このページの本文へ

“IT国家”カナダの実態--“チームカナダ・情報通信技術産業セミナー”開催

1999年09月20日 00時00分更新

文● 編集部 寺林暖

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

カナダのソフトウェア産業を紹介する“チームカナダ・情報通信技術産業セミナー”が17日、都内のホテルで開催された。同セミナーは、カナダのジャン・クレティエン(Jean Chretien)首相が率いる貿易視察団“チームカナダ”の活動に合わせたもの。カナダ外務省・国際貿易省、大使館、総領事館の主催によって行なわれた。

チームカナダは12日から18日まで日本に滞在し、8つの重点分野(情報通信技術/宇宙開発/バイオテクノロジー/医療/環境/教育/電力および新エネルギー/建築用材)別に技術セミナーを開催した。これらの技術セミナーではカナダ企業の紹介を行なうほか、日本での提携先の募集も行なっている。今回のセミナーではカナダの“情報通信技術”の現状について、プレゼンテーションが行なわれた。

まず、カナダ情報技術協会(ITAC)の会長を務めるAndre Gauthier(アンドレ・ゴチェ)氏が、「'97年のカナダにおけるIT産業の売上高は、前年比5.4パーセント増の1002億米ドル(約10兆2200億円)となっている。現在、50万人以上のカナダ人がIT産業で働いているが、これは前年と比べて10パーセント近く増加している。一方、カナダの平均成長率は2パーセント以下。カナダのIT産業はダイナミックに成長している」と、同国のIT事情について語った。

ゴルチェ氏は、カナダの情報技術コンサルティング会社であるLGS社の上級執行副社長も務めている
ゴルチェ氏は、カナダの情報技術コンサルティング会社であるLGS社の上級執行副社長も務めている



“距離を克服したい”という国民性

次に、カナダの電子商取引サービス会社であるICE社のCEO、Doug Keeley(ダグ・ケーリー)氏が「カナダは、3000万人弱という少ない人口が、世界で2番目に大きな国土に拡散した国家。そのため、我々カナダ人は昔から“距離を克服したい”という自然な性向を持ち、鉄道網や道路網の構築など、広大な地域の中でコミュニケーションをとる努力を続けていた。現在では、電話とケーブルテレビの普及率はほぼ100パーセント。人口の約半分以上がインターネットを利用している」と語った。

ICEのCEOであるケーリー)氏
ICEのCEOであるケーリー)氏



続いて、CGデザイナー/アニメーターの養成校であるSheridan Collegeでアニメーション部門のディレクターを務めるRobin King(ロビン・キング)氏が、同校の授業風景を紹介。Communication Research Center(CRC)の所長であるGerry Turcotte(ゲーリー・タコット)氏は、開発中の次世代ビデオ会議のデモンストレーションを実施した。CRCは、カナダ産業省の研究機関。コミュニケーション関連技術の研究/開発を行なっている。今回のデモは、郵政省の通信総合研究所の協力を受けているという。

次世代ビデオ会議のデモの様子。タコット氏はオタワのCRC本部に接続し、現地の所員と会話を行なった。音声は時々雑音が混じったが、映像は非常に鮮明。動きも極めてスムーズであった
次世代ビデオ会議のデモの様子。タコット氏はオタワのCRC本部に接続し、現地の所員と会話を行なった。音声は時々雑音が混じったが、映像は非常に鮮明。動きも極めてスムーズであった



米国にあまりにも近すぎるために……

最後に日本経済新聞社の記者である滝山晋氏が、日本人から見たカナダのIT産業について講演を行なった。滝山氏はカナダ大使館を通して同国のIT産業に興味を抱き、トロント/オタワ/モントリオール/バンクーバーといった主要都市のIT関連企業を取材したという。

日本経済新聞社の滝山晋氏
日本経済新聞社の滝山晋氏



滝山氏は「米国企業によるカナダ企業の買収が非常に多いほか、米国企業が高額な報酬を提示し、カナダの優秀な人材を引き抜いているという“頭脳流失”の問題が生じている。さらに、保守的なカナダの銀行は、ベンチャー企業への融資を避けているため、カナダのベンチャー企業の多くは、米国のNASDAQ上場を目指す他ない」とカナダのIT産業の問題点を指摘した。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン