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T-Engineフォーラムほか、“TRONSHOW2005”“TEPS2005”発表会を開催――光合成する夢の住宅“PAPI”が完成!!

2004年12月03日 23時12分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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東京大学教授の坂村健氏を会長とする非営利の任意団体“T-Engine(ティー・エンジン)フォーラム”と(社)トロン協会は3日、“TRONSHOW2005”“トロンイネーブルウェアシンポジウム TEPS2005(以下、TEPS2005)”の開催に先立ち、展示の見どころなどを紹介する記者発表会を開催した。TRONSHOW2005は、トロンプロジェクト、T-Engineプロジェクトの最新成果を紹介する展示会で、7日から9日まで東京・千代田区の東京国際フォーラムで開催される(入場料1000円、事前登録で無料)。TEPS2005は、コンピューターによるハンディーキャップのサポートを考えるシンポジウムで、4日午後に東京国際フォーラムで開催される(入場料無料)。

坂村 健氏
東京大学教授、産学共同のプロジェクト“TRONプロジェクト”リーダー、(株)横須賀テレコムリサーチパークの研究事業“YRPユビキタスネットワーキング研究所”所長の坂村 健氏

TRON(トロン:The Real-time Operating system Nucleus)は、1984年に坂村氏らが中心となって発足した産学共同のプロジェクト。携帯電話/デジタルビデオ/ファクス/自動車のエンジン制御などに採用されている機器組込み用リアルタイムOS“ITRON(Industrial TRON)”など、同プロジェクトから生まれた成果物はオープンアーキテクチャーとして仕様を公開している。

今回の展示会を主催する1団体であるT-Engineフォーラムは、T-Engineアーキテキチャー(後述)の研究開発/標準化/普及啓発活動/関係機関との連絡調整、ユビキタスコンピューティング・ユビキタスネットワーキング技術の研究開発/標準化/普及を推進する技術フォーラム“ユビキタスIDセンター”などの活動を行なう組織で、国内外の470社が加盟している(12月3日現在)。

T-Engineは、ITRONの発展形である“T-Kernel(ティー・カーネル)”と呼ばれるリアルタイムOSと、ハードウェアアーキテクチャーで構成される、携帯情報機器やデジタル家電向けの開発標準プラットフォーム。1月にはT-Kernelのソースコードをウェブサイトで公開し、「これまでに世界中で数千コピーされている」(東京大学教授、TRONプロジェクトリーダー、YRPユビキタスネットワーキング研究所所長の坂村 健氏)という。また“eTRON(entity TRON)”と呼ばれるTRONプロジェクトのネットワークセキュリティーアーキテクチャーに対応し、 インターネットなどネットワークを経由しても、盗聴/改ざん/なりすましを防御して、目的の相手に安全に電子情報を送る機構を備えているという。

坂村氏によって紹介された、TRONSHOW 2005の出展内容の主なものは以下のとおり。薬品トレーサビリティー、電子透かしのucodeタグ認定、n(ナノ)T-Engine専用LSI、p(ピコ)T-Engine は、本日付けで発表された内容。

ユビキタス場所情報システム

非接触式のICタグ読取装置『ユビキタスコミュニケーター』を使い、さまざまな場所に取り付けた専用タグ/マーカーからその場所の識別番号(RFIDやセンサーなどから構成された、“ユビキタスコード(ucode)タグ”)を読み取り、利用者の状況などに応じた情報やサービスを提供する仕組み。国土交通省などが進めている“自立的移動支援プロジェクト”に採用され、今年10月~12月まで神戸・三宮の地下街などでプレ実証実験を実施中という。

ユビキタスコミュニケーター ucodeタグが埋め込まれた専用マーカー
「ユビキタスコンピューターを推進するためのキーテクノロジー」(坂村氏)という、今年9月に発表された、ucodeタグリーダー(非接触、2.45GHz/13.56MHz対応)を内蔵するICタグ読取のためのPDA型デバイス、ユビキタスコミュニケーター。200万画素デジタルカメラ搭載、Bluetooth対応、赤外線通信対応、指紋認証機能、内蔵無線LANによるVoIP電話機能ucodeタグが埋め込まれた専用マーカー。神戸のプレ実証実験では、道路/点字ブロックなどに350ヵ所に埋め込まれた電子タグから現在地、バリアフリー情報、商店の商品情報などを得られた。神戸のほかにも、島根県津和野町で今年10月に始まった観光案内実用化実験“津和野ユビキタス観光ガイド”に採用されたという

薬品トレーサビリティー

薬品トレーサビリティーはucodeタグを利用した医薬品流通実証実験で、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所、ユビキタスIDセンター、東京大学医学部付属病院、東京大学大学院情報学環21世紀COE、(株)エヌ・ティ・ティ・データが行なっている。実証実験では注射剤サンプルが工場から出荷され、病院に入荷するまでの過程をトレースするもの。現存するトレースシステムは、エンドユーザー(病院)内でタグを貼付するというもので、今回のような工場から病院まで一環した医薬品流通の追跡を行なうシステムは国内初という。

ucodeタグを貼り付けた薬剤
ucodeタグを貼り付けた薬剤(坂村氏のプレゼンテーションより)

電子透かしのucodeタグ認定

ユビキタスIDセンターは、日本電信電話(株)(NTT)開発の電子透かし技術を利用したucodeを埋め込んだ画像を、“Category 0のucodeタグ(印刷ucodeタグ)”として認定。坂村氏は、ユビキタスコミュニケーターの内蔵カメラを使ってucodeを埋め込んだ画像を撮影すると、画像から電子透かし情報を取り出し、空港へのアクセス情報を表示するというデモ用のピクトグラムを紹介した。

