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アジアのオンラインゲームの動向が見える!?――“アジア オンライン ゲーム カンファレンス 2006 東京”(AOGC 2006 Tokyo)開幕

2006年02月09日 20時00分更新

文● 編集部 小西利明

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“アジア オンライン ゲーム カンファレンス 2006 東京”では、日中韓を中心としたオンラインゲーム市場や開発について、さまざまな講演が行なわれた
“アジア オンライン ゲーム カンファレンス 2006 東京”では、日中韓を中心としたオンラインゲーム市場や開発について、さまざまな講演が行なわれた

有限責任中間法人 ブロードバンド推進協議会(BBA)は9日から、東京都千代田区の日本教育会館にて日中韓などアジア圏のオンラインゲームに関する国際会議“アジア オンライン ゲーム カンファレンス 2006 東京”(以下AOGC 2006)を開催した。会期は10日まで。日本を代表するオンラインゲーム事業者や同分野の海外の研究者、関連企業や経済産業省の関連部門など、さまざまな分野からの講演が行なわれた。本稿では9日に行なわれたセッションの中から、注目の話題についてレポートする。

開会式では、BBA代表理事代行の宮内謙氏が開会挨拶を述べ、ブロードバンドの普及にともなって、日本のインターネットトレードは2005年で10兆円を超える規模になるなど大きく成長しており、インターネットビジネスが大きく開花しようとしていると述べた。また活況を呈する日本のオンラインゲーム市場についても、登録ユーザー数が2000万人、ゲームタイトル数280、売上規模は900億円など、大きな成長を見せているとした。宮内氏は20年ほど前に日本の大学の周りにパソコンゲームの開発会社が次々と登場し、パソコンがゲームにも牽引されて成長した頃を思い出すと語った。

ブロードバンド推進協議会 代表理事代行の宮内謙氏
ブロードバンド推進協議会 代表理事代行の宮内謙氏

また、AOGC 2006の後援団体代表として挨拶に立ったIGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)代表の新清士(しん きよし)氏は、オンラインゲームに関わる来場者に向けて、「軍事力を通じて国際政治を動かすのがハードパワーならば、ソフトウェアはソフトパワー。オンラインゲームはソフトパワーそのものであり、日中韓それぞれが各々のコンテンツを提供しあい発展することは、アジア全体の安全保障、ひいては世界の繁栄にもつながる。世界の平和に導く産業に、皆さまは関わっている」と述べ、ゲーム開発者/運営者の社会的責任に対する自覚をうながした。

ゲーム開発者コミュニティーを代表する立場から、オンラインゲーム事業者の社会的責任について述べたIGDA日本代表の新清士氏
ゲーム開発者コミュニティーを代表する立場から、オンラインゲーム事業者の社会的責任について述べたIGDA日本代表の新清士氏

基調講演では、ガンホー社長の森下氏が“ステイタイム”拡大に向けた戦略を語る

ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長の森下一喜氏
ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長の森下一喜氏

開会式に続いて行なわれた基調講演では、日本のオンラインゲーム事業者では最大手であるガンホー・オンライン・エンターテイメント(株)代表取締役社長の森下一喜氏が登壇し、同社のビジネス展開の現状と、市場動向を踏まえた今後の戦略について語られた。残念ながらプレゼンテーション内容の撮影が禁じられていたため、写真の掲載はできないが、興味深い話題も多く取り上げられていた。

同社は現在、7タイトルのオンラインゲームを運営するガンホーを中核に、モバイルコンテンツ運営の(株)ジーモード、キャラクター商品販売やアニメ/ゲームの企画・販売を手がける(株)ブロッコリー、家庭用ゲーム機主体のゲーム開発会社(株)ゲームアーツなどを買収や提携により傘下に持つ。またジーモードと共同出資により、ポータル事業を行なうガンホー・モード(株)を設立するなど、パソコン向けオンラインゲーム運営事業から、さまざまな事業分野へとグループを拡大している。オンラインゲームについても、主に韓国で開発されたゲームを日本国内でライセンス運営するだけでなく、2005年には独自開発タイトル『エミル・クロニクル・オンライン』(ECO)をサービス開始するなど、独自タイトルの開発にも力を入れている。

森下氏はこれらグループ企業が目指す目標として、パソコンや家庭用ゲーム機といったデバイスにこだわらない“コミュニテイメント・メディアへの転換”という言葉を掲げた。聞き慣れない造語だが、オンラインゲームやオンラインコミュニティーサービスを軸としたサービスを提供するメディア、という意味を込めた言葉のようで、同社グループのビジネスが、主にネットワーク上のユーザーコミュニティーの存在に立脚していることを、言葉でも表わすものと言える。そのうえで森下氏は、「コミュニテイメント・メディアへの転換とは、新しい付加価値の提供するサービス業へのシフトである」と述べ、オンラインエンターテイメントの開発からパブリッシング、運営や課金、決済までをワンストップで提供するとした。

現在はパソコン用MMORPG(大規模マルチプレイヤーオンラインRPG)に集中したビジネスも、家庭用ゲーム機への展開やMMO形式以外への展開、さらに次世代オンラインゲームへの研究開発も行なうだけでなく、エンジニアだけでなくゲームマスター(ゲーム内サポートスタッフ)やマーケティングなどの人材育成も行なうとしている。またクレジットカードやプリペイドカードによる既存の流通/決済システムに加えて、“ガンホープチチケット”と称するユーザー向け決済システムの普及も進めるという。ユーザーはコンビニエンスストアの端末などでIDを購入し、ゲーム側の決済時にIDを入力する仕組みとなっている。プリペイドカード同様の手軽さを持ちながら、販売店側の在庫リスクや販売機会の損失をなくし、販売店側への手数料支払いも圧縮することで採算性を向上させることを目的としている。さらにオンラインゲームの収益性向上の将来プランとして、実際の映画館を模した仕組み(シアター)を利用したゲーム内での有料映像配信(ECOで実装予定)や、ゲーム内広告の活用、ゲーム内での物販(森下氏はパソコンや周辺機器の販売などを例とした)といったアイデアを披露した。

最後に森下氏は、既存のウェブ媒体が“ページビュー”を重視しているのに対して、コミュニテイメント・メディアでは“ステイタイム”(平均滞在時間)を重視するとして、デバイスを問わずにユーザーの滞在時間が最大のメディアを、グループ全体の中長期目標として目指すと述べて、講演を締めくくった。

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