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ボーランド、ビジュアル開発ツール『Delphi 7 Studio』『Kylix 3』日本語版を発表

2002年08月22日 23時43分更新

文● 編集部 佐々木千之

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ボーランド(株)は22日、都内で記者発表会を開催し、Windowsプラットフォーム向けビジュアル統合開発ツール『Borland Delphi 7 Studio』(ボーランド デルファイ セブン スタジオ)日本語版とLinuxプラットフォーム向けビジュアル開発ツール『Borland Kylix 3』(ボーランド カイリックス スリー)日本語版を発表した。また米ボーランドソフトウェア社アジア・パシフィック地域担当副社長のジュリアン・クイン(Julian Quinn)氏が同社の戦略について説明した。

C/C++での開発も可能な『Kylix 3』

Kylix 3はLinuxプラットフォーム向けのビジュアル開発ツールの最新バージョン。2001年11月に発表した前バージョン『Borland Kylix 2』まではWindowsプラットフォーム向けの『Delphi』シリーズのLinux版という形で、ObjectPascal言語(Delphi言語)だけに対応していたが、Kylix 3からはC言語とC++言語にも対応した。

『Borland Kylix 3』パッケージ『Borland Kylix 3』パッケージ

ボーランドによると、Linuxプラットフォームを企業が採用するにあたって、コストの削減が期待されているが、ビジュアル開発環境などのWindowsスタイルに慣れた開発者には参入しづらい面があり、コスト削減に繋がっていない現状があるという。Kylix 3ではビジュアル開発ツールとしての定評に加えて、今回、Linuxにおける標準的な開発言語であるC/C++に対応したことで、すでにあるC/C++言語のソフトウェア資産をも活用でき、一層の開発工数削減が可能だとしている。また、Windowsプラットフォーム向けビジュアル開発ツール『Borland Delphi』『Borland C++ Builder』と連携して、WindowsとLinuxでのクロスプラットフォーム開発が可能な“CLX(クリックス)コンポーネントライブラリー”もサポートする。

『Borland Kylix 3』の画面
『Borland Kylix 3』の画面

Kylix 3には、主要なデータベースへのネイティブアクセスをサポートする“Borland dbExpress”ドライバー、XSLをサポートしソースデータとXSL変換によってHTMLページを生成する“XSLページプロデューサー”を搭載し、CORBAクライアント/サーバーの開発が可能な『Borland VisiBroker 4.5 for Kylix 3』を同梱する。

Kylix 3 Enterpriseパッケージの機能
Kylix 3 Enterpriseパッケージの機能

Kylix 3には、エンタープライズ向けeビジネスアプリケーションの開発が可能な『Borland Kylix 3 Enterprise』(24万円)、主にデスクトップアプリケーション開発者向けの『Borland Kylix 3 Professional』(6万8000円)の2つの商用パッケージと、GPLベースのオープンソースプロジェクト開発者向けの『Borland Kylix 3 Open Edition』(無償ダウンロード)を用意する。商用パッケージは9月26日に出荷開始予定で、Kylix 3 Open Editionは商用パッケージ出荷後まもなくダウンロード可能になるとしている。

ボーランドが提供する開発ツールの、プラットフォーム対応関係
ボーランドが提供する開発ツールの、プラットフォーム対応関係

『Delphi 7 Studio』は.NETへの移行パスを提供する

Delphi 7 Studioは、Windowsプラットフォーム向けのビジュアル開発ツールの最新バージョンで、従来のDelphi言語仕様を拡張し、“.NETフレームワーク”に対応したことが大きな特徴。“ASP.NET”“.NET Web Service”“WinForms”“Compact Framework”“MSIL”など、.NETフレームワーク仕様を完全サポートするとしている。ただし、Delphi 7 Studioでは、従来のDelphi言語仕様のコンパイラーのほかに、.NETフレームワーク拡張仕様対応のコンパイラー『Delphi for .NET Preview』を別途用意する形となっており、Delphi for .NET PreviewではDelphi 7 Studioのフル機能を利用することはできない。このため、ボーランドでは、早期に.NETフレームワーク対応アプリケーションを開発したい開発者向けに“.NETへの移行パスを提供する製品”としている。米ボーランドソフトウェアでは“完全な”.NETフレームワークへの対応は次期Delphiで提供するとアナウンスしている。

