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圧巻だったSCEのプロトタイプマシン!! 『Final Fantasy』のリアルタイムレンダリングを見せた『GSCube』――SIGGRAPH2000より

2000年07月31日 00時00分更新

文● 七丈直弘

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7月23日より7月28日まで米国ルイジアナ州ニューオーリンズでACM主催の“SIGGRAPH2000”が開催された。このイベントは本来、学会が主催する会議であるため、CGアートやVRを用いたデザイン系の展示と、最新のCG技術に関する研究発表も含まれる。しかし、本稿では機器展示を中心にレポートしたい。

会場となったErnest N. Morialコンベンションセンター

SIGGRAPHの機器展示の特徴としては、CGに関するすべての技術が一堂に会するという点にある。すなわち、それは、現在の多岐にわたったCGの要素技術の広がりをそのまま表現したものとなっている。今回特に目立っていた分野としては、

・3Dモデルやキャラクターアニメーションのストリーミング(Web3D) ・Webでの3Dモデルマーケットプレイス ・レンダリングハードウェア(グラフィックカードおよびゲーム機) などがある。

キャラクターアニメを強化をするWeb3D関連企業。標準化団体“Khronos Group”はOpenMLの提案も

昨年のSIGGRAPHではBOF(自由討論会)として開催された"Web3D"であるが、本年は7月26日に"Web3D Round-up"というSIGGRAPH主催のイベントとして開催され、注目の度合いを示しているといえよう。依然として明確な姿が見えにくかったWeb3Dも各社が製品を出しつつあり、その方向性があきらかになってきた。

Pulse Entertainment(http://www.pulse3d.com/)は、Webを利用した3Dモデルストリーミングシステムである『Pulse Creator』を発表。これはDXF、VRML、3D Studio MAXなどのファイルから専用フォーマットに変換する。クライアントは専用プラグイン(Pulse Player)を用い、再生およびインタラクションが行える。低ビットレートでもストリーミングが可能であることと、リップシンク、GSMあるいはMP3による音声の送信に対応しているところが特徴である。会場では、セサミストリートの人気キャラクター Kermitのデータを用いてデモが行なわれ、そのスムーズな動きと完全なリップシンクに驚かされた。

このほか、代表的Web3DプロダクトCult3Dで知られるCycore (http://www.cycore.com/)がPuppetTimeを買収し、キャラクタアニメーションのストリーミング環境を提供していくとの発表があった。b3d(http://www.b3d.com/) も3D Studio MAXからファイルを変換することでWebストリーミングが可能なシステムを展示。Web3Dプロダクト MTS3 を開発するmetastream( http://www.metastream.com/)は、Poserを開発するCurrious Labsと提携し、今秋に発売される『Poser ProPack』でmetastream形式への変換を可能とすることを発表。Famous Technologies(http://www.famoustech.com/)も3Dキャラクタアニメーションのストリーミングシステムを展示。Web3D関連の企業は急速にキャラクタアニメーションを強化しつつあり、その競争は熾烈である。

また、関連した動きとしては“Khronos Group”と呼ばれる標準化団体が“OpenML”という2D、3Dモデルおよび音声・映像通信までを含んだ標準APIを2000年中に提案するという発表があった。これは2Dおよび3Dの表示に関してはOpenGLをベースとし、音声・映像等の連続メディアの扱いに関してはSGIのdmSDKをベースにするとしている。クロスプラットホームなAPIが提供されることで、同一コンテンツ中のメディア間の同期、バッファリング等の記述が容易になると考えられる。

モーションキャプチャーデータのインターネット販売や、レンダリングオンデマンド(ROD)サービスも登場

次のトピックとしては、ネットを介した各種サービス提供(ASP)がある。

モーションキャプチャーソフトウェアの開発で知られるMotek(http://www.e-motek.com/) はUNICAというモーションキャプチャーデータのインターネット販売を開始した。ユーザーは独自のブラウザー(UNICA Browser)を用いて欲しいデータを選択し、それを自由に加工することが可能。ファイル変換を行ない、ダウンロードした時点で課金される仕組みとなっている。WAM!NET(http://www.wamnet.com/)はネットを介したレンダリングオンデマンド(ROD)サービスを提供。350台以上のレンダリングマシンを用意し、ユーザに対しては使用したCPUタイムに応じて課金される仕組みである。納期が厳しいCM製作などには特にコスト削減に寄与しそうだ。

レンダリングASPを提供するWAM!NET 

Gettyone.com(http://www.gettyimages.com/)はプロフェッショナル向けの画像マーケットプレースサイト“Imagebank”(http://www.imagebank.com)を運営しており、ナショナルジオグラフィックの画像データを獲得したと発表。現在2000万の写真、1万時間の動画、10万のイラストレーションを収蔵しているとのこと。これに対して、TurboSquid(http://www.turbosquid.com/)は3Dデータを中心としたデジタルコンテンツのマーケットプレースサイトを運営すると発表。これらASPサイトがどこまで成功するかが気になるところ。

圧巻だったSCEのプロトタイプマシン『GSCube』

レンダリングハードウェア関連としては、主要なグラフィックチップメーカーは軒並みブースを出していた。特に目立ったのはIntense3D(http://www.intense3d.com)を買収した3Dlabs.。『WildcatII』のプレビューを行なっていた。これはボリュームテクスチャーマッピング機能を搭載している点が特徴である。nVidiaのブースでは、新チップセットである『Quadro2 Pro』を展示。同時にX-Boxのデモを行なっていたが、こちらはSIGGRAPHで見てしまうと他社のデモに比べて精彩を欠いてしまう。

特にSony Computer Entertainmentのブースで行なわれていた2001年発売予定の『Final Fantasy』のデモは圧巻であり、『GSCube』というプロトタイプマシンにホストコンピューターとしてSGIのOrigin3000が接続され、1920x1080ドットの画像が60fpsでリアルタイムに描画されるのは驚異的であった。GSCube本体にはEmotion EngineやGraphics Synthesizerなどのレンダリングハードウェアが16機並列で搭載されている。

Final Fantasyのリアルタイムレンダリングを見せたGSCube

そのほかLinux関連としては、HPがVisualizeワークステーションのLinux版を発表。OpenGLは独自に実装している。Alias|WavefrontはRedHat Linux版の『Maya』を2001年の初頭に発売すると発表。Reyes Infografica社(http://www.reyes-infografica.com/)はLinuxおよびNTに対応したオープンソースの3Dツールキットを発表していた。

全体を通じて感じられたことは、3Dキャラクターアニメーション、特に顔のシミュレーションに注目があつまっていることである。データ獲得手段、動きの記述、シェーディング、リップシンクなど、従来手間のかかっていた作業がかなりの部分自動化されるようになってきた。また、それをストリーミングすることで、そこからビジネスに結びつけるモデルがみえてきたといえよう。

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