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3次元CAD機能やコンセプトデザイン制作など、多くの機能を搭載――オートデスク、『AutoCAD 2007』を発表

2006年03月02日 18時52分更新

文● 編集部 小西利明

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2次元の図面作成のノウハウで、簡単に3次元モデルやコンセプト説明図を作れる『AutoCAD 2007』 オートデスク 代表取締役社長の志賀徹也氏
2次元の図面作成のノウハウで、簡単に3次元モデルやコンセプト説明図を作れる『AutoCAD 2007』オートデスク 代表取締役社長の志賀徹也氏

オートデスク(株)は2日、CADソフトの定番シリーズ“AutoCAD”の最新版として、『AutoCAD 2007』を発表した。出荷開始は24日。3次元CADソフトの機能を取り入れ、2次元CADの手法で簡単に3次元の図面やモデルデータを制作できるほか、コンセプトデザインから写実的な3D CGやCGムービー制作までも、設計者自身がAutoCAD 2007でこなせる多彩な機能が搭載されている。価格は71万4000円。

AutoCADシリーズは2次元CADソフトの定番として、長い歴史を誇るシリーズであるが、今回発表されたAutoCAD 2007は、非常に大きな転回点となる大規模な拡張が行なわれたバージョンである。2次元CADに3次元CADの手法を導入し、簡単な操作で複雑な立体的モデルを作成できるほか、作ったモデルを手書き線風や3D CG風にレンダリングして表現する機能(コンセプトモデル制作)や、作ったモデルデータ上でカメラを移動させてさまざまな角度から見るウォークスルー機能や、アニメーション機能など、3次元CADの機能を生かしてコンセプトデザインからプレゼンテーション用CG、さらに最終図面までを、1つのアプリケーションで作成可能とする非常に多彩な機能を備えることとなった。

AutoCADシリーズの歩み。AutoCAD 2007では2次元CADの機能はそのままに、3次元CADへと大きく進化している
AutoCADシリーズの歩み。AutoCAD 2007では2次元CADの機能はそのままに、3次元CADへと大きく進化している

報道関係者向けの説明会にて、同社代表取締役社長の志賀徹也氏は、新バージョンを世界に先駆けて日本で発表すると述べたうえで、「オートデスクは以前は、物理的に見えるものをデザインしようとしてきたが、最近ではバーチャルな世界のものまで手を伸ばしている」として、3Dモデリングソフト“3ds max”シリーズや2005年10月に発表されたカナダの3Dモデリング/アニメーションソフト開発会社エイリアスシステムズ社の買収などにより、オートデスクが事業を幅広く展開していることを示した。またAutoCAD新バージョンのテーマについて、ものづくりのライフサイクルの中で、AutoCAD本体が今までフォローしていなかった“アイデア”“コンセプトデザイン”の要素をフォローできるように3次元デザインツールの機能に重点を置き、従来ではできなかった“設計者のアイデアを素早くかたちに”できるようになったという。

AutoCAD 2007のコンセプトは、設計のワークフロー全体を1本のソフトで行なう機能を備える点である。下に掲載した写真のように、物や建築物の設計の流れにある、コンセプトデザインからそのプレゼンテーション、そして最終的な2次元図面による設計作業の全段階を、1本でこなす機能を搭載した。また従来製品にあった、グループワーク向けのデータ共有機能なども継承している。

AutoCAD 2007およびLT 2007のサポートする大まかな機能群。廉価版であるLTでは、作図や印刷を主体とし、3次元設計やプレゼンテーションは部分的に取り入れられている 一般的な設計のワークフロー。デザイン作りからプレゼンテーション、最終設計までをAutoCAD 2007上で可能にするのが開発コンセプトである
AutoCAD 2007およびLT 2007のサポートする大まかな機能群。廉価版であるLTでは、作図や印刷を主体とし、3次元設計やプレゼンテーションは部分的に取り入れられている一般的な設計のワークフロー。デザイン作りからプレゼンテーション、最終設計までをAutoCAD 2007上で可能にするのが開発コンセプトである

同社プラットフォーム テクノロジー本部 インダストリーマーケティング マネージャの清水卓宏氏によるデモでは、AutoCAD 2007での3次元モデル作成や、モデルデータをプレゼンテーション用に図面化する方法などが披露された。「粘土細工のように簡単」と評するモデルデータ作成のデモでは、2次元CADのように方形や円柱を描いて、それに高さを与えるだけで立体オブジェクトが作れる様子や、オブジェクト同士を重ね合わせて、重なる部分だけをくり抜くといった作業を披露。3次元モデル作成に習熟していない人でも、簡単に3次元モデルを作成できる様子がうかがえた。

3次元モデル作成のデモの様子。方形の立体を作るには、まず盤面に方形を書く 方形に高さを与えれば、それで立体の直方体ができあがり。非常に簡単だ
3次元モデル作成のデモの様子。方形の立体を作るには、まず盤面に方形を書く方形に高さを与えれば、それで立体の直方体ができあがり。非常に簡単だ
作成した3次元モデルに影を付けるのも簡単にできる。ビルを模した複数のオブジェクトを並べれば、ちょっとした都市景観シミュレーションも可能だ
作成した3次元モデルに影を付けるのも簡単にできる。ビルを模した複数のオブジェクトを並べれば、ちょっとした都市景観シミュレーションも可能だ

