本田技研工業(株)(ホンダ)は13日、東京・青山の同社オフィスにプレス関係者を集め、人間型ロボット“ASIMO(アシモ)”の新型として、人と手をつないで歩いたり、時速6kmでの走り、旋回走行などを可能にした新型ASIMOを開発したと発表した。
取締役社長の福井威夫氏と記念撮影に望む新型ASIMO。2000年に誕生したので今年で5歳だが、運動能力を人間の子どもに例えると? と記者に質問されると、「走ったり曲がったり、物を運んだりができるので、3~4歳というところでしょう」(重見氏)と答えた |
発表会には、取締役社長の福井威夫(ふくいたけお)氏、上席研究員の広瀬真人、開発責任者の重見聡史氏らが出席し、新型ASIMOの特徴をデモンストレーションを交えて説明した。
知的能力と運動能力の2軸で見た、ASIMOの進化の系譜 | 新型ASIMOの“受付・応対”機能は、すべてASIMOの自律行動で行なうのではなく、人間の役割とASIMOの役割を明確に分担して、ASIMOをサポートとして活用するというもの |
新型ASIMOでは新たに以下の行動が可能になっている。
- 従来の視覚センサーに加えて床面センサー/超音波センサーを搭載し、周囲の環境を正確に認識するとともに、IC通信カードを携帯した人物を認識して(識別可能な範囲は半径4mで、人の方向は赤外線通信と視覚センサーで判断)、人の動きに合わせた“自動受付・案内”
- 頭部のアイカメラと手首の力覚センサーによって、物を押したり、手渡す/受け取るなどの動作
- 力覚センサーを応用して、ワゴン(最大積載量10kg)を左右の腕の力を調整することでまっすぐ押し出したり(“運搬動作”)、ワゴンの動きが阻害される要素がある場合には、減速する/向きを変えるなどの“障害対策”
- 両足が浮いた状態で姿勢の制御を行なうことにより、走行スピードが従来の時速3kmから6kmに向上した“高速走行”
- 旋回時に発生する遠心力にバランスを取る形で重心を移動した“高速旋回走行”
半径4m以内に入ると、IC通信カードと電波で接続して、人の存在を検知する | 次にIC通信カードの赤外線通信機能を利用して、およその方角を認識 | |
さらに、ASIMOの頭部にある視覚センサー(アイカメラ)で人を識別して、相対位置(距離)を検出する | 実際にASIMOが検知している方角をモニタリングしたところ(背後の画面を参照) | |
ASIMOの内蔵センサーの使い分け |
最初に挨拶した福井氏は、「1986年に、人間と同じ生活空間で稼働でき、同じ知能や思考、運動能力を持つロボットを目標に開発に着手した。人間と同じ空間で共存するためには“二速歩行”が最適と考え、それから8年後の1996年にホンダ独自の二足歩行技術を確立して、最初のヒューマノイド“P2”を発表した。さらに2000年には小型軽量化を果たした“ASIMO”を発表。昨年は関節数や駆動回路を改良して、時速3kmの走りを実現した。今回の新型ASIMOはオフィスでの受付案内などの業務に確実に適応するため、“モノの受け渡し”“ワゴンを押すなどの作業”“走りの進化”を果たし、レベルの高い身体能力を獲得したと思う」と自信を見せた。
ホンダでは新型ASIMOを来年春をめどにHonda和光ビル内オフィスで運用を開始し、リース(貸し出し)事業についても順次新型ASIMOを適用していく。さらに、ASIMOで培った要素技術(姿勢制御/画像・音声認識/衝突予知・回避など)は、今後車の安全性向上をはじめとしたさまざまな分野にフィードバックするとのこと。
手を取って来客を案内するASIMO。手首の力覚センサーで相手が止まったかどうかを認識し、その場合はASIMOも立ち止まって待つ動作をする |
走る前に準備体操をしてみせるASIMO |
ついに走ったASIMO。「速い!」というほどではないが、微妙に宙に浮く瞬間はある | スラローム(旋回走行)もできるぞ、ASIMO! 体を傾けながら重心移動でバランスを取っているのが分かる | |
そして、走るASIMO!! |
新型ASIMOの主なスペック
- サイズ
- 幅:45cm
奥行き:37cm
全高:130cm
重量:54kg - 関節自由度
- 頭部:3
腕部:7×2
手部:2×2
腰部:1
脚部:6×2 - 走行
- 最大歩行速度:時速2.7km(従来2.5km)
最大走行速度:時速6.0km
旋回走行速度:時速5km(旋回半径2.5m)
運搬歩行速度:時速1.6km(運搬時重量1kg)
飛躍期(ジャンプ時間):0.08秒
ジャンプ距離:50mm(従来6mm)
歩幅:525mm(従来300mm) - 最大稼働時間
- 40分(歩行時)