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誰も知らないITの未来 第2回

LUNARR高須賀 宣 vs UEI清水 亮 ガチンコ放談 第2回

技術者社長が語る「ケータイは第2の脳」

2008年07月02日 09時00分更新

文● 二瓶 朗

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ケータイにあるベネフィットとマルチウィンドウにあるベネフィット


株式会社ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO 清水 亮さん

株式会社ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO 清水 亮さん

高須賀 僕の仮説かもしれないですけど、ごく一般の人がネットのベネフィットに触れるキッカケを作ってくれたのは、アメリカの場合はPCだと思うんですよね。日本の場合はそれがケータイだったと。だからそこに執着心があるんじゃないかなあ、と。だからこれから先もここにネットのベネフィットがあると信じているんじゃないですかね。
清水 いや、僕は違うと思いますよ。それはね、ケータイのほうが圧倒的に便利だからだと思うんです。
高須賀 便利だから!? いつでも持ち運びできるからとか?
清水 それもありますけど。なんといっても「小さくて高性能だから」ってところにあるんだと思います。例えば、デスクトップPCってあまり使われなくなってきていますよね。ノートPCのほうが一般的になってきています。
高須賀 そうですね。
清水 片付けられるとか、軽いとかそういう理由で選ばれていますよね。そうすると、だんだん「持ち歩けること」「軽さ」ということが性能の一部になっていくんです。「CPUのスピード」「メモリの搭載量」なんていうことがどうでもよくなっていくんですね。
高須賀 うんうん。
清水 ケータイの世界というのがまさにそういう状態なんです。いまのケータイは、端末個々の性能というものがほとんどユーザーに伝えられないことで成功していると思うんですよ。例えば電話帳もそう。何件まで登録できるってことはカタログに書いてあるけど、もはや誰も見なくなっていますよね。そしてヒープ領域がどのくらいとかアプリをいくつダウンロードしておけるとか、誰も気にしていません
高須賀 なるほど。
清水 デザインや色で選んでいるのであって、ワンセグが載るとか音楽再生ができるとか機能に関しては気にするかもしれませんが、機体の持つ性能を吟味して選ぶ人はもういないでしょう。もう別のカルチャーが作られているんです。そんなケータイの世界からすると、PCとWebの世界のほうが奇妙に見えるんですよ
高須賀 うーん。
清水 なぜかというと、PCで見るWebって便利そうで不便に感じてくるんですよね。机に座っていないとメリットが得られない。そして、ケータイには「電源を入れる」といった手間がいらないんです。開いた瞬間に、さっき画面を閉じたときと同じように瞬時に起動しますから。取り出して開いたとき、レイテンシがほとんどない。ケータイを自分の第2の脳のように使えるんです。もう1つ、ケータイの画面は小さいから情報量が少ないと思われがちですけど、PCの画面が大きいのは意識のレイテンシを減らす工夫なんですよ。どうせ人間は一度にひとまとまりの文章しか読めない。実はマルチウィンドウって本来は要らない機能だと思うんですよ。気休めっていうか。高須賀さんがMZを使っていた頃、マルチウィンドウって必要でしたか?
高須賀 たしかにかっこいいとは思ってたけど、実際には必要なかったかな(笑い)
清水 ですよね(笑い)。最近PCでも大画面というのが当然になってきましたが、PCで作業するとき、ウィンドウがたくさん開いて、たくさんの情報量があるのは便利なんですけと、実際のところ全部一度に見られるわけではありませんよね。
高須賀 そうですね。
清水 作業中に見ているのは、結局1つのウィンドウだけなんですよね。画面を新しく開いて、そこにある情報を読み取ろうとすると、ユーザーにレイテンシが生じて、2~3秒対応できなくなってしまうんです。ほかに開いているウィンドウに視点を移したときに、そのウィンドウにすでに情報が表示されていたら、ユーザーは自分にレイテンシを発生させることなく、すぐに頭を切り換えられるんです。だから大画面にいくつものウィンドウを開いて情報を一斉に表示しているんです。逆に言えば、一度に読める情報って、実はケータイ電話の画面に表示されているものと情報量にそれほど違いはないと思います。
高須賀 なるほどね。

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