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IEEE802.11e

規格の玉手箱

2001年02月17日 07時34分更新

文● NETWORK MAGAZINE 編集部

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NETWORK MAGAZINE



bの次はe?

 IEEE802.11は無線LAN関連の規格であることはもはやご存じだろう。そのなかでも11Mbps対応のIEEE802.11bに関しては、本誌読者であれば毎月のように目にしている単語の1つであるはずだ。

 そして今回取り上げる「IEEE802.11e」は、現在IEEE(Institute of Electrical Electronics Engineers:米国電気電子技術者協会)で策定中の規格だ。IEEE802.11b(およびIEEE802.11a)をもとに、QoSとセキュリティに関する拡張を行なう規格として位置付けられている。ビデオや音声などといったストリーミングデータを効率よく伝送するためものとして今年の5月にタスクグループとして発足したばかりだ。9月には、QoSとセキュリティに関するサブグループに分かれて協議を続け、2001年1月に開かれる会合以降に、両者をあわせた規格の決定をする予定になっている。

 このようにIEEE802.11eの規格自体は未決定だが、すでにこれをもとにしたプロトコルが米シェアウェイブ(ShareWave)で開発されている。「Whitecap」と呼ばれるこのプロトコルは、媒体アクセス制御(MAC)にDynamic TDMA(Time Division Multiple Access)方式を採用している。IEEE802.11bにおけるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス/衝突回避)方式とは違い、TDMAは時間ごとに分割して帯域を共有する方式で、音声や映像などのリアルタイム性が重視される通信でよく用いられる方式だ。そしてDynamic TDMAは、TDMAをさらに進化させて、ノード同士が互いの制御情報を交換し、どの時間に帯域を割り当てるかを「動的に」更新し、データの種類ごとに優先度を設けて、その時間は確実にデータが流せることで効率的な通信帯域を確保できるというものだ。

スループットは約7Mbps

 実は、このWhitecapに対応したハードウェアが、すでに日本国内で発表されている。九州松下電器が10月末に発表した「ゲートウェイステーション」がそれだ。ゲートウェイステーションは、Ethernetだけでなく、HomePNA2.0と無線LANに対応した家庭用ルータである。この無線LANに、Whitecapが採用されている。

 実際のスループットについて開発元の九州松下電器に聞いたところ「使用環境にもよるが、約7Mbpsのスループットがでます」という。既存のIEEE802.11b対応の無線LANシステムが4Mbps程度のスループットだということを考えると、理論値の半分以上はでていることになる。実際にデモンストレーションを見ても、動画のストリーミングなどではその違いがはっきりと分かるほどで、規格策定も含めて今後も注目すべき規格である。

写真 ゲートウェイステーション
写真 ゲートウェイステーションは、Whitecapを採用した家庭向けルータで、価格は4万4800円。オプションの無線LANカードは2万7800円で、2001年1月発売予定
図 Dynamic TDMAの仕組み
図 Dynamic TDMAの仕組み  決められたデータ(動画や音声など)に対して優先的に帯域を確保してスループット効率をあげる。

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