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カルチャーバリューとしてインターネットアートを成立させる――イートーイCEO、etoy.ZAI氏にきく

2000年10月10日 18時11分更新

文● 岡田智博 coolstates.com

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作品を売り続けることによってなんとか生計をたてられたアートでも、活動の舞台をデジタルメディアに移すとなると、なかなか容易なことではない。そこで、自分たちの活動そのものを“カルチャーバリュー”として売り出そうと考えたのが、今回紹介するアーティスト集団“etoy”だ。自分たちの構想を事業化すべく、パフォーマンスをアートフォームとする彼らの“企業活動”。それはまさに、インターネット上での“グローバルビジネスとカルチャーの共存”を先取りしたものと言えよう。

今回、ケイマンアイランドに持ち株会社を設立して新しい局面を迎えた、etoy創設者のひとりetoy.ZAI氏に、同社の“カルチャーバリュー”とビジネスプランについて語ってもらった。

etoy社CEOのetoy.ZAI氏

――なぜあなたはetoy.ZAIなんて名乗っているのですか?

「我々etoyのメンバーは、全てエージェントネームを持って活動しているんだ。シークレットな任務を常におびているため、プライベートな正式名は公表していない。国際文化ロジスティックサービス(彼らがパフォーマンスをするために神出鬼没に世界中に行くことだが)もしているが、最初はスキンヘッドにサングラス、揃いの作業着に身をまとい、パスポートをシャッフルして持っていた。そのため誰が誰だか区別がつかないくらいだったよ。有象無象のインターネット人間版といってもいいのかな。今は社会的なステータスもあるようなので、もうそんなことはしていないよ。今の揃いのスーツも、ユニフォームとして決まっているだろ?」

――etoyの設立はいつ、どこで?

「'94年、スイスのチューリヒで。最初から株式会社の形態を取っていたけど、株式公開をしたのは'98年1月(オーストリア・ウィーンにて)のこと。株式会社にしたのは、インターネット上で展開する芸術活動では潤沢な活動資金が得られないという理由から。われわれの活動そのものに対する期待を証券化して、その“カルチャーバリュー”に投資してもらうかたちを編み出したんだよ」

――新興企業で類似した名前の企業“eToys”にドメインを奪われそうになりましたよね

「そうなんだよ。われわれのサイト('95年よりオープン)が、アメリカの巨大インターネット玩具コマース“eToys”('96年設立)のビジネスにそぐわず、名前が類似していることもあって悪い混乱を招くと告発された。去年のクリスマス商戦の時期にドメインの使用を停止させられてしまったんだ。ネット上でお騒がせの“怪しいやつら”ということでね。我々のメンバーには法学生もいるので対応策を考えたが埒(らち)があかなくて、結局、腕利きの弁護士を雇うことになった。正式な裁判となると何千何万ドルもの金が次から次へと飛んでいくので、とても困難な局面だったよ」

――彼らはあなた方のことを国際的なメディアアーティスト集団だと認知していなかった?

「そういうことだね。こちらもつらかったけど、インターネットを通じて世界中のアーティストやアクティビスト、それにネット社会のキーマンたちが協力してくれた。カリフォルニア州の裁定によって売れなくなったわれわれの株に追加投資してくれたり、抗戦サイト“TOYWAR.COM”へのコンテンツも提供してくれた。それにNASDAQに上場されているeToysの株価引き下げキャンペーンなど、いろいろなかたちで支援してくれたんだ。お陰で最後にはドメインを再び使用できるようになり、われわれの株を売買してもいいということになった。この時は日本からも伊藤穣一さん(ネオテニーCEO)にいろいろな意味でお世話になって、とても感謝しているよ」

アルス・エレクトロニカ・フェスティバルで開かれた etoy 社の新戦略に関する記者会見には欧米から何十ものプレスが詰め掛け混乱した

――誰が株主になっているのですか?

「いろいろな立場の人になってもらっているよ。オーストリア連邦の極右政権が誕生する以前の首相もそうだし、ニューヨークを中心にしてベンチャーキャピタルからも投資してもらっている。伊藤さんも大株主のひとりだね。現在発行済み株式は64万株、時価総額は約200万ドル程度だ(現在1株3米ドル程度で推移している)」

「われわれに直接問い合わせれば株を取得できるが、正式には厳しいセキュリティーに守られたサイトから購入できるようになっている。取得株数によっては株主特典もある。たとえばCDやTシャツなどのグッズを提供している。しかし、ネットビジネスやニューエコノミクスで活躍している人ほど、1600株以上なければ発行できない株券を欲しがる傾向にある。ヨーロッパでは証券市場が電子化されているから、よほどのことがない限り株券を手にすることはない。株式市場に公開されていない我々に関しては、確かに株を持っているという実感がアートフォームの証明となるため、株券を欲しがっているようだ」

――これからのビジネスプランは?

「今回の一件で、ちゃんとした会社にするために陣営を整えなければ、われわれ自身の存在を守れないことに気付いた。そこで、“TOYWAR”にも勝って、余裕のある年内に正式な持ち株会社“etoy.HOLDING”を設立したというわけだ。カリブ海のケイマン諸島には世界中の銀行や投資会社が会社を置いているため、ここに設立することに決めたんだ」

「更にetoyの本社とデータセンターをシーランドに置くことにしたよ。シーランドというのはイギリス沖の北海に浮かぶ第2次世界大戦時代の砲台跡地で、'68年以来、独立した君主国として認められている。そこに強固なセキュリティーで守られたデータセンターを作ろうとしている。世界で最もセキュリティーが厳しいデータセンターを作り、株主のデータをしまい込めるように計画している。この件については、サーバーを提供しているヘイブンコー社との提携関係を一層強化しようと考えている」

「あとはネットワークアートに関する解決策として、我々が受けている出資金を自分たちの活動のみならず、他のネットワークアーティストに“カルチャーバリュー”として再投資することも計画している。ベンチャーキャピタリストとしての業務を開始することにしたんだ」

筆者の手によるヨーロッパのパブリックなサイバースペースとメディア・アートに関するレポートが右記のここでも読めます

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