NPO(特定非営利活動)法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は9日、東京・赤坂見附のホテルニューオータニにプレス関係者を集め、インターネットを安全に安心して利用するための啓発活動“インターネット安全運動”を今月18日から7月18日までの1ヵ月間、日本全国で展開すると発表した。
主催者・来賓が大使である奥菜 恵を囲んでのフォトセッション。奥菜さんの左に実行委員長の土居氏、右にはマイクロソフト(株)の執行役常務ビジネス&マーケティング担当のアダム・テイラー(Adam Taylor)氏、トレンドマイクロ(株)の執行役員日本代表の大三川彰彦氏が並ぶ |
会場には、運動の主催者である“インターネット安全運動”実行委員会実行委員長を務める、中央大学理工学部教授の土居範久氏、JNSAの事務局長の下村正洋氏、および賛同する団体・企業などの代表者が出席して挨拶したほか、安全運動の大使に任命された女優の奥菜 恵さんが招かれ、任命証書の授与と普段のインターネットの利用方法や注意している点などに関するトークセッションが行なわれた。
“インターネット安全運動”実行委員会実行委員長の土居範久氏 |
最初に土居氏が壇上に立ち、安全運動を展開する背景を説明した。土居氏によると、「現在インターネットの利用者は7000万人を超え、国民の8割近くが(携帯電話を含む)何らかの形でインターネットを利用している。しかし、最近は個人情報漏洩などの事件・事故が日常的に報道されるようになってきた。政府も最近になってようやく重い腰を挙げ、情報セキュリティーに本格的に取り組み始めている。企業もセキュリティー対策の認証や情報セキュリティーマネジメントの適合制度などの運用を開始した。しかし、制度が整備されるだけでは不十分で、一般市民が情報セキュリティーの重要性を理解し、実践する必要がある」と述べ、一団体や一企業ではなく、IT関連の企業や団体が枠を超えて一致団結し、業界と市民がセキュリティー対策に取り組むべく今回の“インターネット安全運動”を起こすことになったと語った。
JNSAの事務局長の下村正洋氏 |
続いてJNSAの下村氏が、「ブロードバンドが普及した便利な社会は、悪意のあるものにとっても便利な世の中になっている。例えば100万通のメールを送りつけるにも、昔のISDNでダイヤルアップしていた時代に比べて極めて簡単になってしまった。かつては官庁などのウェブサイトを書き換えて、自分の実力を示すことにステータスを求めていたが、最近は実利を求める攻撃に変わりつつある。手口もますます巧妙になっている。別のページに誘導して振り込ませる(いわゆる“フィッシング詐欺”)など、ITと非ITを組み合わせた詐欺が横行している。こうした悪意のある行動には、ITベンダーやサービスを提供する企業だけでは対処しきれないので、ユーザーも一体になってセキュリティーへの対策、安心・安全を実現する取り組みが必要になる」とユーザー自身への啓蒙・啓発を促した。
JNSAが2004年度までに実施してきた“インターネット安全教室”の概要 |
その上で、「JNSAはこれまでにも“インターネット安全教室”を開催し、映像と文章を使って啓発・啓蒙活動を行なっており、2003年度は全国11ヵ所で延べ2000人、2004年度には28ヵ所3000名を動員した。しかし、JNSAだけでは限界があるため、より大きな波として新たに“安全運動”の取り組みを開始した。この運動は来年以降も続けていくつもりで、現在は37の企業・団体から協賛・後援をいただいているが、今後も募集を続けていく。この運動を通じて、インターネットの利用者の中には、ネットを悪用するものもいるという意識を根付かせ、さまざまな安全対策に実際に触れてもらう機会を作り出したい」「かつて車社会になってから、高度成長期に交通事故の問題が取りざたされたが、“危険だから車を使わない”ということではなく、社会と市民が一体になって安全に努めることで交通事故の発生件数を低下するように努めてきた。インターネットも同様で、悪意のあるものがいるから使わない、のではなくユーザー自身も意識して、安全・安心なインフラにしていきたい」と活動の目的をアピールした。
インターネット安全運動の概要 |
ただ、現時点では具体的な活動内容は決まっていないが、“ネットの安全、身につけよう”をスローガンに掲げて、賛同する団体・企業やJNSA自身がこれまでにも行なってきたような活動を、JNSAを通じて広くPRすることで参加者の増加に務めるとしている。また、活動内容を告知する公式サイト(http://www.jnsa.org/safety)も今月17日にオープン予定となっている。
任命証書を土居委員長から受け取る奥菜さん | SPAMやフィッシング詐欺の悪質性について熱心に説明する土井氏と、それに聞き入る奥菜さん |
続いて、奥菜さんが壇上に上がり、土居委員長から大使の任命証書を手渡された。奥菜さんは昨年インターネット広告代理店の(株)サイバーエージェントの代表取締役社長兼CEOの藤田 晋(ふじたすすむ)氏と結婚しており、「以前からパソコンを使うことはあったが、結婚してからインターネットを利用する機会が増えた」と話す。具体的には、「海外の化粧品を安く買ったり、野菜でも何でも買えますよね」とショッピングやメール、女優活動に関連する情報収集などに利用していることを明かした。ただ、今回の任命については「正直びっくりしました。でも、任命されたからには、多くの人がインターネットを安全に使えるようになってもらいたい」と驚きを隠さなかった。司会者から、「ご主人から(インターネットを安全に使うために)何かアドバイスをもらったりするのですか?」と聞かれると、「あまりそういう話はしないけれど、クレジットカードの番号を簡単に入力したりしないほうがいい、とは言われました」と回答。最後に奥菜さんは、「まだ何も知らない自分ですが、ユーザーの目線に立ってできること、注意すべきことを(公式サイトなどを通じて)しっかりPRしていきたい」と意気込みを述べた。
この日の奥菜さんは、夏らしい薄手の生地のワンピースを水色のリボンで絞った衣装で登場。ミュールとアンクレットはゴールドで揃えていた |