた。すると、パチッという音とともに電源ユニットから白煙が上がり、あたり一面が焦げ臭くなった。

電流ノイズを発生させている様子。中央の緑色の輪は、電流値を測るクランプ

黒く細長いのがヒューズ

コイルの右下にある黒いカバーに覆われた部品が、急激な大電流の入力を防ぎ、電源を保護するパーツ「Surge & Inrush Protection」だ。このあたりから煙が出た。コイルの下にあるピンクの抵抗も変色しているようだ

 調べてみると、電源ユニットの一次側にある大きな抵抗が変色しており、これで本当に電源ユニットは再起不能となった。ところが、接続していたPCケースファンを他の電源ユニットに接続してみたところ、問題なく動作した。
 一般的なPC用電源は、安全規格により1kVもしくは2kVの雷サージに耐えられるように設計されている。今回は安全規格を遥かに超える10kVの電圧を印加してみたのだが、ヒューズが切れたことで大ダメージには至らなかった。だが、ヒューズは雷サージを防ぐようには設計されていないはずだ。そこでヒューズが無い状態でも試してみたが、やはりケースファンは破壊されなかったのだ。PCケースファンは電子部品ではないため、これがPC本体だったらどうなるかは分からない。しかし、少なくとも強大な電流がPC内部のDCラインに流れれば、間違いなくPCケースファンも燃えているはずで、そうならなかったということは、電源ユニットに内蔵された保護パーツがPC内部への影響を防いだと換言できるだろう。

(次ページへ続く)

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