デモ用のピクトグラム
デモ用のピクトグラム

ミュー(μ)チップRW

(株)日立超LSIシステムズが開発した書き換え可能な非接触ICチップ。詳細はTRONSHOW 2005の会場で発表するとし、記者発表会では製品の写真だけ公開された。

ミューチップRW(坂村氏のプレゼンテーションより)
ミューチップRW(坂村氏のプレゼンテーションより)

「続々増える、ユビキタスIDセンター認定ucodeタグ」として、坂村氏はチップ/タグの認定作業に対する方針を語った。「チップを1個でやる(ユビキタスの世界を実現する)のは無理。クスリ瓶、食品、床……いろんなものにチップを埋め込みたいが、1個のチップで全部をカバーなんて技術的に無理。周波数も変えなければならない。(中略)チップの価格の問題は、各社のノウハウやアイデアがあるわけだから、誰かが援助する必要はない。いろいろなチップが出ても、全部、ユビキタスコミュニケーターで読める、これが重要。どこか1社のチップだけを使うというのは、おかしい。そんなことをしたらユビキタスコンピューティングの世界は、その会社にお金が全部行っちゃうから。やはりチップは(標準化団体が)認定して、メーカーにプロトコルを公開してもらって、読み取り機のほうで吸収するっていう考えが、21世紀主流になると信じている」

nT-Engine専用LSI

nT-Engineは、ユビキタス環境下でネットワークを介してセンサーやさまざまな機器を制御するための小型ネットワークノード。サーバーがなくても、通信ケーブルを挿すだけで自動的にネットワークを構築し、ネットワークアドレスなどの情報は、各ノードが情報を交換して競合しないよう自立的に設定するという。また、eTRONの機能を採用し、セキュアな制御ネットワークを可能にする。主なターゲットは、住宅制御/ビル管理/工場管理/車載ネットワークなど比較的小さなリアルタイムデータがやり取りされる“制御系リアルタイムネットワーク”という。YRPユビキタス・ネットワーク研究所は、nT-Engine専用のLSIを開発した。LSIを搭載した基本ボードのサイズは幅28×奥行き33×高さ11mm。この基本ボードのほか、湿度/温度/照度/人感/ガスの各種用途向けセンサーを搭載した“センサーボード”など、基本ボードを応用した9種のハードウェアが参考展示された。なお、現在は技術発表の段階として、具体的な今後の展開などは明らかにされていない。

nT-Engine専用LSI(基本ボード) 各種用途向けセンサーを搭載したセンサーボード
nT-Engine専用LSIを搭載した基本ボード基本ボードに湿度/温度/照度/人感/ガスの各種用途向けセンサーを搭載したセンサーボード

pT-Engine

pT-Engineは、YRPユビキタス・ネットワーク研究所と(株)日立製作所が開発した、ユビキタス環境でセンシング/制御を行なうプラットフォーム。超小型(本体サイズ幅20×奥行き20×高さ5mm)、超低消費電力(ボタン電池1つで1年以上稼動)の小型コンピューターで、無線でネットワークに接続する。照明器具/スイッチ/センサー/電磁ロックなどが主なターゲットという。記者発表会では、温度や湿度などを計測する太陽電池搭載のpT-Engineモジュールなどが紹介された。

太陽電池を搭載するpT-Engineモジュール
京セミ(株)の太陽電池を搭載するpT-Engineモジュールは、温度や湿度などを自動取得するというもの。畑などに設置して環境情報を自動的に取得し、生産者はユビキタスコミュニケーターを使って情報を確認、さらにサーバーに記録するという利用方法をイメージしている

モバイルIP高速ハンドオーバー

YRPユビキタス・ネットワーク研究所は、移動中でもストリーミングビデオなどのリアルタイムアプリケーションを途切れることなく利用するために必要な、ネットワーク間の高速IPハンドオーバー機能を開発し、T-Kernel上での実装に成功したという。

TRON 電脳住宅の21世紀版!! “トヨタ夢の住宅PAPI”

坂村氏は、TRONSHOW 2005の展示内容のほか、トヨタ自動車(株)トヨタホーム(株)と共同で、燃料電池・太陽光・太陽熱を使ったハイブリッド・エネルギー住宅“トヨタ夢の住宅PAPI(パピ)”をデザイン/設計/開発したことを発表した。建物は2階建てで、延べ床面積は633平方メートル。

同住宅には、いたるところに、TRONプロジェクト、T-Engineフォーラムの思想や技術が使われている。例えば、植物の光合成をヒントに、外壁には色素増感型太陽電池壁モジュールが組み込まれ、家全体で発電する。ホームシアターは、人の気配がするとBGMが流れ、映像が始まると音響と照明を自動調節する。またユビキタス・コミュニケーターを使って機器を制御することが可能。ガレージには電気自動車が止められており、ホームサーバーとカーナビゲーションをネットワークで接続してデータをやり取りしたり、電気自動車を充電したりする。停電時には電気自動車から電源を家側に供給し、フル充電していれば「36時間は家の能力を落とさずに維持できる」(坂村氏)という。ちなみに総開発費・施工費は、数十億円とだけ紹介された。

同住宅は2005年開催の“愛・地球博”の会場に隣接した愛知県愛知郡に作られ、2005年3月25日から9月25日まで一般公開(要予約)を行なう。

PAPIの外観(昼) PAPIの外観(夜)
PAPIの外観(昼)PAPIの外観(夜)
ホームシアター ガレージ
ホームシアターガレージ
坂村氏が住宅の設計デザインするのは今回が初めてではない。「“TRON 電脳住宅”の21世紀版を作ろうと5年ほど前からトヨタ自動車からプロジェクトを進めた」(坂村氏)。TRON 電脳住宅は、パイロット版が1989年竣工し、1000個のコンピューターが組み込まれたことで知られている


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