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生徒、教師、運用管理の3側面から情報教育をパックアップする製品群――“Education Tomorrow'2000 情報教育セミナー”(前編)より

2000年03月06日 00時00分更新

文● 服部貴美子 hattori@ixicorp.com

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1日に、(株)ディアイエスの主催により、“Education Tomorrow'2000 情報教育セミナー”が開催された。会場は、大阪市西区の厚生年金会館7階、富士の間。
 
このセミナーは、2005年度を目標に、すべての小中高等学校等からインターネットにアクセスでき、すべての学級のあらゆる授業において教職員、および児童、生徒がコンピューターを活用できる環境を整備する“ミレニアムプロジェクト”の動きを受けて開催されたもの。パソコンをどのように授業の中で活用し、児童、生徒が自主的に道具として使いこなせるようになるかをテーマに、製品と活用事例の紹介、プロジェクトそのものに関する解説をしたものである。

本稿は、そのセミナーの前半にあたる、ソフト、ハードに関する製品紹介についての報告する。

開会の挨拶をするディアイエスの取締役本部長、梶原定氏。会場には、遠く青森からの教育関係者も開会の挨拶をするディアイエスの取締役本部長、梶原定氏。会場には、遠く青森からの教育関係者も



児童生徒がパソコンを自在に使いこなせるように。機能を単純化するアドインソフト

まず前半は、授業の中でパソコンを使う際に必要となるさまざまな活用ツールを紹介した。

(株)ディアイエスの開発部部長、山田邦裕氏は、各学校へのパソコン普及率が順調に進んでいる半面、現場ではネットワークに詳しい教職員が足らず、授業へと活用しきれていない、費用面でハードウェアのバージョンアップが難しいといった問題点を指摘。それらを解決するためには、子供たちのパソコン操作を支援すること、授業を行なう先生を支援すること、学校内のパソコンの運用管理を支援することという、3つの側面からのバックアップが必要であるとした。

そこで、同社が発売しているソフト『Dr.シンプラー』を使った授業プランを解説した。

ディアイエスの開発部部長、山田邦裕氏ディアイエスの開発部部長、山田邦裕氏



ビジネスソフトとして定番化しつつあるマイクロソフトのWordやPowerPointは、大人にとっても機能が多く、使いこなすのは難しい。ましてや、漢字やカタカナ表記の英語に慣れていない小中学生にとっては、メニューに表示される機能リストすら、理解しがたいものである。

『Dr.シンプラー』は、Wordの機能を単純化するアドインソフトである。たとえば、メニューやダイアログをひらがなで表記したり、使用頻度の低い機能を削るなど、対象とする生徒のレベルに応じて、キッズ、ジュニア、ユースの3段階を調整できる。教師が使うときには、すぐに標準モードへと切り替えられる。

表彰状や原稿用紙など、学校用のテンプレートが豊富。フォントや文字の大きさなどの選択肢は少なくしており、生徒たちにも選びやすい。蛍光ペンでチェックする、ソフトキーボードによる入力など、子供向けの機能を追加表彰状や原稿用紙など、学校用のテンプレートが豊富。フォントや文字の大きさなどの選択肢は少なくしており、生徒たちにも選びやすい。蛍光ペンでチェックする、ソフトキーボードによる入力など、子供向けの機能を追加



単語を入力すると、対応する絵文字が出てくるなど、通常のWordにはない楽しい機能も単語を入力すると、対応する絵文字が出てくるなど、通常のWordにはない楽しい機能も



また、HTML形式への変換機能はそのまま残っているため、生徒たちの研究成果を校内イントラネットで発表するなど、調べ学習への活用ができる。

さらに、山田氏からは「4月にはPowerPoint版も発売する」との発表があり、その一部のデモンストレーションが行なわれた。これは、Word版を利用した教育関係者から、「紙芝居の感覚で考えられるPowerPointの方が、調べ学習には効果的。文字が大きく分かりやすい上、絵や音の挿入も簡単なので、対応版を作って欲しい」というリクエストに答える形で開発が進められたものである。

