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【2003 JavaOne Conference Vol.1】モバイルデバイスへの取り組みが前面に!Javaのロゴも新しく!

2003年06月11日 20時47分更新

文● 渡邉利和

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米国San FranciscoでJavaOneが開幕した。世界最大の開発者会議と言われる“JavaOne(2003 JavaOne Conference)”初日の様子をお伝えしよう。

米国San FranciscoのMoscone Center
会場となった米国San FranciscoのMoscone Center

例年なら“Keynote(キーノート)”として開催される、いわゆる「基調講演」が、今年は少々スタイルを変更して“General Session”と呼ばれている。これまでは米Sun Microsystems(以下、Sun)のエグゼクティブのほか、スポンサー企業による講演があったりしたのだが、今年はすべてSunの人間による講演となっている。初日の朝から開催された“General Session”は、SunのExecutive Vice PresidentでSoftware GroupのJonathan Schwartz(ジョナサン・シュワルツ)氏が中心に行なわれた。

セッションはまず、“JavaOne”の顔となっているJohn Gage(ジョン・ゲイジ)氏の挨拶で始まった。なお、John Gage氏の役割も、例年の“Host”から“Emcee”(司会者)に変更されていた。Gage氏は、「Javaのボリュームは閾値を超えた」という表現でJavaが十分に普及し、これからはJavaを前提として新しいサービス等を構築していく土台ができたことを明らかにした。
 続いてJonathan Schwartz氏が登上し、Javaの普及の度合いを具体的な数字を示しながら紹介した。たとえば、5億5000万台のデスクトップ上でJavaが稼働しているとか、Javaの開発者は300万人以上だとか、JavaCardの発行数は3億枚だとかいった具合である。

Jonathan Schwartz
Jonathan Schwartz(Executive Vice President, Software Group)

さらに、Javaはどこにでも(Everywhere)存在するということを強調した。Everywhereという語は、Javaの登場初期から繰り返し語られてきた言葉で、古くは“Write once, Run Everywhere”(一度書けばどこでも動く)というスローガンとしても使われていた。しかし、当時はコンピューターのOSやハードウェアの違いを超えてプログラムが可搬性を備える、というニュアンスが色濃くあったが、現在ではEverywhereという語が指し示す対象がより幅広くなっている。携帯電話やPDA、さまざまな家電製品や組み込みデバイスなど、まさに「Javaはどこにでも存在している」と言っても違和感のない状況になってきた。日本では、iアプリを初めとして、Javaを利用する携帯電話がごく普通に利用されているが、米国でも同様の状況が整いつつある。それを受けてか、今回の“JavaOne”では携帯電話に代表されるモバイルデバイスへの取り組みが前面に打ち出されている。
Schwartz氏は

Java Compatibility+Java Security=Java Mobility

という式を示し、Javaの互換性とセキュリティーがモバイル市場での利用のための強力な武器となっていることをアピールした。

JavaによるWeb Serviceの利用例としてSchwartz氏が公開したデモ
Javaによるウェブサービスの利用例としてSchwartz氏が公開したデモ。Amazon.comが公開しているWeb Serviceインターフェースを利用して、検索の結果をグラフィカルに表示している。もちろん、Amazon.com側では特別な処理は何も行なっておらず、従来通りの検索機能を提供しているだけ。クライアントのJavaプログラムで、Amazon.comから送られてきた検索結果をグラフィカルに表示して、ユーザーの利便性を高めている。実用システムではなく、Javaでここまでできる、ということを示すためのサンプルデモプログラムである

続いて登上した英Vodafone Global Content Services社のCEO、Guy Laurence氏は、WAPの利用は成功を収めていないとした上で日本の状況を紹介し、低速で制約の多いWAPではなく、Javaベースのシステムとすることで日本では高速な接続を利用してカラー画像や高品質な音声など、魅力的なコンテンツを提供していると語った。そして、会場を埋める開発者たちに対して、魅力的なコンテンツが求められていること、そしてそれを提供することで価値や利益を作り出し獲得することができるとして、多くの開発者の参加を呼びかけた。
 さらに、米GE Medical Systems社からVP of Clinical Enterpirse SolutionsのBrian DeBusk氏がゲストとして登壇し、医療分野での取り組みについてデモを交えて紹介した。

Guy Laurence
Guy Laurence(CEO, Vodafone Global Content Services)
日本でのJavaコンテンツサービスの成功の要因
Guy Laurence氏が示した、日本でのJavaコンテンツサービスの成功の要因

 その後、SunのChief Technology Officer Software GroupのJohn Fowler氏が講演を行ない、今後のJava環境の発展の方向性の概要を語った。Fowler氏によれば、今後さらにJavaでの開発を容易にするために、機能を増やしていくことよりもむしろ複雑さを軽減し、より単純にしていく方向を重視するという。また、より高度な機能を持つ開発ツールの投入も期待される。明日詳細が明らかになるというProject RAVEがこの分野でのSunの取り組みだが、このほかにもOracleとBolandの担当者がそれぞれ開発ツール分野での最新動向を紹介した。

 また新しい発表として、Javaのロゴを新しくし、ブランディングキャンペーンを強化することも明らかにされた。Java対応の端末等が一般的になってきた現状を踏まえ、直接消費者にアピールする意味がある。従来は「実はJavaが使われているが、一見それを示すものは何もない」という状況が多かったが、今後はユーザーの目に触れるところに新しいJavaのロゴが表示されることで、ユーザーに「Javaが使われているからこそこうした機能が実現できているのだ」という認知を積極的に獲得していく方向だ。これには、Javaを使った製品やサービスを提供している企業や開発者を従来以上に協力に支援していく意味もあるだろう。併せて、新しいウェブサイトとして、開発者向けに“java.net”、コンシューマー向けに“java.com”が開設され、それぞれ特化した情報提供を行なっていく方針も明かされた。
 去年までに比べるとやや派手さは薄れた印象だが、その分開発者向けに直球勝負にきた感があり、内容的に充実した講演であった。

古いJavaロゴ
General Sessionのステージ脇に掲示されていた古いJavaロゴ。実はパネルの前に吊り下げられた幕に描かれている
新しいロゴ
発表に合わせて幕が落とされると、下から新しいロゴが現われた。新しいロゴは、現代風にデザインを改めると同時に、携帯電話等の小さな画面にもきれいに表示できるように単純化されている
コンシューマ向けの新サイトjava.com
コンシューマー向けの新サイトjava.comでは、携帯電話ユーザー向けのコンテンツが前面に出てきている
開発者向けの新サイトjava.net
開発者向けの新サイトjava.netでは、一転して文字情報中心で大量の情報を集めている

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