(株)ロイヤルホテルとシスコシステムズ(株)は3日、都内で記者発表会を開催し、大阪・中之島の“リーガロイヤルホテル”の特別客室階“ザ・プレジデンシャルタワーズ”の2フロアに、シスコシステムズの無線LANシステムを導入すると発表した。システム構築と運営・管理は西日本電信電話(株)(NTT西日本)が請け負う。営業開始は4月下旬予定。
リーガロイヤルホテルは30階建てのホテルで、23~27階を企業のエグゼクティブユーザーなどに向けて、豪華な内装の客室、専用フロント、24時間待機の執事といったプレミアムサービスを提供する特別客室フロア“ザ・プレジデンシャルタワーズ”としている。
(株)ロイヤルホテル、情報システム部の中村吉弘部長 |
今回、このフロアの改装に伴なって、23、24階にシスコシステムズの無線LANアクセスポイント『Cisco Aironet(エアロネット)』を使ったIEEE 802.11b規格対応の無線LANシステムを導入するという。リーガロイヤルホテルでは、ザ・プレジデンシャルタワーズ以外も含めた全室にダイヤルアップ用電話回線を用意しているほか、2000年3月からはHomePNAを利用した有線(パソコンとの接続はEthernet)によるインターネット接続サービスを提供している。無線LANはプレミアムサービスの一環として、ザ・プレジデンシャルタワーズ宿泊者(※1)向けに無料で提供する予定。
※1 ザ・プレジデンシャルタワーズの宿泊料は1名での利用の場合ダブルが3万2000円から、ツインが3万7000円からとなっている。なおシングルはない。ロイヤルホテル情報システム部部長の中村吉弘氏によると、最近は宿泊客から「LANが使えるか」「パソコンは借りられるか」などの問い合わせが増えているという。無線LANの導入に関しては、ほかの宿泊客のデータが見えたりといったことがないよう、セキュリティー面を重視したほか、特にインターネット接続への要望の多い外国人宿泊客への知名度の高さから、シスコシステムズの製品を選択したという。
ネットワークシステムとしては、インターネットとの接続は128kbpsの専用線を使っているが、これをBフレッツによる100Mbpsに高速化し、有線インターネットサービスで利用しているHomePNA回線でアクセスポイントに接続する。アクセスポイントは23、24階に各4台ずつ設置しているという。Aironetのアクセスポイントは、シスコシステムズの独自セキュリティー技術である“PSPF(Publicly Secure Packet Forwarding)”機能を持っており、PSPFを使うことで、接続するユーザーがWindowsの共有ファイル設定などを利用していても、ユーザー同士のパソコン間で直接データのやりとりができないようになるという。PSPFはアクセスポイント側のみで実現できる技術で、クライアント側ではドライバーソフトのインストールや設定変更といった作業は不要としている。ザ・プレジデンシャルタワーズの宿泊客は、IEEE 802.11b無線LANに接続できるパソコン(Windows、Pocket PC)を持っていればそのまま利用できるほか、無線LANカードやノートパソコンを借りられる。
シスコシステムズの無線アクセスポイントが持つ“PSPF”機能の概要 |
今後は、ホテル内ネットワークをHomePNA(最大通信速度1Mpbs)からVDSLなどもっと高速のネットワークに変更するほか、リーガロイヤルホテルのほかのフロアへの拡張や、ロイヤルホテルグループのホテルへの展開を予定しているという。
シスコシステムズ、アライアンス&テクノロジー本部アライアンス推進部プログラムマネージャの斎藤真紀子氏 |
シスコシステムズのアライアンス&テクノロジー本部アライアンス推進部プログラムマネージャの斎藤真紀子氏は「無線LANによるホットスポットサービスが始まっているが、ファーストフード店などで導入した場合、それが売り上げにつながっているかというと難しい。米国では、ホテルの客室に高速のインターネット接続を提供することで、連泊したり、繰り返し利用するリピーターを獲得するなど、客室の利用率が向上するという結果が出ている。この流れは日本にも来る」と述べた。
ホテルの有線でのインターネット接続サービスは、東京・港区のホテルオークラや新宿区のホテルセンチュリーハイアット東京、京王プラザホテルなど、シティーホテルで導入が進んでいるほか、一部では今回のリーガロイヤルホテルのように無線LANの導入も始まっている。ビジネスマンのツールとして電子メールやインターネットの利用がもはや必須であり、ビジネスユーザーの利用の多いシティーホテルのキラーアプリケーションとして、インターネット接続サービスは欠かせないものになりつつあるようだ。