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「ある種の社会貢献ができる」―― HardEther発表会

2008年11月26日 00時00分更新

文● 二瓶 朗

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目標契約回線数は1年目で50~300回線

 同社は、HardEtherサービスに対する需要は今後5~10年間は継続して発生すると見込んでいて、同期間は安定したサービスと新規契約受付体勢を整備していく。

 目標契約回線数は1年目で50~300回線、2年目に200~600回線を目指し、売上高は年間1億2000万円前後を見込んでいるという。

 サービスの主要ターゲットは、NTTグループやKDDIといった大手通信事業者による専用線、広域イーサネットサービスの顧客ターゲットから外れた、中小企業やベンチャー企業、SOHOなど。印刷業、映像制作業、ソフトウェアやネットビジネスなど、拠点間で1Gbpsの低遅延サービスの利用を希望するユーザーとされている。

 「今の時代、拠点間通信ではスループット1Gbps、遅延1msec未満のパフォーマンスが必要」と発表会会場にて同社代表取締役会長 登 大遊氏は語った。

 登氏は、「PacketiX VPNは、実験上では3.1Gbps以上の速度で通信が可能なソフトウェアである」としながらも、「仮想Ethernetをインターネット上に構築するため、物理的な回線の速度や品質に左右される。そういった弱点を解消するサービスとしてこのHardEtherサービスを提供することを決めた」と述べた。

 そして、「HardEtherのメリットは価格が安いこと、通信品質が良いこと。デメリットは、サポート体制が大手に比較すると劣ること。HardEtherはそのデメリットを許容しつつメリットを得たいユーザーに対して提供していく」と続けた。

 同社の調査によると、HardEtherの料金と、大手通信事業者による同等の広域ギガビットEthernetサービスを比較すると、数倍から数十倍の価格差で安価であるという。しかし、低価格である反面、もっとも安価なバリュータイプでは回線の切断によるバックアップ体制がなく、ユーザーサポートも営業日の営業時間内に限られるといった面もある。

 登氏は「より充実したサポート体勢を求める顧客には、大手事業者のサービスを勧める可能性もある」と述べるなど、サポート態勢とのトレードオフによる低価格戦略を強調した。

 HardEtherの専用線には、既設の光ファイバで使用されていないもの、いわゆるダークファイバを利用して拠点間を接続し、施設内に同社の開発した回線終端装置を配置する。

スタンダードタイプ・エンタープライズタイプ共用の回線終端装置(左)と、バリュータイプ用回線終端装置(右)。なお、回線終端装置の使用料金は月額利用料に含まれる

 ダークファイバの利用については、契約上一部の事業者のみしか明確にされなかったが、株式会社TOKAIをはじめとする複数の第一種電気通信事業者と契約を締結した。また、拠点への配線引き込みや終端装置の設置といった開通工事および開通後の保守は、三栄通信工業株式会社株式会社東電通と提携する。

ソフトイーサの持つ技術を還元する

 発表会では、HardEtherサービスの先行導入事例として、ロボットスーツで有名なサイバーダインの事例が挙げられた。サイバーダインは、同社の本社社屋と筑波大学、同社の「サイバーダイン・スタジオ」をHardEtherで接続し、通信を行なっている。

サイバーダイン社CEO 山海 嘉之氏

サイバーダイン社CEO 山海 嘉之氏

 会場にサイバーダイン社CEO 山海 嘉之氏が登場し、「筑波大学とサイバーダイン社の各種施設は、距離は離れているものの“つくば”という地域で1つの研究施設であり、実地拠点でもある。ここでHardEtherによる高速Ethernetが使えるのは非常にありがたいこと。10月初旬に開通してからトラブルもない」と高く評価した。

 また、同氏は「今後、遠隔リハビリシステムや遠隔医療システムなどに高速ネットの整備が必要となる。そのためには安価な専用線サービスは欠かせない」と、HardEtherサービスの事業拡大に期待を寄せた。

 発表会の最後に、HardEtherによる通信デモが行われた。通信実験は、会場であるサイバーダイン社本社社屋と筑波大学との間で行なわれた。

登 大遊氏

終端装置を手にする登 大遊氏

 まずはフレッツ回線によるVPN接続の通信実験が行われると、スループットは送受信ともに65Mbps前後、遅延が3.6ms前後となった。次いでHardEtherによる通信実験が行われたが、スループットは送受信ともに900Mbps前後、遅延が0.05msという結果となった。

 登氏は記者会見の最後で、「我々も5年間会社を運営してきて、安定するまでに数年を要した。その間、実際に広域イーサネットが必要と思う時期もあったが、料金が高額なためになかなか手が出ないという状況もあった。このHardEtherという事業は、大幅に利益が出るものではないと予想しているが、弊社のようなベンチャーをはじめとする企業に低価格で提供することで、そういった企業、ひいては社会に我々の技術を還元し、ある種の社会貢献ができるという意味があると思っている」と結んだ。

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