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「入金までの期間を短くしないとカード決済を止めるかも」--“オンラインショップマスターズクラブ”の会合から

1999年10月12日 00時00分更新

文● 編集部 中野潔

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オンラインショップ88社(個人を含む)が集う“オンラインショップマスターズクラブ”は、7日に都内で会合を開いた。電子決済事業者、数社を招いて、情報交換するとともに、オンラインショップ側からの電子決済への要望を率直に述べた。“オンラインショップマスターズクラブ”の設立した後の会合としては、初の本格的な集まりである。

約90社が集うオンラインショップマスターズクラブ

“オンラインショップマスターズクラブ”は、8月に結成された。増加する問い合わせメール、発注メールへの対応工数軽減、物流費・決済手数料の圧縮、ページ制作技術の向上、セキュリティーの向上など、オンラインショップに共通する課題について話し合い、必要なら関係業界と交渉して、解決策を探る。その結果、消費者にとって、より安全で、かつ満足を覚えるショップの実現を目指す。

会合では、まず、会長の合資会社逸品社長、森本繁生氏があいさつした。その後、電子決済事業者の自己紹介、オンラインショップの自己紹介と電子決済事業への要望表明と進んだ。要望表明の中で多かった、(1)支払いサイト(売り上げが立ってから実際に、ショップに所定金額が振り込まれるまでの期間)を短くしてほしい、(2)電子決済事業者が取る手数料の料率を減らしてほしい、(3)電子決済事業者ごとに入力項目や入力の際のデフォルト設定が異なるのを統一して欲しい--との3点について、集中的に討議した。

本稿では、主に電子決済事業者が述べた自社システムの特徴や今後の予定、ショップ側の考える良い電子決済システムの条件、上記(1)、(2)、(3)に関する代表的な意見を列挙する。

電子決済事業者の自賛の特徴と今後の予定

「野村総研では、セブン-イレブンによるコンビニエンスストア決済を推進している。消費者がオンラインで購入申込をした後、消費者に払込票をプリントしてもらう。これにバーコードがプリントされる。セブン-イレブンに、この払込票を持参し、レジのPOS端末で店員にスキャンしてもらい、その金額を払う。その後、8日から13日ほどで、ショップに振り込まれる。

払込票をショップが郵送したりする必要がない点、入金がどの購入申し込みへの入金だったのかを、ショップが消し込む必要がない(バーコードで自動的に突き合わせられる)点が特徴である」((株)野村総合研究所のECビジネスプロジェクト部、二村修氏ら)。

「ウェルネットでは、コンビニエンスストア決済を推進している。決まったパッケージソフトをオンラインショップのパソコンにインストールしてもらう。消費者がオンラインショップで注文する。ショップでは、商品と一緒に、バーコードを印刷した払込票を配送する。消費者は、コンビニで支払う。入金がどの購入申し込みへの入金だったのかを、ショップが消し込む必要がない(バーコードで自動的に突き合わせられる)点が特徴である。ショップがウェルネットに払う手数料は、1件150円。決済可能額は1円から100万円まで」(ウェルネット(株)の営業部の三橋舞氏)。

「Panasonic Hi-Hoでは、Hi-Hoチェックというクレジットカード決済を採用している。カード会社9社が加盟店(オンラインショップ)と、交渉する。消費者は、登録すると、すぐ使えるようになる。他のショッピングモールと決済面で連携できないか、といったことを考えている」(松下電器産業(株)のPanasonic Hi-Hoショッピングアベニューの原野氏)。

「ニフティでは、5月にニフティ決済を開始した。ニフティユーザーとしてのIDとパスワードで、クレジットカードで決済できる。店舗数が10月6日現在で60店舗。今年度中には、デジタルコンテンツの扱いも強化したい。いろいろなモールと連携することも考える」(ニフティ(株)のサービス企画部の細川玲理氏)。

「電子クレジットのアコシスは、10月末で3周年を迎える。10月6日現在で800店舗が採用している。採用店舗が500店舗を超えてから、メリットが出てきた。米、日の他のクレジットとの会員ゲートウェーといったことも考えている」(アコム(株)の取締役アコシス推進室長の鏡味義房氏)。

「信販カードのアプラスでは、5月にインターネット決済をスタートした。アプラスのカード会員が中心である。事前登録したIDとパスワードを入力するので、インターネット上をカード番号が行き交うことはない。試行錯誤を続けながら、よりよい仕組みを目指している」(アプラスの新堀氏)。

「インターネット上でのクレジットカード決済であるが、プロバイダーではクレジットカード決済が多く、オンラインショップでは少ない。10月には、クレジットカードによる決済サービスシステム作りについて、動きが出る可能性がある」(JCBカードの情報ネットワーク事業部の佐藤氏)。

「NTTコミュニケーションズでは、クレジットカードを用いた電子決済“Livuy”の実験を実施している。消費者はSSL通信のもとで、1回、自分の情報を登録する。あとは、クレジットカードの番号などがインターネットを流れることはない。消費者の側では、入会費用やソフトインストールが不要のため、ワンタイム購入(そのときだけの利用)が可能もなる。オンラインコンテンツのダウンロードや定期購読にも対応している。カード会社、十数社が個別にショップと交渉する形になっている。ショップの側では、消費者のカード情報を見ることができない。

