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インテル、報道関係者向けミーティングにて、高速無線通信技術やUMPCの動向について説明

2006年04月27日 23時42分更新

文● 編集部 小西利明

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インテルの筑波デスクトップ・ラボで研究開発されている品々。バスインターフェースに関するさまざまな研究が行なわれているようだ
インテルの筑波デスクトップ・ラボで研究開発されている品々。バスインターフェースに関するさまざまな研究が行なわれているようだ

インテル(株)は27日、東京都内にて報道関係者向けの説明会“クライアント・レギュラー・アップデート”を開催。同社が精力的に取り組む高速無線データ通信技術や、“Ultra Mobile PC”、日本での研究開発などについての近況や今後の動向についての説明を行なった。

インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏
インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏

同社代表取締役共同社長の吉田和正氏によるプレゼンテーションの中では、特に高速無線データ通信技術についての話題が注目を集めた。吉田氏はUWB(Ultra Wide Band)、IEEE 802.11n、WiMAXの3規格の状況について触れた。まずUWBについては総務省からの許可も出て、今年には製品も登場するだろうとの見通しが示された。速度については400~480Mbps程度となる。さらに次世代のUWBでは、1Gbpsもの速度が実現されるとのことで、PAN(Personal Area Network)の距離ではあるが、超高速の無線データ通信がいよいよ実現されるようだ。

現在の無線LAN規格の後継と言えるIEEE 802.11nについては、総務省の諮問機関である情報通信審議会での審議が行なわれており、今年9月頃には答申が出されるといった見通しが示された。また広域無線データ通信を実現するWiMAXについては、広帯域移動無線アクセスシステム小委員会にて技術的条件の審議が行なわれており、2006年11月には答申が出されて関係規定の整備が行なわれる予定など、「それほど先の話ではない。いよいよWiMAXの環境が整う」など、国内の法整備が順調に進んでいることに吉田氏は期待を述べた。



インテル マーケティング本部長の阿部剛士氏
インテル マーケティング本部長の阿部剛士氏

同社マーケティング本部長の阿部剛士氏はUMPCの将来について語った。同社としてはUMPCはサブノートとPDAの間にある新しい市場であると位置づけており、よりパーソナルなインターネット利用やエンターテイメント向けデバイスであるとした。そしてバッテリー側の技術の進歩が遅い現状の中で、インテルがUMPCに向けて行なうことはプロセッサーの低消費電力化にあるとして、TDP(熱設計時消費電力)が1W未満から0.5W程度のプロセッサー開発が必要と述べた。



UMPCと既存のノートパソコンのセグメント分け。サブノートより軽く、CPUのTDPでは1W未満を狙う
UMPCと既存のノートパソコンのセグメント分け。サブノートより軽く、CPUのTDPでは1W未満を狙う

また阿部氏は同社が日本のほか米国、中国、韓国、ドイツの5ヵ国で行なった、携帯電話・ポータブルメディアプレーヤー・ポータブルゲーム機に関するユーザー調査を示した。阿部氏はこれらの調査の中からインテルが注目する要件として、“より良いインターネット「視聴」”“幅広いメディア形式への対応”“ゲームが十分に楽しめること”“多機能であること”の4つを挙げて、今後のUMPCはこの4点をコンセプトにポジショニングしていきたいと述べられた。マイクロソフト(株)はUMPCを、特定市場や学習分野などから開拓していくという方針を示しているが、インテルはより幅広く一般性の高い機器として、UMPCを展開していきたいと考えているようだ。現在のUMPCに使われているCPUも“1stフェイズ”にすぎず、UMPCに最適化されたプロセッサー(2ndフェイズ)が登場するのは、2008~2009年頃になるのではないかと言う。

インテルが6ヵ国で調査した携帯デジタル機器に対する要望。PCゲームについての要望が高いのは、中韓という特異な市場が調査対象に含まれているためではないだろうか
インテルが6ヵ国で調査した携帯デジタル機器に対する要望。PCゲームについての要望が高いのは、中韓という特異な市場が調査対象に含まれているためではないだろうか

そのほかにも阿部氏は同社の取り組みとして、国ごとの特性に合ったパソコンの例と、同社の筑波デスクトップ・ラボでの研究成果についての説明も行なった。国ごとの特性の例としては、1枚の写真が披露された。“インドのある家庭の風景”という“Community PC Demo”と名付けられたその写真には、CRTディスプレーの横にミドルタワーパソコンよりも大きそうな巨大デスクトップパソコンが置かれている。阿部氏の説明ではこの巨大さの理由として、防塵対策と電源の不安定さがあるという。インドは高温多湿なだけでなく非常に微細な塵や埃が多いため、パソコンも湿った埃に対する対策が欠かせないという。また日本のように常時安定した送電が確保できないため、小型のUPSを内蔵しているという。いずれもその国で真に必要とされていながら、外部からは実感しにくい事例であり、グローバルに展開するインテルのような企業では必要なる取り組みのひとつと言えるだろう。

インドの家庭をイメージした“Community PC Demo”の写真。手前側にある大きな箱が、インドの実情にあったパソコンで、防塵対策と電源の不安定さをカバーする技術が取り込まれている
インドの家庭をイメージした“Community PC Demo”の写真。手前側にある大きな箱が、インドの実情にあったパソコンで、防塵対策と電源の不安定さをカバーする技術が取り込まれている

一方の筑波デスクトップ・ラボは、1993年に同社の筑波オフィスに開設されて以来、オーバードライブプロセッサーの検証から始まり、USBやPCI ExpressなどバスインターフェースやDRAMモジュールの検証、また90年代後半からは熱設計の研究などを行なっていたという。日本電気(株)と共同開発した“スーパーサイレントPC”なども、ここの研究成果のひとつという。

阿部氏は熱設計のように「日本のニーズは世界に広がる」として、日本のニーズから始まった研究例として、パソコンの静音化についての筑波デスクトップ・ラボの取り組みを紹介した。ISO7779規格に基づいた音響評価チャンバーをラボ内に設置し、パソコンのノイズレベルや音圧などユーザーが不快と感じる要素を測定し、より静かなパソコンの実現に向けた研究を行なっているという。

筑波デスクトップ・ラボの音響評価チャンバーの様子。パソコンの静音化は今後、日本以外にも広がるニーズであると同社は考えている
筑波デスクトップ・ラボの音響評価チャンバーの様子。パソコンの静音化は今後、日本以外にも広がるニーズであると同社は考えている

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