「ワイヤレスブロードバンドの10年後を考えて、禍根を残すことのないように」

イー・アクセスら3社、モバイルWiMAX免許割り当てに関する要望書を提出

2007年12月20日 19時08分更新

文● 編集部　飯塚岳史

　「2.5GHz広域帯無線通信アクセスシステムの免許割り当て」について、今月21日に電波監理審議会による諮問が予定されているが、それに先立ち、同免許の申請を行なっているオープンワイヤレスネットワーク(株)と、同社の主要株主であるイー・アクセス(株)、ソフトバンク(株)の3社は、総務大臣および電波監理審議会会長への要望書を本日提出した。

　同日、3社は緊急記者会見を行ない、イー・アクセス取締役会長の千本倖生氏、ソフトバンクBB(株) 取締役専務執行役員宮川潤一氏、オープンワイヤレスネットワーク代表取締役社長深田浩仁氏が、要望書の内容に関する説明を行なった。

イー・アクセス会長の千本倖生氏

「今回の要望書は我々が認定されようとされまいと関係ない」(千本氏）

　千本氏は、今回の2･5GHz広域帯無線アクセスシステム（以下モバイルWiMAX）の免許付与への手段について「（周波数帯の）免許認定史上で、各社によるこういったコンテストは初めての事であり、我々は高く評価しております。そういったコンテストが日本の手段としてこれからも続いていくと思うが、今回のことを試金石として、色々なことを双方が学んでいく必要がある。今後の認定プロセスのためにもこういうことを考えていただきたい、というために提出いたしました」と述べた。

　また、要望書として提出した理由としては「『特定基地局の開設計画の認定』について、諮問前にも関わらず、諮問後に即日答申がされるような報道がされている。これは各関係会社の経営に重大な影響を与えるので、審議会には慎重な審議をお願いしたいということ。もうひとつとしては、答申にあたって公正性を求めることと、認定事業者の経営の安定性、競争環境の観点から留意しておいてほしい事項がある」と説明した。

明日に控えた諮問に向けて、3社による要望書を提出した

モバイルWiMAXではMVNOも考えて公平性を

　千本氏は要望書の内容について、「諮問内容の公開及びそれに基づく意見聴取の要望」、「審査期間の公正性」、「モバイルWiMAX技術を選択する事業者に対する要望」、「財務的基礎に関する審査に対する要望」、「アイピーモバイル跡地の周波数利用も考慮に入れた審議に対する要望」、「事業者選択に対する要望」といった6つのポイントを挙げた。

要望書内のポイントは6つ

　この中でも「モバイルWiMAX技術を選択する事業者に対する要望」について、「本認定を受けられなかった事業者も含めたMVNO（仮想移動体通信事業者）が、認定を受けた事業者からネットワークの卸売を受ける条件について、条件を明確にすべきである」という要素を盛り込んでいる。具体的には、「事業者と同一の卸売価格（コスト）」、「事前の情報開示」、「同一時期でのサービス開始」など、認定事業者とMVNOの間で事業開始時に差が生じないようにすることが目的となる。この点について千本氏は、「我々が出した事業計画には、この3点が最初からおりこまれていた」と自社陣営の公平性を強く主張した。

　「財務的基礎に関する審査に対する要望」についても、免許を付与されながらサービスを開始することなく、今年10月に返上したアイピーモバイル(株)を例に挙げ、「電波は公共のもので、それを無償で借りて使わせてもらっているのだから、きちんと使用しないと日本市場にもダメージとなる。総務省も今回はこういったことを気にしていて、弊社も何度となくチェックを受けているが、それは正しいと思っている」と述べた。また、各社を構成する主要株主について、「所有株式のすべてを売却しない」という担保が必要であるとし、投資ファンドである米カーライル・グループ社が主要株主である(株)ウィルコムをけん制していた。

　ただ、千本氏はファンドが悪いというわけではなく、「あくまでリスクの問題。我々は事業のことを考えて進めているが、ファンドの基本性質を考えると手放すことも考えられる」と語った。

「認定にもれても、条件が合えばMVNOとして参入したい」(千本氏）

　なお、イー・アクセスとしては、本認定からもれた場合でも前述した「MVNOの公平性に対する条件」が合えば、という前提のもとで、MVNOとして参入する考えであることを明らかにしている。宮川氏は「ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムとしても同様だが、ソフトバンクモバイルとして見た場合は、3Gとのバランスもあるので、もう少し考える必要がある」と述べた。