このページの本文へ

【Do Linuxに迫る(その13)】コンパックコンピュータ就業編(前編)

2001年07月08日 21時38分更新

文● 編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Linux技術者になるための情報をお届けしている本コーナーだが、今回は大手ベンダー編ということで、コンパック(株)に就業しているDo Linux!卒業生と、雇用側のコンパックのLinux部門の方にお話をおうかがいしたので、2回にわたってお届けする。

Do Linux!ロゴ
ハードウェアの開発まで行なってしまう大手ベンダーの内部で、Linux技術者はどのような仕事をしているのだろうか? 今回登場していただいたDo Linux!卒業生 鈴木周二さんは、多くのDo Linux!参加者と同じく、Do Linux!開始前まではLinuxの仕事をしたことがなかった。職業的なLinuxスキルは、Do Linux!で身につけたもののみである。こうしたスキルが、コンパックの中でどの程度役に立ったのか? といった面を含め、レポートしたい。



お話をおうかがいした方々(右から)

お話をお伺いした方々

コンパックコンピュータ株式会社
ソリューション&テクニカルサポート統轄本部
テクニカルサポート本部
Linuxコンピテンシセンター
部長
松田浩次氏

コンパックコンピュータ株式会社
ソリューション推進本部
Linux推進部
アシスタントマネージャ
古川勝也氏

コンパックコンピュータ株式会社
ソリューション&テクニカルサポート統轄本部
テクニカルサポート本部
Linuxコンピテンシセンター
鈴木周二氏(Do Linux!卒業生)

Linuxコンピテンシセンター

まず、コンパックのLinux事業について簡単にご説明する。同社のLinuxへの取り組み方だが、前提として「気合いを入れてやります」(古川氏)とのことだ。コミュニティとの関係は、DEC(日本ディジタル イクイップメント)時代から続けてきているものだし、Li18nuxに関しても、“Solution providers”として参加している。

さらに、サーバ製品に関しても、Intelベースのシステムから、Alphaシステム(4CPUまで対応)、さらにストレージ製品も開発/対応を行なう。コンパックのLinux対応は、当初Intelのみのものであったが、現在はAlphaまでに広がっている。

同社では主に、Linuxに対して以下の2つのアプローチを行なっている。

  • 製品……Linuxソリューションパッケージシリーズなど、コマンドラインをつかわず、ネットワークの知識さえあればサーバを運用できるアプライアンスを提供。
  • 教育……“ASE”という同社ベンダー資格のLinux版を開始。コンパックのハードウェアに依存したエンジニアの養成を行なう。

コンパックではまた、Linux普及へのとり組みとして、Linuxの情報発信に力を入れているという。「コンパックのLinuxページをご覧いただければと思います。他社と比べて情報量が違います」(古川氏)。ディストリビューションの対応情報や、ハードウェア構成に依ったインストール情報など、Linuxそのものの情報のほかに、ApacheやsendmailといったLinux上で動作するソフトウェアの情報も出していく。また、たとえばカーネル2.4の新しいバージョンが公開されれば、エンジニアが徹夜してでもレポートを提出するなど、タイムリーな情報提供にも力を入れているという。

そして、こうした情報の元となっているのが、同社のLinuxナレッジ(知識)の要「Linuxコンピテンシセンター」である。今回鈴木さんは、このコンピテンシセンターの一員として就業した。現在は、基本的に、Alpha上のLinuxのハードウェア検証を行なっているそうだ。

