日刊アスキー Linuxでは、「Do Linux!に迫る」と題して、人材サービス企業パソナテックが運営する、Linux技術者育成/就職支援プロジェクト“Do Linux!”のレポートを13回(前後編もあるので実際はそれ以上)お届けしてきた。Do Linux!はその後順調に卒業生を増やし、現在Do Linux!を経てLinux業界で活動する人々は総計約80人にも達している。
ここでDo Linux!の一連の流れをかいつまんで説明しよう。Do Linux!は、参加のための試験に始まり、RHCE(Red Hat Certificate Engneer)取得のための授業とRHCE資格試験を受け、最後に実践コースによって現場感覚を養ったあとにパソナテックの紹介でLinux企業へ就業するという形になる。就業先は、大手メーカーからLinux専門企業まで多岐にわたる。各行程の詳細は、ページ末の関連記事を参照していただきたい。
そしてこのたびDo Linux!では、後半のメニューである“実践コース”の内容を変更した。なんとDo Linux!卒業生の技術情報交換を目的としたWebサイト“dolinux.jp”の構築と運営を、実践コースに位置づけたのだ。つまり、卒業生用のWebシステムを、Do Linux!現役生が保守/運営し、それがすなわち実践コースとなるわけである。“dolinux.jpは、12月中旬にオープンする予定である。
実践コース研修施設があるパソナテック10階 |
今回のDo Linux!レポートは、コーナー名を新たに「なるほど! Do Linux!」と改め、新しくなったDo Linux!実践コース=dolinux.jpの紹介を、前後2回に分けて行なっていきたい。今回は概要を紹介し、次回ではコース内容についてより深い内容をお届けする。
dolinux.jpを実践コースに用いるワケ
まずは、なぜ、dolinux.jpを立ち上げ、それを実践コースに用いるのだろうか? その経緯についてだが、パソナテックがDo Linux!を開始してから1年半が過ぎ、受講生からのアンケートを見ると、旧実践コースよりもさらに実践的な内容にしてほしいという要望があったのだという。
今までの実践コースも、内容的には悪くはない。しかし実際の運用のイメージが掴みづらいという面はあった。あくまでも研修という枠の中で、仮のサーバを立てて設定をして、終わったらすぐ次の演習という形で、サーバを構成する要素ひとつひとつをバラバラで構築することは、実際のサーバ構築ではあり得ない。
また、インターネットに接続して、実際のアクセスからのセキュリティを管理したり、そのログを見て解釈をするといったことも仮環境では不可能だ。実際にインターネットに繋がっているか、いないかというのは、かなり大きな差だろう。
こうした要望を聞いたときに、懸案であった卒業生の情報交換サイト設立のプランが浮上してきた。せっかくWebサイトを作るのであればその情報交換サイトを研修でやろう! そうすれば先輩/後輩でも技術情報を交換できることになる……。こうした一石二鳥の構想が、dolinux.jp実践コース導入の理由である。
実践コースを受け持つ、パソナテックの高久博也氏は、「より実践的にしました、というのが一番で、情報交換もしたい」と語る。高久氏はマイクロソフト関連のトレーナーを経験後、Linuxのシステム運用管理にも携わったり、RHCEトレーナーとしても活躍してきた方だ。
実践コースが行なわれる教室。この日も、熱心な受講生がサーバ構築を行なっていた。 |
高久氏は、技術的なデータベースを充実させたいとしている。目指すのはエンドユーザーでも開発者でもなく、実際にシステムを運用しているLinuxシステム運営者のグループだ。そこでは製品情報を交換したり、“ここがおかしいのでこう対処すればよい”といったノウハウも蓄積される。実際に運用している人たちに参考になるような、便利なドキュメントも一般に公開する。
さらにパソナテック側は、レッドハットの協力のもとRHCE取得のためのコーナーや、RHCEのバージョンアップ対応も行なっていく。バージョンアップ対応とは、以前にRHCEを受講した方は、Red Hat Linux 6.2で受講していたが、現在は7.1になっているため、最新の情報を伝えるといったことだ。
Do Linux!卒業生は前述したように80名。この人数であれば、コミュニティとしてはかなり大きな規模になるのではないだろうか。しかもメンバーはそれぞれLinuxという職種のなかで、セキュリティや、クラスタリングをはじめとしたさまざまな業種で活躍している。dolinux.jpの登場によって、RHCE取得者80名による、業界を横断した大コミュニティが出現するのだ。さらにこのコミュニティによって生み出される技術ドキュメントが一般に公開されるとなれば、そのインパクトはかなり強い。現役受講生も、先輩から得られるノウハウをサイト構築に活かすことができ、まさに生きた実践コースを体験することができるだろう。
次回はより具体的な実践コースの内容を、Linux業界の現状を交えてご紹介したい。