『Borland Delphi 7 Studio』パッケージ『Borland Delphi 7 Studio』パッケージ

また、Delphi 7 StudioにはKylix 3(Delphi言語対応版)をバンドルしており、1パッケージで.NETフレームワークへの対応だけでなくLinuxプラットフォームとのクロスプラットフォーム開発も可能だとしている。

『Borland Delphi 7 Studio』で初めて日本語化して同梱した『ModelMaker』
『Borland Delphi 7 Studio』で初めて日本語化して同梱した『ModelMaker』

Delphi 7 Studioでは、米国において従来の『Delphi 6』から提供しているUML(Unified Modeling Language)ベースのモデリングツール『ModelMaker』を初めて日本語化して搭載した。ModelMakerを使うとソースコードとビジュアルモデルの双方向変換が可能で、アプリケーション設計からコーディングまでをシームレスにサポートできるとしている。ModelMakerはノルウェーのModelMaker Tools社の製品だが、ボーランドの協力によりローカライズしたという。

このほかDelphi 7 Studioでは、ウェブサービスアプリケーション向け機能強化として、“UDDI(Universal Description, Discovery and Integration)ブラウザー”によるビジュアル操作によるウェブサービスのインポート、UDDIベースのフェールオーバー機能などをサポートし、ウェブサービスクライアントを開発しやすくなったという。さらにクロスプラットフォーム対応のレポーティングツール『Rave Raports』、ビジュアル開発のフォーム設計感覚でHTMLベースのウェブアプリケーションを開発できる『IntraWeb』も搭載している。

Delphi 7 Studio Enterpriseパッケージの機能
Delphi 7 Studio Enterpriseパッケージの機能

Delphi 7 Studioには、情報システム構築開発向けの『Borland Delphi 7 Studio Enterprise』(36万円)、個人のパワーユーザーから小規模なシステム開発向けの『Borland Delphi 7 Studio 』(6万8000円)、Windowsプログラミング学習や趣味向けの『Borland Delphi 7 Personal』(1万円)の3パッケージを用意する。Delphi 7 PersonalにはKylix 3はバンドルされない。出荷開始は9月26日の予定。

「ボーランドは常に顧客に選択の機会を提供する」

発表会でアジア・パシフィック地域の戦略について説明したジュリアン・クイン氏は「アジア・パシフィック地域では9ヵ国に13の拠点を持ち、日本、インド、中国、オーストラリアなどの市場で強い存在感を持っているが、ボーランドはアジア・パシフィック地域を特に重視しており、各国市場でより大きな地位を得られるよう努力していく。ボーランドの2002年第2四半期(4~6月期)、アジア・パシフィック地域の成長率は約38%に達するなど、急速な成長を見せている」という。

米ボーランドソフトウェア社アジア・パシフィック地域担当副社長のジュリアン・クイン氏
米ボーランドソフトウェア社アジア・パシフィック地域担当副社長のジュリアン・クイン氏
ボーランドのアジア・パシフィック地域拠点
ボーランドのアジア・パシフィック地域拠点。VisiBrokerはシンガポールを中心に開発されたものだという

クイン氏はさらに「調査会社によれば.NETフレームワークとJava(J2EE)プラットフォームは、今後両方とも広く普及するという。ボーランドはそのどちらにも開発ツールを提供することで、特定の技術にとらわれることのない、顧客が(技術の)選択の機会を持つことができるソリューションを提供している。我々のツールを使う限り顧客に選択権がある」とし、特定のプラットフォームに偏らない開発ツールベンダーだという立場を強調した。

.NETとJ2EEのいずれもサポートするというボーランドのウェブサービスサポート戦略
.NETとJ2EEのいずれもサポートするというボーランドのウェブサービスサポート戦略

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