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【COM JAPAN 1998】バリアフリーを意識した製品も展示

1998年11月12日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司

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 情報通信分野の最新技術が集う“COM JAPAN 1998”。ハイテク技術に目を奪われがちだが、主催者特別企画展示として、高齢者・障害者の介護やコミュニケーションツールにパソコンを利用する事例の展示も行なわれていた。

 “アクセシビリティ&バリアフリーサークル”では、高齢者や障害者の介護に利用できるよう工夫された製品が各メーカーから出展されていた。

富士通

 富士通(株)は、高齢者や体の不自由な人を遠隔地からケアするためのシステムを出展。ISDN回線で病院などのセンターと被ケア者の自宅を結び、テレビ電話による対話を行ないながら健康状態などをチェックできる。

 被ケア者の側にはカメラ、マイク内蔵の操作パッド、血圧・体温・心電図・尿糖値などを検査できる『バイタルセンサー』が設置されている。『バイタルセンサー』による検査結果はリアルタイムでセンターに送られる。被ケア者側のカメラは、センターからの操作で首振りやズームが可能。センターに送られるデータは、保険センターやかかりつけの医療機関などで共有することもできる。

被ケア者側のシステム。テレビの下に見えるのが『バイタルセンサー』
被ケア者側のシステム。テレビの下に見えるのが『バイタルセンサー』



センター側のシステム。被ケア者の様子や『バイタルセンサー』による検査結果がリアルタイムで表示される
センター側のシステム。被ケア者の様子や『バイタルセンサー』による検査結果がリアルタイムで表示される



NEC

 日本電気(株)では、マウスが使えないユーザー向けの入力デバイス『よしポンマウス』を展示。これは、画面上のクリッカブルポイントを順次表示していくソフトウェアと、マウスのクリックにあたる操作を行なう入力デバイスのセット。
 マウスカーソルはクリッカブルポイントの上で一定時間点滅しながら、次のポイントへと順次移動する。1ヵ所に留まっている時間は任意で設定できる。ユーザーは自分が選択したいポイントにカーソルが移動したとき、パソコンに接続した入力デバイスのスイッチを押すことで、マウスでダブルクリックしたのと同様の操作をすることができる。

『よしポンマウス』をインストールしたマシン。画面上をカーソルが順次移動していた
『よしポンマウス』をインストールしたマシン。画面上をカーソルが順次移動していた



スイッチの一例。この試作品ではカセットテープのケースを利用。ふたを押し込むとスイッチが入るようになっている
スイッチの一例。この試作品ではカセットテープのケースを利用。ふたを押し込むとスイッチが入るようになっている



 入力デバイスにはボタンを1つ搭載したものと2つ搭載したものがある。また、キーボードのTabキーとEnterキーでポイントの選択、決定を操作するように設定することも可能。現在のところ、対応ソフトは『おばあちゃんとぼくと』、『リトルモンスターがっこうへいく』など計5タイトルがあり、価格は各4800円。

日立製作所

 今回、このゾーンでもっとも大きなスペースを占めていたのが日立製作所。同社がCMで放送して話題になった、『伝の心(でんのしん)』を参考出品していた。
 『伝の心』は、筋萎縮性側索硬化症(通称ALS)患者のために、パソコンをコミュニケーションツールとして利用しようというもの。ALSは、40代~50代の男性に発病率の高い、筋力が衰えていく病気。知覚にはなんら変化のないまま、症状が進むにつれて手足が動かなくなり、話すことも食べることも困難になっていく難病として知られる。

 日立では、ALS患者が家族などとコミュニケーションを取るための文字入力デバイスとして『伝の心』を開発した。ディスプレーには50音文字表が表示され、その上をカーソルが自動的に移動する。ユーザーは目的の文字に来たところでスイッチを押すことで、文字の入力ができる。スイッチには、顔やアゴで触れて入力するタイプのものと、顔の筋肉の動きをセンサーで読みとって入力するものがある。

システム全体。中央のオレンジ色のボタンがついたものは緊急時に鳴らすブザー。スイッチを3回連続で操作すると作動する
システム全体。中央のオレンジ色のボタンがついたものは緊急時に鳴らすブザー。スイッチを3回連続で操作すると作動する



 『伝の心』には、入力を支援する機能が用意されている。たとえば、“おめでとう”と入力したいときは、まず、“お”と入力する。するとあらかじめ登録した“お”で始まる定型文の一覧が表示される。続けて“め”と入力すると今度は“おめ”で始まるものが表示され、その中から“おめでとう”を選択する。もちろん、新規に文章を作成することもできる。入力した内容をポケットベルに転送する機能も備えている。

タッチ式のスイッチ。先端部に触れると反応する
タッチ式のスイッチ。先端部に触れると反応する



センサー式のスイッチ。先端部に筋肉、眼球の動きなどを読み取るセンサーが内蔵されている
センサー式のスイッチ。先端部に筋肉、眼球の動きなどを読み取るセンサーが内蔵されている



 現在はまだ試作段階だが、Webページの閲覧を『伝の心』で行なえるシステムも展示されていた。“リンク先へジャンプ”や、“画面のスクロール”などのメニューが画面下に表示される。リンク先が複数ある場合は、一覧で表示される。
 日立のブースでは、室内の各家電機器をひとつのリモコンで操作できるように、“CDプレーヤー再生”や、“エアコンをつける”などのコマンドを記憶させ、パソコンの画面に表示させることができる『学習リモコン』もあわせて展示されていた。

『学習リモコン』。エアコンやCDラジカセなど家電製品のリモコンを一括して管理できる
『学習リモコン』。エアコンやCDラジカセなど家電製品のリモコンを一括して管理できる

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