FLO Forumプレジデントのカミール・A・クラジスキ氏が来日
クアルコム ジャパン(株)は16日、東京・南青山の同社オフィスにプレス関係者を集め、FLO Forumの最新動向などを説明した。FLO Forumは、主に携帯電話機に向けた映像配信サービス“MediaFLO”(メディアフロー、関連記事1、関連記事2)について、世界各地域での実現・普及を目指す標準化団体。今回、FLO Forumのプレジデントのカミール・A・クラジスキ(Kamil A.Grajski)氏が来日したことに合わせて、Forumの活動内容や米国や欧州での状況が報告された。
FLO Forumのプレジデントのカミール・A・クラジスキ氏 |
MediaFLOは現在、米国で年内の商用サービス開始に向けて準備が進められているほか、欧州ではフェーズ2のトライアルが実施されるなど、準備段階から実用段階へと歩を進めている。一方、日本ではまだ使用可能な電波帯域の確保の調整段階で、実用試験までは進んでいない。しかし、クアルコム ジャパンの取締役会長でMediaFLOを強力に推進してきた松本徹三氏がソフトバンク(株)の執行役副社長に就任し、MediaFLOサービスに関する技術調査や新サービスの企画を行なう新会社“モバイルメディア企画株式会社”を設立するなど、徐々に動きが加速している。
FLO Forumの組織体 |
米国で今年、2つの仕様が認定・発行
ITUへの加盟も視野にさらなる活動へ
グラジスキ氏は、FLO Forumの活動について
- 非営利団体として、国際的にMediaFLOサービスの実現を助力している
- 参加企業は半導体メーカーやキャリアー、端末メーカー、コンテンツオーナーなど68社を数える(うち日本法人は京セラ(株)やKDDI(株)、三洋電機(株)など5社)
- TIA(アメリカ通信工業会)で今年、無線インターフェースと最小パフォーマンススペックの2つの仕様が認定を受け、発行された
- 今後はITU(国際電気通信連合)への加盟を含め、より国際的なスタンダードへと引き上げる活動に注力する
などとまとめた。特に大きいのは、商用サービスを控える米国で2つの仕様が標準化されたことだ。これにより、半導体メーカーが参加して、対応通信チップやデコードチップなどの設計が開始でき、「日本メーカーにもビジネスチャンスが出てくる」とラブコールを送った。
FLO Forumに参加している68社。このほかに10社以上が参加を検討しているという |
今後はより上位のコンテンツアクセスやコーデック(現在はH.264の採用を予定)、電子番組表の配信などについても議論を進め、レイヤーごとの標準化を進めていきたい、と意気込みを語った。
参加した記者から、日本でトライアルまでも進まない実情について理由を問われると、「(年内に商用サービス開始までこぎ着けた)米国の状況はむしろ例外的で、世界的に見ると電波帯域の確保のために政府と折衝している状況が一般的だと思う。しかし、米国でのMediaFLOの実績が、ほかの国での運用にも設備投資や運用コストの面でいい学習になるだろう」と述べ、米国での商用サービスに強い期待感を示した。
なお、欧州でのトライアル第2フェーズは、英国マンチェスターで行なわれている試験運用で、内容は今年8月から10月初旬まで行なわれた第1フェーズと変わらない。これは英国の衛星放送会社British Sky Broadcasting(BskyB)社が、複数のインフラベンダーによる公平なテスト、経験を求めているために行なわれたもので、第1フェーズとは異なるベンダーによる同様のテストが行なわれる。BskyBはこのテストを通じて、携帯機器向け放送の他方式(DVB-H)との比較・検討を行ない、レビュー結果を発表する予定とのこと。