インタビュー

[日刊アスキー] 本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。これから、“職場”といったキーワードを中心にお話をおうかがいしたいと思うのですが、まず、鈴木さん、大手ベンダーのコンパックでお仕事をされて、いかがですか?
[鈴木氏] “すべてに対して責任感をもって仕事をする”というイメージが強いですね。また、“個人のスキルレベルが高い”と最初に感じました。チームが細分化されていて、技術的に特化したところでレベルが高い ― レベルが高い位置で分割されているというイメージが強い。
[日刊アスキー] 講習や試験はどの程度役に立ちましたか?
[鈴木氏] ハードウェアの検証の際にはカーネルのコンパイルが必要になってきますので、一番役立ちました。また、Linuxの設定ファイルなどについても、すぐにわかりますので、(Do Linux!での勉強は)メリットでした。
[日刊アスキー] では、鈴木さんにはすぐにお仕事をおまかせという形になったのですか?
[松田氏] メーカーとしては、お客様に製品を使っていただくうえで、ディストリビューションをカーネルの再構築をすることなく使っていただくのが前提です。しかし、社内で検証する際はカーネルの再構築は避けて通れない。こうした状況の中で、入ってこられてすぐにカーネルの再構築ができるエンジニアというのは、非常にありがたいのです。Linuxをインストールできる人はたくさんいますけれども、カーネルの再構築ができる人が必須かなと思います。
[日刊アスキー] Do Linux!の良い面というのは、雇用者の側から見るとどのようなところでしょうか?
[松田氏] 即戦力が欲しかったので、採用時はLinuxの即戦力という形で決めさせていただきました。
[日刊アスキー] 逆に、UNIX系のエンジニアということではだめなのでしょうか?
[松田氏] Linuxカーネルの深い部分に関する知識が必要という面もありますし。Linuxクラスタやハイパフォーマンスコンピューティングなどの分野も我々は扱っています。UNIXの場合は、インターネット系の技術者が多いので、我々とクロスしない部分もあります。
[日刊アスキー] RHCEの資格は決め手になりますか?
[松田氏] あまり資格に関して言っても仕方のない面もあるのですが、RHCEの場合は数ある資格の中では難しい部類かなと思います。また、持っている人といない人がいたら、持っている人でしょうね。もちろん人間性も見ますけれども。
[日刊アスキー] 人間性とは?
[松田氏] 乾さん(パソナテック Do Linux担当者)にもお話ししたのですが、私はLinuxのエンジニアは2通りいると思っていまして、ひとつは朝が苦手といいますか、長髪をゆわいていたりとラフな感じで(笑)、しかしアウトプットはスゴイ人。もうひとつは朝会社に来て与えられた仕事をしっかりとやる人。アウトプットのすごい人も、この流れの速い業界では必要かと思いますが。
[鈴木氏] 私は前者後者どちらなんですか?(笑)
[一同] (笑い)
[日刊アスキー] 鈴木さんはどちらでしょう?
[松田氏] やはり後者でしょう。与えられた仕事をキッチリとこなしているという印象です。責任感があるというところですね。
[日刊アスキー] 先ほど鈴木さんのお話でも「責任感」という言葉が出てきましたが、コンピテンシセンターの方では、責任感というものに対してかなり意識されているのでしょうか?
[松田氏] 逆に言うと任せっきりというか(笑)。おまえに任せたから責任を持ってやってくれと(笑)。
[日刊アスキー] 鈴木さんはプレッシャーではないですか?
[鈴木氏] 派遣の人間にも責任を与えていただくというのは嬉しいしやり甲斐があります。
[日刊アスキー] ところで、鈴木さんはなぜLinuxのお仕事を始めたのでしょうか?
[鈴木氏] IT産業に入りたかったということですね。以前勤務していたメーカーはハードウェアのOEM元でしたから、パソコンの前に座っているよりもハンダごてを握っている時間のほうが長かった。しかしその中で社内システムをいじっていて、Linuxに触れ、“ドップリ”と浸かってみようかな、というのが最初でした。選択肢としてWindowsもあったのですが、Windows系のエンジニアも増えていますし、GUIベースで誰でもできてしまうのではないかということを感じてしまったので、Linuxのほうがやっていて面白そうだなと。
[松田氏] Linuxコンピテンシセンターのアウトプットで大きな位置を占めるのが、社外向けのLinuxページです。そこに検証結果をすべて載せていこうとしています。ですからスタッフには、「Alpha上のLinuxにおけるNICの検証を君に任せたから、レポート書いて」といった仕事をしていただいています。Webにて公開するときは、Webのページを作成するスタッフはいますが、作成スタッフに渡した原稿がダイレクトに外に出ると。ですからダイレクトに鈴木さんのスキルが外に出るわけです。
[日刊アスキー] 先ほど鈴木さんも、周りのスキルが高いと仰っていましたが、具体的な例をお教えいただけますか?
[鈴木氏] 検証の際に、社内外のハードウェアの予測に関して、高い知識を持った人が周りにいらっしゃいます。ですから、「いままでこういうことをやったことはありますか?」と聞くとすぐに答えが返ってきますし。PCについてのレベルが高いというのは、入ってすぐに感じましたね。Linuxの技術者として、カーネルの再構築は当たり前ですし、ほかのストレージ系のデバイスについても、調べることもなく完全にできてしまうというレベルですね。私はまだ資料を広げてから……となりますが。
[日刊アスキー] 松田さんはどのように感じられていらっしゃいますか?
[松田氏] 鈴木さんに関しては、もうあるレベルには達していると思っています。逆に言うと、どこに行ってもLinuxのエンジニアとしてやっていけるなあと感じています。
[日刊アスキー] ではもうチームの一員として大丈夫だと?
[松田氏] そうですね。あとはやっぱり鈴木さんも言っていましたが、他社でもそうだと思うのですが、何万人も社員がいますので、どこかに質問すれば、何らかの回答が帰ってくるというのが我々の強みではないかと思っています。彼も仕事してわからないことがあれば、メールでどこかに質問を投げれば返ってくるわけです。

第14回では、引き続きインタビューの模様をお届けする。外資系と聞くとすぐに連想する“英語”についての話題や、同社が考えるLinux業界の展望、そして転職したあとのメリットなど、Do Linux!から就業という流れの中で気になる点を中心にお伝えしよう。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード