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サイボウズ創業者 決断の真意

「日本発」なんて実はありえない? ITならアメリカで勝負!

2007年12月12日 00時00分更新

文● 清水真砂

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月刊アスキー 2008年1月号掲載記事

日本企業が経済的な壁にぶつかるたびに何度となく語られるのが日本の“ものづくり”精神だ。だが、残念ながらソフトウェアの分野ではマイクロソフト、IBM、SAPといった米国企業になかなか太刀打ちできていないのが現状だ。しかし、もしかしたらそのメイドインジャパンへのこだわりこそが日本の問題なのだとしたらどうだろう?

LUNARR社CEO、高須賀 亘氏

LUNARR社CEO、高須賀 亘氏。LUNARR社は米国オレゴン州ポートランドに拠点を置くソフトウェア企業。独自に開発したSaaSモデルのコラボレーションソフトウェア「LUNARR」を提供している。地元メディアなどでも取り上げられ、現地では有名企業となっている。5年後の2011年末にユーザー数100万人、売上高100億円を目指す。

「“日本発”はITの世界では通用しません」と語るのは米国 LUNARR(ルナー)社のCEO高須賀宣氏だ。高須賀氏はグループウェアの分野で日本の国内トップシェアを争うサイボウズ株式会社の元社長であり、創業者の1人だ。2005年にサイボウズを退社後、米国に渡り、自らの資金1千万ドルを投入して新たにLUNARR社を立ち上げた。本社のあるポートランドでは日本人の起業は珍しいため、地元メディアなどにも大々的に取り上げられることとなった。 

ベンチャー企業が集まるシリコンバレーではなく、ポートランドを選んだのも、実は、米国で話題になるための「作戦だった」そうだ。ここまで米国にこだわった理由を高須賀氏はこう語る。「以前の会社で感じた限界は、このままでは世界的なソフトウェアベンダーを目指すのは難しいということでした。米国は世界市場の40%を占めています。そこで戦うことが、世界市場へとつながります」。

先月、LUNARR社は日米同時にコラボレーションソフトウェア「LUNARR」のα版を公開した。高須賀氏によれば、そこでも日米の違いを感じたという。「英語でリリースを打つということの大きさを思い知りました。日本から日本語で配信したとしても国内のメディアに取り上げられるだけですが、米国から英語で発信したことによって、数時間後にはロシアのニュースサイトにまで掲載されました」。また、ビジネスのスピード感も違う。「発表から3日後には大手ソフトウェア企業から協業のお誘いがありました。サイボウズのときは一年かかりましたが(笑)」。

IT市場の場合、“日本から世界へ”という考え方そのものに変革が迫られているのだろうか。「ITの世界市場の中では、日本市場はわずか10%の規模でしかありません。ITの場合、自動車や家電と違い、足元に市場がないのです。世界市場を目指すならば、日本から始めることは決して有利とは言えません」。LUNARRの成否が日本の起業家の在り方を変えてしまうかもしれない。


新たなるコラボレーションソフトウェア「LUNARR」は革命を起こすか?

「LUNARR」はLUNARR社が提供するSaaSモデルのコラボレーションソフトウェア。アンドリュー・マカフィーやトム・フレンスキーなど米国IT界にも熱烈な支持者がいる。現在はα版を公開しており、招待制で参加が可能。β版(2008年1月に公開の予定)までは無料だが、将来的には有料化を検討している。

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