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売れないゲーム

2001年10月21日 22時52分更新

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売れるゲームと売れないゲーム

店頭
※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 通常、5800円のゲームソフトを自社で販売した場合――ソフトメーカーの“権力”やプラットフォームによっても結構違うので参考までにしてほしいけれども――メーカーの取分はCDのプレス代を除くとだいたい2500円/1本前後。最初に書いたような実売数400本以下のタイトルであれば、出荷数はどんなに多くてもせいぜい1000本くらいだろう。ゲームソフトには返品制度がないので出荷した分はすべて売上げになるものの、それでも1000本では、どんなに多めに見積もっても250万円程度の売上げにしかならない。この金額は、某大手ゲーム誌に2回広告を打てばなくなってしまう金額。これでは間違っても開発費用の回収は不可能である。

 一体誰のせいで、こんな赤字100%確定、出血大サービスなソフトが発売されるのか? その原因のひとつは、社内における営業マンの発言力がほとんどなきに等しいことにある……ような気がする。というのも、ゲーム会社の中でゲームを客観的に判断できるのは、広報・宣伝部門や営業の人間と、あとはごくわずかな開発者だけであろうと僕は思っているから。おお、今回は強気だ!



人だかり
“一般社会”がおもしろい/おもしろそうと判断するゲームを、適切な宣伝・広報活動で展開していくと、このようにデモムービーひとつで人だかりを作ることができる。逆もまた然り。※写真はイメージです。実在するショップやメーカーとは関係ありません

 強気ついでに今までの経験から語らせてもらうと、当然ながら開発者は自分の「好きな」、「おもしろい」ゲームを作りたいようだ。まぁ、クリエイターとしてはそりゃそうだろう。しかし、彼らは外部の“一般社会”とは隔絶された特別な空間に生息していることが多いため、彼らの考える「おもしろいゲーム」が、一般社会の「おもしろいゲーム」とは決定的に違う場合が往々としてある……。しかも、何が「売れる」ゲームなのかを考えている人となると、営業の立場から言わせてもらえば、ほとんどいない。

 そんな開発者たちの「好きな」「おもしろい」ゲームを持って宣伝マンや営業マンは毎日のように出版社やショップの仕入担当者のところに出向いていって、コテンパンにやっつけられているのだ。決して開発者をバカにするわけではないけど、営業先で第三者の厳しい意見を拝聴することがある分だけ、その“商品”が売れるのか売れないのかは、作ってる本人たちよりも外回りの部門の人間のほうがよくわかっていて当たり前なのだ。

 しかも、ある程度ちゃんとした営業マンなら、キワモノ狙いの特殊なタイトルを除くと、企画が上がった段階で売れないものははっきりとわかっている場合が多い。しかし、その時点で開発部門に対して意見を言えるゲーム会社の営業マンが、この業界にどれだけいるだろう? このような開発者重視の誤った経営方針により、売れないソフトは次々と開発されていく、というわけだ。

 以前、僕は上司からこんなことを言われたことがある。

上司「今回完成したこのソフトの目標売上本数は10万本だ」
僕「企画があがった時から言ってましたけど、この内容では1万本も売れないと思いますが……」
上司「そんなことは知っている。しかし経費から逆算すると10万本売れないと経営がヤバイので、四の五の言わずに売ってこい」
僕「は、はい……」

 今になって振り返ると、どうやらこの会社は“マーケティング”という言葉の意味を知らなかったようだ。なお、この指示があってから約1年後、本当にこの会社は潰れた。上司は、間違ったことは言ってなかったわけである……。



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