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インターネットのバーチャル財団“eGrants.org”。オンライン寄付額は米国で2番目の規模に――タイズ財団会長・パイク氏来日講演より

2000年06月20日 00時00分更新

文● 若菜麻里

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米国サンフランシスコでNPO育成活動を行なっている、NPOのタイズ財団設立者で、現会長のドラモント・パイク(Drummond Pike)氏が6月8日から20日まで来日、兵庫県の市民団体、神戸復興塾などの働きかけにより、日本各地の市民団体/NPOの主催で講演を行なった。米国側のコーディネーター兼通訳として、在サンフランシスコのジャーナリスト、岡部一明氏も同行した。

本稿では、6月18日に神戸市の神戸クリスタルホールで開催されたパイク氏の最終講演“‘NPO支援三種の新器’とは?――タイズ財団パイク会長から学ぶ”(主催:特定非営利活動法人しみん基金・こうべ、神戸復興塾、後援:神戸市)の様子をレポートする。

クレジットカードによるオンライン寄付は、税制控除対象

パイク氏は、「阪神・淡路大震災の後に、NPO活動を立ち上げるきっかけを作った神戸の人々を尊敬している」と挨拶した後に、自分の生い立ちやタイズ財団の活動について、スライドを交えて説明した。

パイク氏は、'48年カリフォルニア生まれ。'70年にカリフォルニア大学サンタクルーズ校を卒業し、ラトガース大学修士課程(政治学)を修了。学生時代は、黒人の公民権運動やベトナム反戦デモなどに参加し、'76年にタイズ財団を設立した。

タイズ財団を設立し、現在会長のドラモント・パイク氏
タイズ財団を設立し、現在会長のドラモント・パイク氏



タイズ財団は、エンパワメント、活動のインフラ作り、パートナーシップの3つの面で、NPOへの支援活動を行なっている。「設立後、5年かけてやっと自分の給料が払えるようになり、25年かけてスタッフは30人、去年1年間のNPOへの助成額は2700万ドルになった」。
この助成額は、日本のトヨタ財団の5~6倍にあたるという。「昨年は、個人や家族など、約300のドナーがあった。タイズ財団では、これらのドナーの意志を尊重して、NPOへの助成支援を行なっている」。

またタイズの2番目の団体であるタイズセンターは、NPOの“インキュベーター”(孵化器)として20年前に設立、'96年に団体として独立した。立ち上がったばかりの小さなNPOに対して、タイズ財団のNPO法人格のひさしを貸して、税制控除が受けられるようにしたり、事務所スペースを貸したり、実際のプロジェクトとは関係ない財務や人事など総務系の業務をアウトソーシングで請け負うといったことを進めている。

「タイズセンター自体には、約60人の有給スタッフが所属し、約300のプロジェクトを30以上の州にまたがって支援している。これまでに106のNPOが独立した。中には、団体の規模が大きくなってもタイズセンターから独立せずに、センター内にとどまっている団体もある」。タイズセンター内のNPOには、エイズ患者の支援をする有給スタッフ1名の団体や、多国籍企業の第三世界における活動(現地の労働条件など)を監視する団体、貧しい地域の児童にスポーツを指導する団体などが在籍しているという。

タイズの3番目の団体、eGrants.org(イーグランツ・オーグ)は、'99年10月にできたばかりのインターネット上のバーチャル財団だ。NPOとしては初めてオンライン寄付のサイト“eGrants.org”をオープンした。サイトでは、クレジットカードで、10ドル、20ドルといった小額の寄付が可能だ。eGrants.orgを窓口に、これまでに約50万ドルを集め、助成を希望する各NPOに分配した。ビジネス系ポータルなどから、リンクを張って、eGrants.orgのページに誘導しているという。「このプロジェクトの収支はまだ、トントンではないが、うまくいくと楽観視している」。

岡部氏の補足によると、「米国では、オンラインショッピングなど、Web上のクレジット決済が盛んに行なわれているという背景があり、オンライン寄付も去年頃から出てきた。日本では、オンライン寄付は時期尚早かもしれない」という。「米国では、約350のオンライン寄付サイトがあり、米AOL財団が運営する“helping.org”が最大手。2番目がeGrants.orgだ。これらのインターネット財団では、寄付者は寄付金に対して税制控除が受けられる」としている。

在サンフランシスコのジャーナリスト、岡部一明氏
在サンフランシスコのジャーナリスト、岡部一明氏



「NPOセクターの一番大きな役割は、“リスクを負って”プロジェクトをやること

パイク氏は滞在地のひとつ、札幌で6月上旬に開催された“第9回YOSAKOIソーラン祭り”*が学生の発案で'92年に始まり、今では市の経済効果に寄与するイベントとして成長したことを例にとり、「非営利活動は社会全体に大きな役割を果たし、それはイノベーションへと発展する可能性がある」と、NPOの社会的意義を語った。

*YOSAKOIソーラン祭り:公式Webサイトの情報によると観客数約193万5000人。“さっぽろ雪まつり”と並ぶ一大イベントとして注目されつつあるという

「米国経済の中でNPOセクターは、約3%を占める。NPOは新しいアイデアを試すことができ、それがうまくいけば社会全体に大きな役割を果たすことができる。例えば、少年を集めて、真夜中にバスケットボールの試合をやるというプログラムを行なっているNPOがある。真夜中に子供が集まるのは危ないとして、警察は最初反対だったが、結果的には真夜中の犯罪が減ったため、警察でも支援するようになった」。

「NPOは行政に対してアドボカシー(提言)活動なども行なうため、政府や企業セクターにとって気に入らない存在である場合もあるが、NPO活動を保証することにより社会全体のイノベーションが進む」。

また、タイズセンターで支援するNPOの中には、活動が行き詰まって失敗する団体があるが、「行政はリスクを負うことができないぶん、NPOセクターの1番大きな役割はリスクを負ってプロジェクトをやることだ。リスクを伴わないものには、あまり実がない。タイズセンターはある意味ではベンチャーキャピタルに似ているが、多くの事業に投資して、そのうち1つだけでも成功すればいいと考えている」と話した。

サンフランシスコのエイズウォークをヒントに日本で資金集め

今回のパイク氏の来日は、2年前に神戸復興塾のメンバーがタイズ財団やサンフランシスコのNPOを視察したのがきっかけ。神戸復興塾のメンバーは、そのときに行なわれていたエイズ患者支援のための“エイズウォーク”の資金集め方法にヒントを得て、阪神・淡路大震災の被災跡を有志で歩く“こうべiウォーク”を、過去2回に渡り開催した。iウォークの各ポイントでは、市民団体の協力のもと甘酒をふるまうなどのイベントも開かれた。iウォークの参加者は、1口1000円で友人などからカンパを受けるのが条件で、31口=3万1000円のカンパを手に参加したという人もいるという。

神戸復興塾は、パイク氏の来日にちなみ、講演会の場でiウォークで得られたカンパ200万円を“しみん基金・こうべ”に寄付した。しみん基金・こうべでは、これらの基金を地震被災者などを支援する市民団体への助成金に充てる。

会場には市民団体関係者らが集まった
会場には市民団体関係者らが集まった



同団体顧問の今田忠氏は、「日本では市民団体への寄付が少ない。その理由は、寄付したい団体が少ないこと、団体自体が知られていないこと、団体に寄付する仕組みがないことが挙げられる。しかし、震災では全国から時間の寄付(ボランティア)をいただき、日本には,お金の寄付をしたい人も多いと思う。しみん基金が、市民団体を支援することで、今後の日本社会の発展に寄与すると信じている」として講演会を締めくくった。

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