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食品業界のITビジネス総合展“e-フード2000”が開催――大手メーカーや卸業者はITにそっぽ?

2000年06月30日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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食品業界におけるITビジネスの総合展示会“e-フード2000~INTERNET FOOD EXPO~”が、6月28日に開幕した。主催は(株)日本食糧新聞社。食品業界のネットビジネスに焦点を当てた総合企画展は国内初という。“食品界とITが融合して実現するグローバル・フード・マーケット”をテーマに、地方物産や情報システム会社など約120を超える内外の企業と団体が出展した。会期は6月30日まで。ここでは、デビットカードシステムによる地方物産の販売ゾーンと、情報システムの展示ゾーンを紹介する。

ワイヤレス端末でデビットカード決済

(有)福浦食品のブースで、サバのみりん漬け(400円)をデビッドカード決済で購入
(有)福浦食品のブースで、サバのみりん漬け(400円)をデビッドカード決済で購入



地方物産の販売ゾーンには約50の企業(団体)が出展し、デビットカードシステムを使った実演販売の企画“モールdeカード”を行なっていた。ここで利用されている決済処理用端末は、(株)アケセスが開発した『miracs(ミラクス)』。(株)NTTドコモのパケット通信網“DoPa(ドゥーパ)”を利用し、ドコモのサービスエリア内であればワイヤレスでデビットカード決済(クレジットカードも可)ができるというものだ。

miracsはワイヤレスという利点を生かし、タクシーや訪問販売、そして今回のような展示即売会といった利用シーンを想定している。決済に掛かる時間は、店員の入力作業も含めて20秒程度だが、展示会場など人目の多いころで暗証番号を入力するのはやはり少々気が引ける。

厚木ビール(株)や熊澤酒造(株)など8社は、イベント期間中のみの限定通販サイトを開催する
厚木ビール(株)や熊澤酒造(株)など8社は、イベント期間中のみの限定通販サイトを開催する



厚木ビール(株)や 熊澤酒造(株)をはじめとする展示企業8社は、CSKネットワークシステムズ(株)のASP版ECウェブサイト構築システム“One Week Commerce”を利用し、イベント会期中限定の通販サイトをオープンする。同システムは、ウェブで提供されるEC構築ツール/決済ツール/ログ分析ツールなどを用い、ウィザード画面の指示に従って短期間で通販サイトを構築できるというもの。今回は、ショップのオーナーから画像データやテキストデータを集め、CSKネットワークシステムズの担当者が8社分のサイトを計10時間で作り上げたという。

インターネット上に形成された電子商取引市場

食材の流通においては、メーカーから小売店に商品が渡るまで2~3社の中間業者を経由していることが多い。情報システムの展示ゾーンで最も目をひいたのが、インターネット上に形成された電子商取引市場や、その電子取引市場を構築するシステムの展示だ。電子商取引市場の出現は、企業がワールドワイドで取引先を見直す契機となるだけでなく、中間業者を介さずに“中抜き”の形で小売業者とメーカーによる直接取引きを助長し、産業構造を大きく変えるインパクトを持つと注目されている。

(株)インフォマートは、食品・食材関連にターゲットを絞った会員制のビジネスマッチングウェブサイト“フーズ インフォマート”を紹介した。これは、生産者から寄せられた売りたい商品の情報と、小売店から寄せられた買いたい商品の情報を各々データベース化して公開するもの。すでに2年前からサービスを開始しており、現在は約500社の売り手会員と、約1000社の買い手会員を抱えているという。「既存の流通経路では出会えなかった、新しい取引相手を見つけてもらえれば」と出展者は狙いを語った。

インフォマートは、食品業界向けマッチングサイト。説明を聞きに来る来場者の姿も多く見られた。会員企業から会員費を徴収することで運営を行なっている
インフォマートは、食品業界向けマッチングサイト。説明を聞きに来る来場者の姿も多く見られた。会員企業から会員費を徴収することで運営を行なっている



展示会には外国勢も参加していた。米Foodtrader.com社のブースでは、同じく会員制のビジネスマッチングウェブサイト“Foodtrader.com”を紹介。170ヵ国に8000社の会員を持つという国際的なデジタル取引市場だ。現在、英語/フランス語/スペイン語の3ヵ国語でウェブサイトを展開しているが、今年9月には日本語のサイトも開設する予定という。

米Foodtreader.com社のブース。米国内で食品・食材関連のビジネスマッチングウェブサイトを運営する老舗業者の一つだ
米Foodtreader.com社のブース。米国内で食品・食材関連のビジネスマッチングウェブサイトを運営する老舗業者の一つだ



農作物の場合、生産者から小売店に届くまで、農協を含む中間業者が最大で4つも介在するという。e-アグリ(株)のブースでは、農作物に焦点をしぼった会員制ビジネスマッチングウェブサイト“農村ファン倶楽部”を紹介していた。東北地方を中心に約50の生産者団体、5つの小売企業が会員として参加しており、現在はインターネットとFAXを使った電子商取引サービスを提供している。今年10月には、全面的にウェブへと移行する予定だ。

生産者団体は同ウェブサイトに出荷目録を掲載し、農作物が育った時点で“週次出荷計画”を掲載する。小売店とは、この週次出荷計画をもとに交渉を進める。会員企業・団体は、取引高から一定の割合で利用料金を支払う
生産者団体は同ウェブサイトに出荷目録を掲載し、農作物が育った時点で“週次出荷計画”を掲載する。小売店とは、この週次出荷計画をもとに交渉を進める。会員企業・団体は、取引高から一定の割合で利用料金を支払う



(株)菱化システムは、米TREDEX Technologies社が開発し(株)コマースセンターがローカライズを加えた電子商取引システム構築ソフト、『Commerce Center 日本語版』を展示した。これは、複数の生産者と購買者の間でアライアンスを組み、ビジネスマッチングだけでなく、企業間取引そのものを電子化しようというシステム。総合商社を中心に商社自らが電子取引市場を開設するプロジェクトも立ちあがっているが、Commerce Centerのようなシステムを使うことで、メーカーや小売業者主導により電子取引市場を構築することも可能だ。

Commerce Centerでは、引合い/見積もり/受発注をはじめ、配送情報や受注情報の管理、請求書の発行といったプロセスが全てウェブブラウザー上で行なえる。価格や納期に関して相手先の企業とネゴシエーションもできるのが特徴だ。他業界への導入実績はあるが、食品分野はこれからという。

『Commerce Center 日本語版』。開発元の米TREDEX Technologies社は、コンピューターの卸売り業からスタートした会社
『Commerce Center 日本語版』。開発元の米TREDEX Technologies社は、コンピューターの卸売り業からスタートした会社



大手メーカーや卸業者は不在

イベント会場では、地方物産の展示が目立つ一方で、大手食品メーカーや大手総合商社、卸業者の出展者を見ることはできなかった。ある主催者は、「地方物産業者は、“電子商取引市場は新規の取引先獲得のチャンス”と、積極的に応じてくれた」と語る一方、大手メーカーや卸業者にも参加を呼びかけたと明かしてくれた。しかし、「卸業者からは“インターネットによる商流の電子化は既存の流通ルートを壊す”と敬遠された」という。また、「メーカーは古くから付き合いのある卸業者に対する気がねからか良い返事を得られなかった」とも語っていた。来年には“メーカーや卸業者が参加しやすい形態”で同様のイベントを開催する予定という。

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