年内から年度内に実験段階から商用化段階への移行を目指す。デビットカードやスーパーキャッシュ(ICカードを用いたNTTグループの電子マネー)を採用する方向で、その仕組みや盛り上げイベントについて検討している」(NTTコミュニケーションズの堀氏)。

賛助会員の(株)きゃぴてるは、会員であるオンラインショップと会員でない電子決済事業者との交渉という今回の図式からややはずれるが、自社の推進する郵便貯金自動引き落としについて説明した。「オンラインショップの、集金代行、電子決済サービスである“CAPION”を業務にしている。消費者は、郵貯総合口座を開き、きゃぴてるに申し込む。CAPIONのIDとパスワードが発行される。商品の発送をきゃぴてるが確認してから、10日、20日、末日に消費者の口座から引き落とす。ショップ側の決済手数料は1件130円。消費者は、パスワードが変更でき、また、自分の購買履歴が見られる。2000年3月には、エレクトロニックデビットカードの導入を検討している」((株)きゃぴてるの長谷川徹社長)。

「支払いサイトを短縮してほしい」

ショップ側の考える良い電子決済システムの条件に関する、包括的意見としては次のようなものがあった。

「消費者としては、(1)専用ソフトを必要としないこと(対応ソフトをダウンロードしないといけないというのは困る)、(2)環境を選ばないこと(マッキントッシュ対応のソフトが非常に少ない)、(3)誰でも現金が使えるのと同様に、電子決済でも、パソコン、iモード、WebTVなど、いろいろな仕組みが使え、しかも、難しいセキュリティー設定などをしなくて済むのがよい--といった仕組みを求めている」(電子決済ジャーナルを発行する(有)エムズ・アットマーク代表の加藤真澄氏)。

「まず、事務作業の煩雑さを何とか解決してほしい。電子決済事業者によって、入力項目が違うし、デフォルトの設定が違う。購入確定の(売り上げが立つ)時点や、返品交換の扱い、注文取り消しの扱いもまちまちである。次に、クレジットカードなどの手数料10パーセントというのは、きつすぎる。粗利が仮に4割とすると、その中から送料や梱包材の費用を出す。手数料10パーセントでは、利益が出ない。支払いサイトの短縮についても努力してほしい。

それから、未払い常習者の情報をショップ同士では交換できないので、それに変わる仕組みを電子決済業者で用意してくれると助かる。未払いが溜まっている消費者からの注文は、その消費者の情報を店に伝えることなく、未払いが解消されるまで、その電子決済事業者で、次の(別のショップへの)注文を受けない仕組みにしてくれるとよい。

また、オンラインショップでは、商品が本当に届くのかという消費者の思いから、後払いになっているが、電子決済事業者が参加基準を厳しくし、信頼できる店だと太鼓判を押してくれるなら、先払いを増やすことも可能なはずだ。さらに商品の引き渡しについてだが、宅配便の24時間サービスがあるといっても、深夜に宅配の訪問を喜ぶ人はいない。コンビニ決済において、コンビニで商品の引き渡しができるようにしてほしい」(傘をオンラインで販売する心斎橋みや竹の宮武和広氏)。

支払いサイトの短縮については、次の意見が代表的といえる。「カスタムPC工房を営んでいる。売り上げが順調に伸び、オンライン決済も伸びている。しかし、オンライン決済が半分を超えたら、クレジットカードによる支払いを取り止めるつもりだ。月商数百万円から千数百万円で、部品の支払いを先に済ませる業態では、売り上げの入金が数十日後だったら、運転資金が持たない。売れている店ほど、恐くて、カードに代表されるオンライン決済が導入できない」((株)インターピーシー・セルの淡路裕司氏)。

「事務の煩雑さを解消して」、「手数料を安く」

事務の煩雑さの解消を求める発言をいくつか引用する。「子供服を売っているが、ギフト中心なので、注文・支払者と発送先とが違う。お客さんに請求書を発行する事務作業を減らしたい」(FELLOWSの細川真名氏)。「照明器具なので、お客さんへのコンサルティング時間を増やしたいが、少ない人員が事務作業に忙殺されている」(照国電機(株)の堂園秀隆氏)。

手数料の軽減を求める発言を引用する。「コーヒー豆を売っている。金額が小さいので、手数料が高かったり、月刊基本料が必要だったりするものは、使いたくても使えない。郵便振り込みの後払いで、過去、不払いやクレームは1度もなかった」(永田珈琲倶楽部の永田政弘氏)。

このほか、(有)ワイン・アクセサリーズ・クリエイションの中村竹志氏、“オーガニックサービスストア”を標榜する(株)ドゥマンの鈴木愛氏、結婚式衣装などのウエディングネットの伊村未散氏などが発言した。西濃運輸(株)からの出席もあった。

電子決済事業者に対し、一部、辛辣な意見も出て、白熱した会合となった。

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