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【2003 JavaOne Conference Vol.3】2つのプロジェクト“Project RAVE”“Project Relator”が明らかに!

2003年06月17日 16時58分更新

文● 渡邉利和

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“2003 JavaOne Conference(以下、JavaOne)”のメインテーマとしてはいろいろな要素が出てきてはいたが、まず最大のメッセージとしてあげられるのが、

Java Everywhere

であろう。Javaの普及が閾値を超え、量の拡大が質的な転換を引き起こす臨界点を突破したという認識である。ついで、この認識と密接に関連し、裏表の関係にあるメッセージが、

EoD(Ease-of-Development)の実現

というものである。プラットフォームが拡大し、一般消費者が誰でもごく当たり前に利用する段階を迎えれば、当然アプリケーション開発の需要もさらに拡大する。このときに開発者向けに敷居を下げる努力をする必要がある、ということだ。

まず、Java Everywhereと言われる場合に前提となっているのは、やはり米国市場でのJava対応携帯電話が本格的な普及期に入ったとの認識である。これに関しては日本が圧倒的に先行している分野なので、日本から見ると少々「なぜこの時期に」という感があるのは否めないが、これはある意味仕方のない部分だ。

一方、EoDの実現に関しては、言語仕様を拡張する形でコードを書きやすくするという取り組みが、コードネームで“Tiger”と呼ばれる『J2SE 1.5』リリースを目標に進められている。さらに、開発ツールの高機能化によって開発をより容易にしようとする試みも重要になってきている。米Sun Microsystems(以下、Sun)が取り組んでいることが明らかにされたプロジェクトとして、今回は“Project RAVE”と“Project Relator”がdemonstrateされた。

■“Project RAVE”

“Project RAVE”
“Project RAVE”のデモ画面。企業内アプリケーションに多いデータベースアプリケーションをビジュアルに開発する様子を見せた

“Project RAVE”は、主として企業内でのアプリケーション開発をターゲットとした開発ツールであり、その最大の特徴と言えるのはJava Server Facesをサポートすることである。Javaのビジュアル開発環境は既に市場にいくつも存在するが、Java Server Facesはまだ仕様策定が終わっていない段階にあるため、公表された取り組みとしては“Project RAVE”が初めてのものだろうと思う。

Java Server Facesはクライアントの画面に表示されるGUIコンポーネントをサーバー側で用意する、という発想に基づいている。サーバーサイドのGUIコンポーネントということだ。従来のJavaアプリケーションでは、GUIコンポーネントとしてはSwingなどのクライアント側に用意された標準コンポーネントを利用するのが一般的だ。しかし、この場合はクライアントのJava実行環境の違いに影響を受けたり、あまり高度な機能を実装しにくいといった欠点もある。一方、Java Server Facesを利用すると、GUIコンポーネントをサーバー側で制御するため、クライアント環境の影響を受けにくい。従来企業内でVisual Basicなどを使って作られていたいわゆる“Rich Client”を実現しやすくなるわけだ。さらに、できあがるのはJava Server Facesを利用したウェブアプリケーションなので、アプリケーションの配布の手間がなく、管理が容易になるというメリットも得られる。企業内クライアントのVisual BasicベースからJavaベースへの移行を促すための強力な武器になると予想される。



■“Project Relator”

“Project Relator”
“Project Relator”のデモ。左側に見えているのはJavaロジック。右側でデザインしたGUIとロジックを連携させて、画面表示やボタンの機能等を変更する。GUIはスキンを入れ替えることで簡単にまったく違うイメージに変更できる

また、“Project Relator”は、詳細はよく分からないのだが、単純化して言うとPDA等の携帯端末向けのGUIジェネレーターといった性格のツールのようだ。基本的にはPersonal Java Profileをサポートし、Personal Java Profileに用意されたAPIを通じて端末の画面の仕様(画素数や表示可能色数等)を取得し、それに合わせて自動的に画面を調整する。また、Javaプログラムのロジック部分とGUIとの関連づけはグラフィカルに“線で繋ぐ”操作で実行できるようになっており、ロジック開発者とGUIデザイナーの仕事を明確に分離できるように配慮されている。現時点での“Project Relator”ではPersonal Java Profileを前提としているため、実際にはある程度高機能なPDA等が主要ターゲットとなる。高度なグラフィックス機能をサポートし、Java 3Dなどを容易に利用できる反面、作成されるアプリケーションのメモリー消費量が多くなりがちであるとか、CPUパワーをある程度必要とするといったこともあって、MIDPを中心とした携帯電話向けのアプリケーション開発は現状ではちょっと難しそうだ。これについてSunの担当者は、将来的にはMIDPデバイスの機能もより強化され、こうした点は大きな問題と見なされなくなるだろうという見通しを語ったが、少なくとも今年や来年の話ではなさそうだ。また、Personal ProfileやMIDPではない独自の仕様を持つ端末、たとえば(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモのiモード端末向けのソフトウェア開発の機能は現時点では組み込まれていないと言う。

“Project RAVE”と“Project Relator”は、いずれも「研究開発プロジェクト」というよりは具体的に進行中の製品開発作業といった色彩が強いが、そのいずれも「今後急速に増加すると思われる開発者層」を想定し、Java言語を深く習得しなくても必要な開発が行なえるように開発ツール側で支援を提供する、という目標が共通している。



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