複合機としての各種機能をチェック!!
プリンターとしての基本機能は、底面および背面の2WAY給紙や自動両面印刷機構を内蔵するなど、ペーパーハンドリングは使い勝手が高い。プリンタブルのCD-RやDVD-Rなどへの印刷は、メディアを同梱のトレイにセットして専用トレイガイドに挿入するもので、操作を迷わない、間違いにくいのはいいのだが、できればトレイを使わないときにはプリンターのどこかに格納できてほしかった。また、DVDやCDなどのレーベル面をスキャナ部に置けばそのままDVD-R/CD-Rメディアへ印刷(コピー)する機能もあり、これは使いやすい。
メニュー表示は機能別に細かくなっており分かりやすい。左上の“ナビ”ボタンによるメニューでは短い文で個々の機能にアクセスできる。右上はコピー機能で、コピー専用機のように設定が一目で分かるようになっている。左下はスキャン時のもの。フィルムセットも図解される。右下はメモリーカードからの印刷。各種メニューは上端に円弧状に並び、ダイヤルによって回転する。 |
スキャン時においても、原稿をセットして操作パネルからスキャンを実行するだけでUSB接続したパソコンへ転送されるなど、MP960側からほとんどの処理が済むのは非常に便利だ。ドライバー内で自動原稿種類(文字原稿/画像)の判別や傾き修正も自動的に行なってくれるため、よほど画質を追及して設定にこだわるようなスキャンでもなければ、操作パネルだけで実行できるのもうれしいところ。
印刷サンプル パソコンのデジタルカメラ画像を印刷してみた。L判、きれい、フチなし全面印刷、キヤノンプロフォトペーパー使用。印刷時間41.75秒。スキャンは本機を使って1200dpiでスキャンしたもの。ドットはほとんど肉眼で見えない。明るい部分でのわずかな階調差をうまく表現している。拡大(1200dpiでスキャンした等倍画像)には元のデジタルカメラ画像を並べている。 |
スキャナーとプリンターを組み合わせたカラーコピーに関しても進歩しており、“デュアルガマット色変換技術”と呼ばれる画像処理アルゴリズムが新たに加わった。従来からインクジェットプリンターのインクでは、デジタルカメラが記録できる色空間やディスプレーで表現できる色空間よりも若干狭い色域しか印刷できないため、これらの色の階調を圧縮して印刷していた。特にカラーコピーでは印刷可能な色域よりもスキャン可能な色のほうが広いため、同じ色を再現するのが困難だったのだが、今回の新色変換技術の採用により、印刷可能な色域へ彩度を減らすことなく“階調を維持したまま”に圧縮することが可能となった。
コピーサンプル 紙焼き写真をコピーしてみた。コピー時間はスキャンも含めて43.90秒。L判、きれい、等倍(ふちあり)。コピー元(左)と出力結果(右)を並べてスキャンしてみたが、出力結果を肉眼で見るとあまり色の違いはそれほど分からないもののスキャンすると色の違いが分かる。 |
MP960は印刷自体のクオリティーこそ昨年とほぼ同様だが、印刷速度アップのチューンなど細かな機能変更が施されて、複合機としての完成度はかなり向上した。ただし、ボディーの新デザインに関してはやや疑問が残る。大きさを感じさせにくいシャープなラインを採用し、高さを40mm近く減らしてはいるのだが、横幅で3mm、奥行きでは13mm増えている。とかく複合機は大きくて置き場所に困るという印象を持たれることが多いのが実情であるので、設置面積を減らす工夫もほしかったところだ。とはいえ、特に強化されたインターフェースを見ると、初心者への配慮や使いやすさの追求など、単にパソコン用周辺機器の延長としてではなく“家電としての複合機”に向けて一歩を踏み出した製品と言えるだろう。
PIXUS MP960の主なスペック | |
製品名 | PIXUS MP960 |
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印刷解像度 | 9600×2400dpi |
印刷速度 | 約29秒(L判写真の印刷時、スーパーフォトペーパー) 約64秒(L判写真のコピー時、同上) |
使用インク | C/M/Y/PM/PM/Bk(染料)/Bk(顔料):各512ノズル |
用紙サイズ | A4~A5、ハガキ、L版、専用名刺 |
給紙容量(ASF/カセット) | 各150枚 |
スキャン解像度 | 4800×4800dpi |
スキャン階調 | RGB各16bit |
液晶ディスプレー | 3.5インチTFT液晶パネル |
インターフェース | USB 2.0、Bluetooth(オプション) |
本体サイズ | 471(W)×428(D)×226(H)mm |
重さ | 約12kg |