こうして3次元モデルを組み合わせることで作成したコンセプトデザイン用モデルを、さまざまなデザイン表現で画像化、または映像化する機能も備わっている。手書きのデザインラフ風に表現したり、金属的にレンダリングされた3D CG風に表現することが可能だ。複数の部品が組み合わさっているモデルの場合は、特定の部品を透視図にして表現することも可能だ。こうして作成されたモデルデータは、組み込みの3D CGレンダリングエンジン“mental ray”を使って、高品質な3D CGとして仕上げることも可能である。さらにモデルデータをアニメーションさせたり、モデルデータ上でカメラを動かしてウォークスルーを行なうことも可能で、それらの様子を動画データとして出力することまで可能となっている。つまりデザインツールと3D CG/ムービー制作ツールの機能が、AutoCAD内に内包されていると言ってもよい。

3次元モデルを手書きのラフ図面風に画像化した様子 同じモデルを金属的な質感の3D CGとして画像化した様子。各面にテクスチャーを貼り込んで、より質感豊かな画像にすることも可能
3次元モデルを手書きのラフ図面風に画像化した様子同じモデルを金属的な質感の3D CGとして画像化した様子。各面にテクスチャーを貼り込んで、より質感豊かな画像にすることも可能
大規模建築物のサンプル。さすがにこれだけ複雑な構造物となると、制作するのも簡単ではないだろうが、コンセプト図面から3D CG制作までAutoCAD上で行なえるうえに、このデータをさらに設計図面に転用できるので、作業全体の手間は軽減されるだろう
大規模建築物のサンプル。さすがにこれだけ複雑な構造物となると、制作するのも簡単ではないだろうが、コンセプト図面から3D CG制作までAutoCAD上で行なえるうえに、このデータをさらに設計図面に転用できるので、作業全体の手間は軽減されるだろう

作成されたコンセプトデザインやプレゼンテーション用モデルデータは、そのまま設計作業用の図面化することも可能だ。モデルのどの面を図面化するかは任意に決められるし、断面を図面化して陰線(本来外部からは見えない線)を外形線とは別の線で表現するといったことも可能である。

作成した3次元モデルの断面を指定して、図面を作成した例。陰線部分を赤い点線で表現している。陰線は表示させないことも可能 “フラットショット”と呼ばれる機能で、プラントのモデルから真上から見たレイアウト図を作成した例。例は詳細なモデルから図面を起こしているが、大雑把なモデルを元に図面を作り、詳細な設計図を作成する方法もあるだろう
作成した3次元モデルの断面を指定して、図面を作成した例。陰線部分を赤い点線で表現している。陰線は表示させないことも可能“フラットショット”と呼ばれる機能で、プラントのモデルから真上から見たレイアウト図を作成した例。例は詳細なモデルから図面を起こしているが、大雑把なモデルを元に図面を作り、詳細な設計図を作成する方法もあるだろう

3次元CAD関連機能と、プレゼンテーション向け画像/映像化以外の改良点としては、グローバル展開されるプロジェクトへの対応を考慮して、文字コード処理のユニコード対応による多言語表記対応などが挙げられる。多言語混在のデータ自体は、従来バージョンでも作成可能だったが、AutoCAD 2007では画像名やスタイル名などで多言語の共存が可能とされている。またコンセプトデザイン機能や多言語対応化にともない、データファイル(DWF形式)のバージョンが更新された。

フル機能版のAutoCAD 2007に加えて、機能を限定した廉価版『AutoCAD LT 2007』も同時に発売される。新機能に関する2007とLT 2007の主な違いは、3次元モデリングやレンダリングといった3次元関連の機能に集中している。

発表後の質疑応答では、「外部のCG制作会社に委託していたような仕事も、AutoCADを使う設計者自身が行なうようになるのか?」という質問に対しては、「設計者が外部(のCG制作者)に意図を伝えるのは難しい。それをワンボタンで手間をかけずに、設計者でも行なえる」「外部に出していた分は、コスト削減もできる。またやり取りでのコンバートでデータが落ちる(欠落)することもなく、効率が上がる」(清水氏)等の利点が示された。

AutoCAD 2007およびLT 2007の価格は下記のとおり。動作環境はAutoCAD 2007の場合、OSがWindows XP(Home Edition/Professional)SP1またはSP2、Windows XP Tablet PC Edition SP2、Windows 2000 Professional(SP4)。CPUはPentium III-800MHz以上。メモリーは512MB以上など。3D機能使用時の推奨動作環境は、CPUがインテル製3GHz以上、メモリー2GB以上、HDD空き領域2GB以上、グラフィックスカードは“ワークステーションクラスの128MB以上のメモリ実装のOpenGL対応”とされている。

AutoCAD 2007の価格
AutoCAD 2007 新規製品:71万4000円
AutoCAD 2007 アップグレード AutoCAD 2006から:10万7100円、AutoCAD 2005から:21万5250円、AutoCAD 2004から:32万5500円
AutoCAD Subscription:7万9800円
AutoCAD LT 2007の価格
AutoCAD LT 2007 新規製品:17万8500円
AutoCAD LT 2007 アップグレード AutoCAD LT 2004/2005/2006から:8万9250円
AutoCAD LT Subscription:3万5700円

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