子供の興味をひくアニメーションや音声の張り付け操作が容易に。デジカメを使った“わが家の自慢レシピ”や“4コマ漫画”など、ユニークな活用事例が披露されると、会場は笑い声に包まれた子供の興味をひくアニメーションや音声の張り付け操作が容易に。デジカメを使った“わが家の自慢レシピ”や“4コマ漫画”など、ユニークな活用事例が披露されると、会場は笑い声に包まれた



生徒の集中力維持や、次の授業への準備に対する配慮も

引き続き、パソコン画面転送システム『リモコン倶楽部スクールエディション』の機能と具体的な活用法が紹介された。

実際に、パソコンが1人に1台という環境が整ったとしても、数十名の生徒を1人の教師が指導するには、数々の問題が出てくるだろう。従来より、生徒と教師の双方向通信を可能にするCAIシステムもあったが、1教室当たり500万円程度と高額な上、専用ケーブルの設置や、それに伴う大規模なレイアウト変更など、経費と手間が掛かりすぎる傾向にあった。

『リモコン倶楽部スクールエディション』は、100BASEのネットワークを基本に、ディスプレー画面のレイウトは実際の座席に応じて変更できるなど、フレキシブルなシステムを搭載。生徒からのヘルプコールやメッセージの送信があれば、個々の生徒を示すアイコンの色が変わり、教師に知らせてくれる。教師から生徒への画面の一斉転送、特定の生徒の画面をピックアップして、ほかの生徒に転送するなど、最大100人分のディスプレーを見ながら、一対多の指導ができる。

一部分を拡大表示したり、画面上でマーキングや文字入力をすることも可能。中学生以上になって、プログラミングなどの複雑なカリキュラムをこなす場面でも威力を発揮する。転送による画面表示の時間差は約1秒から2秒で、ほとんどタイムラグは感じられなかった一部分を拡大表示したり、画面上でマーキングや文字入力をすることも可能。中学生以上になって、プログラミングなどの複雑なカリキュラムをこなす場面でも威力を発揮する。転送による画面表示の時間差は約1秒から2秒で、ほとんどタイムラグは感じられなかった



このシステムでは、画面やURLの転送をすることがメーンだが、教師が説明をしているときには、生徒側のパソコンの画面を塗りつぶしたり、キーボードにロックを掛けるなど、集中力を高めるための機能も付加している。アプリケーションの一斉起動や、次の授業に備えての一斉復旧、一斉電源オンオフといった、実際に教育現場で使用するシーンを想定した仕掛けが盛り込まれていた。

山田氏は「出来上がりを発表するだけよりも、制作過程を見せることで、ほかの生徒の発想をヒントに新たなアイデアにつなげていく方が効果的な授業ができるはず」と、ともすれば1人の世界にのめり込みがちなパソコン教育の欠点を補う手法である点も言い添えた。

ソフト+ハードの組み合わせで低価格と高機能を実現

次に(株)ナナオの竹田愛美氏から、『EIZO FlexStation Education System』の紹介があった。これは、先に紹介された種々のソフトウェアの弱点ともいえる動画情報の提供をフォローするハードウェア。ディスプレー専門メーカーである同社のノウハウが生かされている。ホームシアター市場でも高い評価を得ているマルチビデオ信号変換器『GS4000』を採用し、生徒の数だけビデオ信号分配器を設置するだけで、ビデオ(LD)やDVD、ハイビジョン映像を配信することができる。

「情報量が多く、臨場感のある画面を見せることで、生徒のモチベーションは確実に高まる。ディアイエスの製品との組み合わせは、費用的にみても他社製品との競争力あり」(竹田氏)。

(株)ナナオの竹田愛美氏(株)ナナオの竹田愛美氏



最後にふたたび登壇した山田氏からは、LAN環境でのパソコンの保守やシステム環境を管理するためのツール『リモートシステムマネージャ』が紹介された。

資産管理(アセット)、ソフトウェア配布(デリバリー)、不正利用の防止(ポリシー)、自動電源管理(ウエークアップ)、リモートコントロール、階層サーバーの管理、ログ集計といった機能を、予算と必要性に応じて自由に組み合わせられるツールである。山田氏は、パソコンの台数が増えて煩雑になる作業を低減化する工夫も、ミレニアムプロジェクト対策としては大切であることを指摘した。

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