11月30日から開催されている“SAP TechEd '04”の基調講演のメインスピーカーとして登場した独SAP社のMember of the Extended Executive BoardでNetWeaverの開発最高責任者あるクラウス・クレップリン(Klaus Kreplin)氏は、まずNetWeaverの広がりについて説明した。
基調講演のメインスピーカーとして登場したクラウス・クレップリン氏 |
NetWeaverに関するパートナー企業数は現在2150社。内訳は同社のアプリケーションサーバーを利用してポータル、ユーザーインターフェースを活用している企業が50社、NetWeaverと相互運用性をもたせた製品をだしている企業が400社、サービス&テックパートナーが1700社となっている。氏はこれらの数字を挙げながら、一方でこれらの企業のほかにSAP Developer Network(SDN)というコミュニティーの参加者が約10万人となったことに自信を見せた。「昨年のTechEdで、このコミュニティーを立ち上げたが、月間7500件の投稿があり、最初のレスがつくまで3時間平均となっている状態だ。しかも、ここに参加する人の6割がSAP以外の人たちで、知識を共有しあっている」と関心の高まりをアピールした。
「NetWeaverに関するパートナー企業数は2150社まで広がった」 |
SAP Developer Network(SDN)では月間7500あまりの投稿があり、NetWeaverに関心を持つ人たちが情報交換を行なっている |
また、これらの顧客から得た教訓として「いわゆるビジネスプロセスのプラットフォームがこれからでてくるのではないかと思う」と話し、今後登場するであろう汎用的なアプリケーションとテクノロジーインフラとが組み合わされたものを“アプリストラクチャー”と呼んだ。
ITの視点から見るとビジネスは革新的なライフサイクルを繰り返すと、氏は話す。そのライフサイクルは創案→拡大→結合→外注→中止→内注→複合化という流れをたどる。ある投資を行なってカスタムコーディングを行ない(創案)、数百万のトランザクションを処理するために24時間の体制を整える(拡大)。しかしそこに標準化された製品をもつパートナーがいればそれらを利用することになる(統合)。コストのメリットが大きいからだ。しかしこの段階で標準化されたものはもはやミッションクリティカルではなくなり、自社だけではなくサードパーティーに外注することができると考えるだろう(外注)。顧客のなかには自社で管理したいというシステムもある。ここでビジネスプロセス自体から撤退するか、もしくは一部を内注するという判断がなされる(中止・内注)。ここではもうひとつのチャンスが生まれる。つまりあるプロセスをリコンポーズすることだ。つまり標準化から革新にもどることができる(複合化)。氏が言いたいのはつまりビジネスプロセスの変革に柔軟に対応できるものがESAであり、その中心にあるのがNetWeaverということだ。NetWeaverを導入したヨーロッパのあるアパレルメーカーはオーダー管理、製造などERPシステムを統合し、マスターデータも一本化する一方で、請求処理を外注化。輸送システムを外部とつなぐなどダイナミックなソーシングを実現しているという。
ビジネスは革新的なライフサイクルを繰り返すことを説明するチャート。航空会社のセルフチェックインシステムが創造され標準となり、やがてはアウトソースされ、ビジネスプロセスから中止されるまでを例えて説明した |
NetWeaverを導入したアパレルメーカーのITチャート |
NetWeaverのアーキテクチャーの説明ではマスターデータマネージメント(MDM)についての解説もなされた。MDMはマスターデータをさまざまなシステムから取得し、ひとつに統合しクリーニングする。この時にデータの調和もとられ配信される。これによるり、マルチプロセス、マルチベンダーの対応がなされる。同社は7月に米A2i社の買収を発表した。これによりMDMの拡張機能版ともいうべきMDMEを第4四半期に発表しようとしていることを明らかにした。