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【INTERVIEW】島根発のFlash制作TVアニメが始動 あのFROGMAN=蛙男商会がついにメジャーデビュー!

2006年03月29日 18時36分更新

文● 千葉英寿

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[――] もし、もっといい待遇、つまり多くの制作費で作品を作らせてもらえる、という話があったらどうですか?
小野氏
[小野氏] お金を用意してもらって作るのはリスキーだと考えています。蛙男でやっていていい点は、“誰からもお金を出してもらっていないので、自由だ”ということです。これまでも共同制作で、という話もありましたが、今はまだそういう時期ではないと思っています。
[椎木氏] 日本の制作会社は、どうしても下請けとして“テレビ局第一主義”的なところが相変わらずあると思います。DLEは、(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントやユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン(株)を“パートナー”としては考えても、“仕事をいただいている”とは思っていません。我々が100%制作費を用意し、それで気に入らなければ「ほかのメジャーと話をします」というスタンスで仕事を進めています。当然守るべきところを守る、言い換えれば、主張が激しいところを嫌うところもあるかもしれませんが、こうすることでテレビ局と制作会社の立ち位置が変わってくるのではないかと考えています。
[――] とすると、今の制作委員会方式なんかは?
[椎木氏] 愚の骨頂ですね。
[小野氏] 極論かもしれませんが、作品を愛していない人が集まっても作品は生きてこないと思うんです。クリエイターは思い入れをもって作品を作りたいと考えているわけで、制作委員会を作りたいと思っているわけじゃあないんです。そこをはき違えている。お金がかかりすぎる制作の仕組みにも問題があるんだと思いますが。


椎木氏
[椎木氏] 本当に作りたいものがあって、こだわりがあっても、自分でそれだけのファイナンス(資金調達)ができるかというと、ほとんどができないのが現実です。それでもメディアやソフトの発達した今だから、自分だけでもできる環境が整ってきたのがチャンスだと思うんです。その中で、最も低予算で、スピード感を持って達成できるのがFlashだと思います。そういう意味では、シロウトがFlashで作った作品の方がよっぽどいいものが眠っていると思います。
[――] 面白いコンテンツはほかにあるんだ、ということですね。放送する側はそういうものを探してくる“目”が大事になってきますね。
[椎木氏] そういうクリエイターを活かすものとして、我々が提案させていただいているのが、“グローバルキャスティング”のサービスです。世界で自分を試してみたいと考えているクリエイターを全米制作者協会を通じて、ハリウッドを中心とした制作サイドに紹介するものです。オンラインで登録していただき、アニメーターや弁護士などとつないで、日本にいながらにして仕事をしていただけます。言葉の問題のサポートやお金の管理は、すべてDLEが行ないます。DLEが海外からの制作依頼を受けて、国内で仕事をするわけですので、クリエイターはその才能を輸出するだけです。
[――] なるほど。これならクリエイターそのものが海外に流出してしまう、ということはありませんし、外貨獲得にもつながりますね。
[小野氏] ネット時代になって、海外に行って制作活動をしてもいいと感じています。実際、青池さんはカナダで活動していますし。クリエイターは(住む)国を選ばない、そういう形でいいのではないでしょうか。僕もオーストラリアとかカナダに行くもいいかなと考えています。


アニメ“鷹の爪”のフィギュア1 アニメ“鷹の爪”のフィギュア2
DLEブースには、放映を前に早くもアニメ“鷹の爪”のキャラクターを模したフィギュアが並んでいた

Flash作家には絵や映像だけじゃなく、脚本や演出のスキルも不可欠

[――] 最後にお聞きしたいのですが、2004年から始められて、わずか1年半足らずでTVでのデビューまで来たのは、どこにポイントがあったとお考えですか?
[小野氏] Flashクリエイターの場合、どうしても“Flashをいかに巧みに使うか”に気をとられがちなんですが、小説にしても写真にしても“何を表現するのか”が大事だと思います。こればかりはデジタル系の学校に行っても、簡単に身に付くものではないと思います。
[――] Flashクリエイターと呼ばれる方々には、ぜひ小野さんの成功に奮起してほしいと思うのですが、小野さんのようにビジネスとしてやっていこうという姿勢があまり感じられません。どうしても小野さんとでは温度差を感じてしまうのですが。
[小野氏] 学生のクリエイターさんの場合は、趣味が高じてという方が多いようですが、僕の場合は、映像のプロとしての経験がありました。やはりそこが最も違う点だと思います。このまま映像作家でうまくいかなければ、“カミさんの実家に転がり込むしかなかった”というせっぱ詰まった事情もありましたが(笑)。実は“菅井君と家族石”を作ったのも、あるコンテストの賞金50万円を出産費用にしたかったからなんです。主催の(株)東京放送(TBS)から東京での発表会に声がかかったので、喜び勇んで島根から出てきたら、実際にはノミネートもされていなくて、とてもガッカリしました。

偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、Flashで僕と同じようにやるには、絵も描けて映像のセンスもないと。その上、脚本、演出までできないと個人作家として成立しないと思うんです。声も自分でできれば、全部ひとりでできてしまうわけですが、果たしてそこまで自分一人でできる人がどれだけいるのだろうかということですね。それこそ、絵心があって役者経験もある助監督とかでしょうか(笑)。

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