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【CEATEC JAPAN 2005レポート Vol.18】多機能を1チップ化する“EMMアーキテクチャー”を推進――NECエレクトロニクス

2005年10月06日 22時21分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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NECエレクトロニクス(株)は、同社独自の“EMMArchitecture(Enhanced Multi Media Architecture)”に基づき、HD対応デジタル放送の受信とDVDレコーダー機能を1チップ化したり、HDDコントローラーとDVDレコーダー機能を1チップ化した開発中のLSIをいくつか展示していた。

2RH
HD対応デジタル放送&DVDレコーダー用LSI
2R-FE
1チップDVDレコーダー・システムLSI

いずれも従来は機能別にLSIを複数用意して実現しているが、これらの機能を1チップ化することで、部品点数の削減だけでなく製造工程の短縮、製造や検査にかかるコストの低減が図れるというメリットがある。特に2RHはHD対応のデジタル放送とアナログ放送を同時に3番組録画できるため、今後の製品化が楽しみだ。

HD対応デジタル放送&DVDレコーダー用LSI『2RH』の説明パネル 2RHの実物
HD対応デジタル放送&DVDレコーダー用LSI『2RH』の説明パネル2RHの実物
1チップDVDレコーダー・システムLSI『2R-FE』 2R-FEの実物
1チップDVDレコーダー・システムLSI『2R-FE』2R-FEの実物


このほか、多機能化が進みより多くの演算処理が求められる携帯電話のCPUを、動作クロックを上げずに対応するソリューション(解決手段)として、ARMコアCPUを複数並列処理するシステムLSI“SMP並列マルチコア”が参考出展された。同社では従来から携帯電話向けのCPUとして“モバイルアプリケーションプロセッサ”『MP211』(ARM926を3コア内蔵)を開発・販売しているが、これを4コアに増やすとともに、従来の“タスク並列”ではなく“スレッド並列”に変更したのが特徴。タスク並列では、アプリケーション側がCPUの数や個々の処理を意識しながら、どのCPUにどのタスクをどのタイミングで命令するか決めておく必要がある。それに対してスレッド並列では、アプリケーション側から命令を受ける窓口は1つしかなく、CPU側が処理実行すべき内容に応じて必要なCPUコアに命令を分け与える。これはアプリケーション側の開発が楽になるだけでなく、不要なCPUコアを停止して消費電力を抑える効果も期待できるという。同社では、高い処理能力と効率的なCPUコアの運用を示すデモとして、マンデルブロー集合図形の演算・表示を行ないながら複数ストリームのMPEG-2ビデオ再生を行なっていた。

携帯電話向けシステムLSI“SMP並列マルチコア”のデモ “SMP並列マルチコア”のサンプル基板
ARM926コアを4つ内蔵して、スレッド並列処理により複数のビデオ再生を用意にこなすという携帯電話向けシステムLSI“SMP並列マルチコア”のデモ“SMP並列マルチコア”のサンプル基板
携帯電話向けシステムLSI“SMP並列マルチコア”の説明パネル ブロック構成図と低消費電力化のメリット
携帯電話向けシステムLSI“SMP並列マルチコア”の説明パネルブロック構成図と低消費電力化のメリット
ARM926コアを4つ搭載した携帯電話向けシステムLSIのデモ


同じく携帯電話の話題としては、液晶パネルの制御信号を従来のパラレルからシリアルに変更して結線の数を減らし、より自由度の高いデザインを可能にする“Mobile CMADS”準拠の液晶パネルドライバーICが展示されていた。開発は完了し、現在は量産出荷に向けて準備中とのこと。現在は液晶コントローラーICと液晶パネルを20本程度のケーブルで結線しているが、シリアルインターフェースに変更することで9本に削減できるという。ただし、このMobile CMADSはNECエレクトロニクスが自社開発した高速シリアルインターフェースで、ほかにSTマイクロエレクトロニクスなども独自のパラレル⇒シリアルソリューションを開発、展示していた。携帯電話は従来から、メーカーごとに異なる独自規格が多いが、デザインのさらなる工夫に有効な一打と思われるだけに、いずれは規格の統一化を望みたい。

“Mobile CMADS”対応液晶ドライバーICの説明パネル “Mobile CMADS”対応液晶ドライバーICを用いた携帯電話の試作機
液晶コントローラーと液晶パネルを高速シリアルインターフェースで接続する“Mobile CMADS”対応液晶ドライバーICの説明パネル“Mobile CMADS”対応液晶ドライバーICを用いた携帯電話の試作機。残念ながら、これ自体はデザイン的に変わったものではなかった

携帯電話以外では、“ワイヤレスUSB”のコントローラーIC(開発中)を使ったデモも目を引いた存在だ。同社はワイヤレスUSBのホストコントローラーIC(パソコン側に接続するインターフェースを実現する)『μPD720170』と、デバイス・ワイヤ・アダプターIC(USBデバイスに接続して無線伝送するインターフェースを実現する)『μPD720180』を開発し、サンプル出荷を始めている。これらを使って、パソコンのPCIスロットに接続するホストコントローラーボードと、ポータブルHDDのUSB 2.0端子に接続するデバイス・ワイヤ・アダプターボードの試作機を、アンテナ間の距離30cm程度離した状態で無線伝送し、ポータブルHDDのMPEG映像が途切れることなく再生できるというデモだ。ワイヤレスUSBで伝送する無線はUWB(Ultra Wide Band)規格で、超広帯域に微弱な出力の電波をとばすことで高速伝送(USB 2.0の規格上の上限である最大480Mbps)を実現する。出力が微弱なので到達距離は短い(遠くなるほど伝送速度が落ちる)ものの、ほかの無線通信(無線LANやBluetoothなど)と干渉しないほか、「将来的には消費電力もBluetoothより低減できる」(説明員)と自信を見せる。短距離の無線通信では、一足先に規格が成立して、デバイス(コントローラーIC)の低価格化で地歩を固めようとするBluetoothに対して、どこまで迫れるか、今後の搭載デバイスの登場が楽しみになってきた。

“Mobile CMADS”対応液晶ドライバーICの説明パネル NECエレクトロニクスのホストコントローラーチップ『μPD720170』とデバイス・ワイヤ・アダプターチップ『μPD720180』
ワイヤレスUSBで接続したポータブルHDDから動画を読み込んでも、コマ落ちや途切れが起きず安定した高速伝送が可能なことを示すNECエレクトロニクスのホストコントローラーチップ『μPD720170』とデバイス・ワイヤ・アダプターチップ『μPD720180』、およびこれらチップセットを利用したデバイスユニット
デバイス・ワイヤ・アダプターの試作ボード ホストコントローラーの試作ボード
デバイス・ワイヤ・アダプターの試作ボード。右下のUSB端子の先にポータブルHDDが接続されているこちらはホストコントローラーの試作ボード。デスクトップパソコンのPCIスロットに接続されている
ワイヤレスUSBのデモ

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