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NECエレクトロニクス、HD DVDプレーヤー/レコーダー向けのシステムLSI“EMMA3”のサンプル出荷を開始

2006年12月27日 16時35分更新

文● 編集部 小西利明

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HD DVDやデジタル放送の再生/録画が可能なシステムLSI“EMMA3”(注:同じチップが2個並んでいる) EMMA3を搭載した東芝のHD DVDプレーヤー『HD-XF2』
HD DVDやデジタル放送の再生/録画が可能なシステムLSI“EMMA3”(注:同じチップが2個並んでいる)EMMA3を搭載した東芝のHD DVDプレーヤー『HD-XF2』

NECエレクトロニクス(株)は27日、HD DVDプレーヤー/レコーダー向けのシステムLSI“EMMA(エマ)3”のサンプル出荷を開始したと発表した。2つのCPUコアにHD DVDやデジタル放送のビデオ/オーディオデコードに必要な機能を1つのチップ内に集積したシステムオンチップ(SoC)となっている。すでに(株)東芝のHD DVDプレーヤー『HD-XA2』『HD-XF2』などに採用されている。

EMMA3を搭載する東芝のHD DVDプレーヤー『HD-XA2』の内部と、基板上に実装されているEMMA3
EMMA3を搭載する東芝のHD DVDプレーヤー『HD-XA2』の内部と、基板上に実装されているEMMA3

EMMA(Enhanced MultiMedia Architecture)シリーズは同社のデジタルAV機器向け半導体製品として、デジタルビデオプレーヤー/レコーダーやセットトップボックス、デジタル放送対応TVなどに採用されている。同日、東京都内にて開かれた記者説明会で、同社の事業概要について説明した第二システム事業本部長の新津茂夫氏は、デジタルAV機器向けSoCが同社のビジネスの35%を占めており、市場シェアも1~2位の位置にあると述べた。そして昨今のデジタルAV機器の開発が、開発期間の短さと規模(半導体・ソフトウェア)の拡大という課題を抱えており、それを解決できるソリューションとして、デジタルAV機器専用SoCであるEMMAがあるとした。同社ではEMMAシリーズで2010年度に売上1000億円、同分野での世界シェア1位を目指すとしている。

NECエレクトロニクス 第二システム事業本部長の新津茂夫氏(左) EMMAシリーズを始めとした次世代DVD関連半導体のロードマップ。EMMA自体は10年の歴史がある
NECエレクトロニクス 第二システム事業本部長の新津茂夫氏(左)EMMAシリーズを始めとした次世代DVD関連半導体のロードマップ。EMMA自体は10年の歴史がある

新津氏はEMMAの特徴として2点を挙げている。ハードウェア面では、能力に応じてチップ内の複数搭載できるCPUと、用途に特化した機能ブロックをチップ内で組み合わせる柔軟性の高いアーキテクチャーを備える。またソフトウェア面では、EMMA対応のミドルウェアやアプリケーション、デバイスドライバーに共通性を持たせる“platformOViA(プラットフォーム オーヴィア)”を構築。異なるEMMAシリーズでもソフトウェアの互換性を確保することで、ソフトウェア開発コストの低減を可能にする点を特徴としている。

EMMAシリーズの特徴。用途に合わせてCPUコアや機能ブロックを組み合わせて利用でき、なおかつソフトウェア面での共通性を確保する
EMMAシリーズの特徴。用途に合わせてCPUコアや機能ブロックを組み合わせて利用でき、なおかつソフトウェア面での共通性を確保する

本日発表されたEMMA3も、これらの特徴を踏まえたうえで、HD DVDプレーヤー/レコーダーに求められる高機能を搭載したシリーズ第3世代のSoCとなっている。最大の特徴は、HD DVDやハイビジョンのデジタル放送の映像と音声をデコードするための機能を1チップで実現した点にある。また同社の64bit CPU“VR5500”と32bit CPU(米MIPSテクノロジーズ社のアーキテクチャー)の2CPUコアを内蔵(※1)。リアルタイムOSの制御を32bit CPU側、最新のデジタルAV機器で求められる高度なアプリケーションの処理を64bit CPU側で行なうなど、高度な処理能力を備えている。

※1 VR5500は327MHz駆動時で654 Dhrystone MIPS、32bit MIPS CPUは327MHz駆動時で457 Dhrystone MIPSの演算能力を持つ。

EMMA3のおおまかなブロックダイアグラム。HD映像/音声を2ストリーム同時に処理する高い性能を誇る
EMMA3のおおまかなブロックダイアグラム。HD映像/音声を2ストリーム同時に処理する高い性能を誇る

主な機能ブロックとしては2つのCPUのほかに、デジタル放送のMPEG-2 MP@HL、HD DVDで使われるH.264やVC-1などのHD品質映像を、2ストリーム同時にデコード可能なデコーダー、“Dolby Digital Plus”や“DTS-HD”などのオーディオコーデックに対応するオーディオデコーダーを2基、フルHD解像度に対応するグラフィックスエンジンなどを備える。また、録画用にデジタル放送の暗号化/復号化を行なうストリームプロセッサー、ビデオエンコーダーも搭載しており、1チップでプレーヤー/レコーダーのどちらにも利用できる機能を備えている。メモリーインターフェースはDDR2-667に対応。Ultra ATA5対応のIDEインターフェース機能も内蔵する。なお、半導体製造プロセスは90nmプロセスを採用。チップのダイサイズやトランジスター数は未公表である。消費電力も詳細は公表されていないが、数ワット程度とのことだ。

EMMA3のソフトウェア構造。リアルタイムOS部分を32bit CPU、Linuxの上で動くアプリケーション部分は64bit CPU側で処理する
EMMA3のソフトウェア構造。リアルタイムOS部分を32bit CPU、Linuxの上で動くアプリケーション部分は64bit CPU側で処理する

前述のとおり、EMMA3はすでに採用を獲得しており、東芝の日本向けおよび北米(※2)や欧州向けのHD DVDプレーヤーに搭載されているという。サンプル出荷時の価格は1個あたり2万円。2007年4月からは、生産規模で月産30万個を計画している。

※2 『HD-XA2』『HD-A2』の2製品

なおBlu-ray Discへの対応については、半導体面ではHD DVDと類似しているがソフトウェア面では違いが大きいため、ソフトウェア面も含めて検討するとしている。

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