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本邦初公開のウェアラブル用ウェア登場――“デジタルルネサンス~人に優しいデジタル社会”基調講演より(中編)

1999年11月08日 00時00分更新

文● 船木万里

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4日、東京都港区のTEPIA(機械産業記念館)において、TEPIA国際シンポジウムが開催された。さまざまな講演者やパネリストを招き、“人に優しいデジタル社会”について多角的な視野から討論が行なわれた。

午後の基調講演のスピーカーは、東京大学名誉教授の石井威望氏。石井氏は、今回のTEPIAの展示審議委員会でも委員長を務めている。

東京大学名誉教授の石井氏。医学、工学、中央官庁、官学、私学という幅広い経験から奥深い提言を繰り返す。最近は、ウェラブルコンピューターとともにバイオインフォマティクスの意義を強調している東京大学名誉教授の石井氏。医学、工学、中央官庁、官学、私学という幅広い経験から奥深い提言を繰り返す。最近は、ウェラブルコンピューターとともにバイオインフォマティクスの意義を強調している



世代の格差とネットとの関わり

まず「現代の若い世代はマンガとアニメ、そしてTVゲームという比較的新しい文化産業の中で育ちました。我々の世代と比べ、育った環境、文化が大きく変化しています」と、グラフなどの資料を示した。これらは、石井氏の少年時代にはほとんど存在しなかったメディアであり、文化による世代の格差は大きい。

さらに'95年と'98年における大学生の行動を比較すると、インターネットやメール利用、人と会う、などの“情報行動”に充てる時間が、たった3年間で飛躍的に増加している。新たな情報化社会の中で成長していく新しい世代を、石井氏は“ネットジェネレーション”と呼んだ。

こうした21世紀を担うべき世代のために、'95年から石井氏が中心となって始めたイベント調査が“楽しいマルチメディア家族キャンプ(Multimedia Camp)”。小学生の子供たちにモバイル機器を与え、彼らが遊びながら使い方をマスターしていく様子を観察、分析している。東京大学の学生らが企画進行し、子供たちと山や街へ繰り出す様子を記録したビデオが、スクリーンに映し出された。石井氏によれば、小学校低学年でも、モバイル機器を手渡してからおよそ24時間で、大まかな利用方法を理解し、ゲームに興じたり、インターネットで情報を送信したりできるようになる。

GUIからPUIへ

子供たちのモバイル機器への順応を考えても、今後“モバイル”という状態はコンピューターにとって重要なファクターとなる。歩きながら、遊びながら通信を行なえるような、PUI(Perceptual User Interface:知覚的な入力装置)が必要ではないか、と石井氏は言う。

今まではデスクトップにコンピューターを置き、利用する側がその場所に固定されていたが、現在はモバイル機器の開発と実用化によって持ち運び自由となり、両足が開放された。今度は、ウェアラブル(wearable=着ることができる)機器によって、両手も自由に開放していくべきである、という考えだ。

これまでの世代は“二兎を追う者一兎も得ず”を教訓にしてきたが、今後は“二兎を得る”マルチタスク世代に標準を合わせた情報化社会を構築していくべきだ、と石井氏は述べた。

“ウェアラブル”について熱く語る石井氏。各種講演会でも、ウェアラブルコンピューター用ベストを着用して登壇することが多い“ウェアラブル”について熱く語る石井氏。各種講演会でも、ウェアラブルコンピューター用ベストを着用して登壇することが多い



こうした考え方につながるものとして石井氏が挙げた実例に、携帯電話による新しいインターネットの利用形態がある。NTTの『iモード』に契約すれば、費用も安価で手軽にインターネットを利用できる。誰でも参加できる気軽さから、『iモード』利用者は増加の一途をたどっており、アメリカの情報ビジネス界でも注目されている。

また、東芝から発売されているノートパソコン『Libretto』は、超小型ながら多機能を備え、デジタルカメラとして利用したり『WALKMAN』のように音楽を聴くなど、マルチタスクな利用が可能。音声入力もできるなど、かなり“ウェアラブル”なツールになっている。

ウェアラブルなコンピューターとは

これまでの“モバイル”=移動できるパソコンから“ウェアラブル”=身につけるパソコンへの変化に応じて、服も変化していくべきだと石井氏は考え、文化服装学院の協力を得て“ウェアラブルファッション”を研究開発している。

ウェアラブルファッションを身につけたスタッフが、壇上で機能を説明ウェアラブルファッションを身につけたスタッフが、壇上で機能を説明



  今回は、学生スタッフが壇上で“本邦初公開”のウェアを披露した。電話、端末、電源などの専用ポケットを全身に装着したウェアは、機器の固定に面ファスナーを利用するなど、細かい工夫も凝らされている。現在開発中というヘッドギア型コンピューターでは、歩きながら画面を見ることができ、腰につけた端末で入力も可能という。

腕や腰に端末を固定。歩きながらでも利用できる腕や腰に端末を固定。歩きながらでも利用できる



 ヘッドギア型パソコン。極小ディスプレーにより、周囲を視界に入れながらも画面を見ることができる ヘッドギア型パソコン。極小ディスプレーにより、周囲を視界に入れながらも画面を見ることができる



21世紀には、モバイル機器を楽々と使いこなす子供たちの世代が社会の中心となる。同時に、高齢化社会も大きな問題となってくる。現在、携帯電話による安全確認によって、高齢者が旅行可能な場所が広がり、介護の現場で端末を利用しているサービス会社もある。今後モバイル、またはウェアラブルなコンピューターを活用することにより、高齢者問題や経済活動においても、さらに様様な可能性が生まれてくるはずだ、と石井氏は言う。

「現在のウェアは、携帯電話や電源など既存の機器を使いやすく収納する形態ですが、将来的には服にコンピューターが組み込まれた、本当の意味でのウェアラブルツールを開発していきたい。コンピューター自体の重量をもっと軽くし、誰でも操作できるようなユーザーインターフェースにするなど、日常的なものにできればと思っています」と、“ウェアラブルパソコンへの期待”を語った。

    TEPIA

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