プラスアルファの頭の良さが評価される
では、具体的にグーグルが求める人材を知るため、入社試験の傾向を竹内氏に聞いてみた。同氏は「専門知識にプラスアルファの要素が求められている」と述べる。
「まず、高度な数学の素養が求められます。さらに数学だけでなく、物理学の要素も非常に高いレベルで含まれている問題が多いです。一見すると発想のユニークさを問う問題が多いと思わせるんですが、単におもしろい発想だけではダメ。広範な専門知識に裏打ちされた正しい解答にたどり着いた上に、それらを壊してまったく違うユニークな視点を持っているかどうかを問うているのでは」(竹内氏)
冒頭で紹介した、「体が10円玉のサイズになって、ミキサーに入れられる絶体絶命のピンチに陥ったときにどうする?」といった問題を例に竹内氏に解説してもらった。
「この問題は、物理学の常識であるスケーリングと言われる分野の知識が必要とされています。スケーリングの有名な例題で、アリの身長が10倍になったらどうなる、という問題があります。そこから考えれば身長が10倍になると、体積は1000倍(3乗)で、表面積は100倍(2乗)。生物の身体の強度は表面で決まるので、この問いは密度を保ったまま、質量が小さくなるところがポイントなんです。小人になっても、密度は一定なので筋力はそれほど衰えませんが、質量が小さくなっています。つまり、単にミキサーの中からジャンプして外に逃げれば良い、というのが模範解答になります」(竹内氏)
先生、文系の僕には難しいです(泣) でも、「ノミは自分の身長の何倍も跳べますけど、人間だってノミのサイズになれば跳べますよ」という言葉でなんとなく理解したフリをする。
本書で「現役IT技術者」は次のようなユニークな解答を行なう。「体が急激に圧縮されたときに発熱するから、その熱でミキサーを割る」。竹内氏はこの解答を「物理学的にも必ずしも間違っているとは言えないし、発想の鋭さが評価されるのでは」と述べる。単に正しいだけではなく、柔軟な頭脳を持つ人材かどうか見極められているのである。
