月刊アスキー 2006年12月号掲載記事
―― '96年に登場した『「超」整理手帳』については、これまで語り尽くされてきたと思いますが、今回あらためて『「超」手帳法』を上梓された目的はなんでしょうか?
IT時代に手帳がどう適合するべきか、ということを考えています。
実は、「超」整理手帳はIT時代の手帳です。PCから情報を書き写す必要がある手帳はITシステムの外にありますが、「超」整理手帳はPCのデータをプリントアウトして使えるので、ITのシステムの一部になりうる。したがってこれからの時代にもっとも使いやすい。
今年からサイト上(「超」整理手帳プロジェクト)に、無料で使えるリフィルデータを置いて配布しています。カレンダーや書き込みシートなどスタンダードなものから、対数計算尺のような面白い物もあります。
―― 「IT時代の手帳」というとPDAをすぐに思い浮かべてしまいます。
スケジュールシートは紙でないとダメです。PDAはインプットとアウトプットの遅さが気になって、結局使いにくい。私も何台も買っては試しましたが、すべて1カ月と使い続けられませんでした。
いずれ紙のように書けて、電子的に残せる物が登場すれば、IT革命の第3段階になると思います。しかし今のところは、折ったり曲げられたり形を自由に変えられるうえ軽いなどの大きな利点がある以上、紙が一番だと思います。
―― 本書ではスケジュールの本質について多くの指摘が盛り込まれています。「スケジュール表を白くするのが手帳の目的だ」とありますが?
スケジューリングの目的は「集中する時間」を確保することにあります。私の場合、著作を書いたり、本当にやりたいことをするのにまとまった時間がいります。そのために予定がない時間を作る。
たまにスケジュールがびっしりであることを自慢している人もいますが、私は「自分がやりたい仕事をしていない人だ」と思ってしまいます。
―― 無為に生きないために、「竜宮城シンドロームに陥るな」という警告もされています。
人間は、明日やれることは今日はやらないものです。それが普通だし合理的でしょう(笑)? まずはそういう認識を持つことが大事です。
そもそもスケジューリングは人間の能力を超えたものです。人類が農業だけをやっていた時代には、季節ごとに種を蒔いて収穫する、というスケジュールで仕事ができた。
あるとき、人類は「週」という大発明を行ない、7日間単位のスケジューリングを組むようになりました。しかし、いまは週単位以外のスケジュールで進んでいる仕事や、期限の異なる仕事が並行して走っている。
私が仕事を始めた'60年代は、電話で予約もせず、ふらりと先方に出向くことが可能だった牧歌的時代でした。しかしいまは事前アポイントとスケジュールが必須の時代。
時間通りに行動するというのは比較的新しい現象なんです。だからこれを当然と思うと失敗する。人間の能力を超えたものだ、と理解して対策するのが大事です。