8月21日から24日にかけて、米国カリフォルニア州のモントレーで、O'Reillyの主催による「Open Source Software Convention」が開かれた。同イベントは、以前からO'reillyの主催で行なわれていたPerl Conferenceを中心にApache、Linux、Python、Tcl/Tk、Sendmail、Open Source Businessといったテーマを加え、「Open Source Convention」というひとつの大きなイベントとしたものだ。
前半2日間はチュートリアルで、それぞれのテーマに対して、スピーカーが解説をする。そして、後半2日間がカンファレンスとなる。後半に関しては、午前の最初に必ずすべてのテーマに共通のキーノートセッションがある。これは1日目はGuy Kawasaki(garage.com)、2日目はBill Joy(Sun Microsystems)が行なった。これがすべてのトラックに共通のキーノートで、その後それぞれのテーマに関してのキーノートが行なわれる。Larry Wall(Perl開発者)、Miguel de Icaza(GNOME開発者)、そしてEric Raymond(「伽藍とバザール」著者)らがスピーカーとして招かれていた。
講演するEric Raymond |
今回、アスキーNTの渡邉副編集長が参加したので、話を聞いてみた。
まあ、変わったところではREIというアウトドアグッズのショップが出展していました。ちょっと場違いだったけど、Webで店を作るのにこんな技術を使っていますよという意味で展示をしていたみたいです。
FSF(Free Software Foundation)も出展していましたね。いつものとおり、マニュアルとCD-ROMを売っていました。
ユーザーの研究発表みたいなのはたくさんありました。Georgia工科大学でウェアラブルコンピュータの研究をしているんだけれど、その中身をLinuxで作っているといったものですね。
ウェアラブルコンピュータを実際に身につけて話すThad Starner氏 |
まあ、昔からそういった実験用のOSというのは、UNIXを使ってやっていたんです。それが今は、Linuxになってきたということです。やはり、ソースを見ることができるというのが大きいのでしょう。
逆にPerl、Python、Sendmailのように開発者が来ていたセッションのほうは、それ自体の開発の話で盛り上がっていましたね。「今動いているプロジェクトがどうなっているのか」といった話もありました。
あと、Linuxに関係するといえば、Open Source Businessというトラックがありました。
Mozillaの開発者が来ていましたね。Raymondなどを加えてトークセッションみたいなことをやったり、単独での講演もしました。かなり人が集まったけれども、粉糾もしました。それらのセッションを見る限りでは、既存の商業ベースでソフトウェアを開発していた企業が、オープンソースに移行するのは相当難しいな、と感じました。
Netscapeの側としては、あれは失敗だったという認識でいるみたいです。彼らは、「オープンソースで、ソースを公開するのは誰でもできる。ただ、開発のプロセス自体をオープンにするのはとてつもなく難しい」と言っていました。それはたぶん、Raymondが言っているバザールモデルと対立する考え方だと思いますが、開発プロセスをオープンにしてしまったため、Netscapeとしてはコントロールできなくなってしまった。それが、Mozillaの失敗の原因だったということでした。けれども、それは、オープンソースコミュニティの考え方とは違うんですね。
オープンソースといえば、Linuxのセッションのなかで、SGIのバイスプレジデントが話をしたんですよ。ミネラルウォーターのペットボトルをもって来て、演台の上のコップの水と比べて、「こっちは売り物、こっちはただ。でも中身はいっしょ。この違いはなんでしょう」と聞くんです。「これはパッケージングされていて、ラベルがついている。ユーザーがお金を出すのは中身の水じゃなくてこのラベルだ」というのが、彼らの答えでしたね。
つまり、ブランドをどう確立するかが、オープンソースをベースに企業が商売できるかどうかということですね。
余談ですが、Red Hatが今度日本法人を作ることになったのも、「ブランドを確立するために努力している彼らが、自分たちでそのブランドを使って商売をしたいと考えた」ということで当然の成行きといえるかもしれませんね。
そういえば、台湾からの参加者が来ていて、彼と「ローカルな言語の入力はどうする」という話になりました。そこで「TurboLinuxが日本ではATOKをつけて大成功している」と言う話をすると、「ATOKとうのはオープンなシステムか」と聞いて来たんですよ。まず、それが気になるみたいですね。
「フォークを禁止している」というのが理由でした。フォークというのはUNIXの用語でもあるのですが、要するに食器のフォークのように、いくつかのものに分岐していくことを示すんです。
JavaはいわゆるAPIのインターフェイスを固定していて、それを必ず守らなければならない。同じものがどこでも動くためにはそれは必要なんですが、「固定されるのはいやだ。そういう形のライセンスはオープンソースとは認めない」ということでしたね。
ユーザーにとってのメリットというよりも、コミュニティのポリシーとして、受け入れられない、ということのような気がしないこともないですね。
ひとことで言えば、「オープンソースコミュニティの思うオープンソースと、企業がやりたいオープンソースとは違う」ということでしょうか。
Raymondのセッションのときに、Q&Aとして出ていた質問なのですが「オープンソースにすれば成功するのか。そうだとしても、どこの会社もオープンソースにしたときに、それをサポートするだけの開発者がいるのか」というのがありましたね。Raymond曰く、「そこで問題になるのは、プロジェクトの魅力だろう。あなたはCEOなの?そうか、だったらあとでそれについて話をしよう。」という感じの話をしていましたね。でも、現実には極めてシビアな問題でしょう。企業が必要とするプロジェクトが、必ずしも開発者にとって魅力あるプロジェクトとは限りませんから。
最初に渡邉副編集長は「商売しに来てるんじゃなくて、もっと学術研究的な意味合いで」と言っていたが、そのような場でもビジネスというキーワードは無視できないものになって来ている。これから、ますます両者の関係は深くなっていくだろう。そのとき、お互いにどのように折り合いをつけていくか、検討し準備しておく時期が来ているといえるだろう。
なお、「Open Source Software Convention」の詳しい模様はアスキーNTの11月号(9月24発売)に掲載される。
※1 Birds of a feather もとは「類は友を呼ぶ」という意味で、似た者同士が集まったんだから気軽にざっくばらんに話し合おう、というコンセプトの会議。