トッパン ISBN 4-7952-9652-9 価格4369円(税別)
本書は、'96年秋に出た本で、十分に古い本です。このくらい古いと、書店から消え去っているのが普通ですが、今年になってからも増刷され続けていて、既に10刷になっているロングセラーです。なぜ、いつまでもこの本は売れ続けるのでしょうか。
同じ著者等によって出された表紙に毛布をかかえたLinusの絵がある『Linux入門』(4-7952-9652-9)が'95年2月に出ていて、それが日本でLinuxが本格的に普及し始めるのに大きな影響を与えました。当時の私は、SPARCを使っていましたが、個人でもっと自由に使えるマシンとOSが欲しくて、'95年の初夏にはDOS/Vマシンを手に入れ、Linus本と言われるこの本のCDを早速インストールして使い始めました。本当に十分実用になるか不安だったので、Windows3.1を残したまま空き領域に入れて使っていましたが、結局Windowsをほとんど使わなくなり、再インストールのときにはLinuxだけにしてしまいました。
それから1年8ヶ月後に、同じ著者等により本書が出ました。インストールの説明も、その他の説明部分も充実し、618ページの分厚い本になりました。インストールの説明部分は非常に淡々とした解説ですが、実にきめの細かい要領を得た説明になっていて、ネパール人へのUnix教育のためにLinuxをインストールするときにも本書を大いに参考にして環境を整えました。
余分なデザインが見事なまでに排除され、他のインストール本に比べると冷たい印象があると思います。また厚さに圧倒されて、初心者は躊躇するのではないかと思いますが、最後にはこの本に戻らざるをえないでしょう。というよりも、新しいインストール本の類が、見た目を重視するあまり、内容的に本書を越える本が出ないことが非常に残念です。
本書もさすがに内容が古くなり、とくに付属のCD-ROMは古くなり過ぎたので、最新の刷ではPlamo Linuxプレゼントでカバーしようとしています。そういう努力もさることながら、本書の執筆方針を保ちながら改定版『Linux入門』が世に出ることを切に希望します。
(藤原博文)