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【レビュー】撮影画像で知る「α700」の実力(後編)

2007年12月06日 11時00分更新

文● 小林伸(カメラマン)

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直感的な操作系は薄暗いライブ会場でも有効


 ライブ会場のように周囲が暗い状況では、α700の特徴である「ナビゲーションディスプレイ」と「クイックナビゲーション」はかなり有効に働く。

ナビゲーションディスプレイとクイックナビゲーション

液晶画面上に撮影情報を一覧できる、α700のナビゲーションディスプレイ。Fnキーとの組み合わせで、この状態でほとんどの設定変更が行なえてしまうのはα700の特徴

 他社でも似たような「情報表示」機能は装備されているが、普段使用しているD200のインターフェースは、α700のクイックナビゲーションのようにFn(ファンクション)ボタンとの組み合わせで、11機能のパラメータをダイレクト設定変更できるといった部分まで踏み込んでいない。そのため、これまではリハーサルである程度設定を決めてしまい、本番ではその設定を動かさずに撮影するというスタイルをとってきた。

 しかしα700では、撮影中にふと思ったパラメータ変更をするのも気軽に行なえる。これなら、ライブ中に設定を変える気にもなるし、リハーサル中に積極的にパラメータを変更して、“当たり”の設定を追い込んでいくこともできた。

 試用し始めて、まだ何日も経っていない状況でもこういうことができるのはα700のインターフェースが優れているということの証左だと思う。



ISO感度変更もダイヤルで積極的に行ないたい


 もうひとつ便利だと感じたのは、ダイヤルを利用したISO感度のステップ数が、前ダイヤルでは1EV、後ダイヤルとマルチセレクター(十字キー)では1/3EVに設定されている点だ。

ダイヤル部分のアップ

ダイヤル部分のアップ

 例えば、昼間はISO 100で撮影していて、夕暮れに近付くにつれて、ISO 400、ISO 800とスピーディーに感度を挙げたいときには前ダイヤルをぐるっと回す。一方、露出補正的な考え方でISO感度を細かに調整したい場合は、後ろダイヤルを使うといった使い分けが可能だ。

 今後のデジタルカメラでは、絞りとシャッター速度は固定して、感度で露出を調整するといった使い方も増えてくるだろう。従来の製品では高感度に行くにしたがって画像の粗さが目立つため、現実的ではなかったが、ノイズレベルの低減によって、こういった使用方法も現実味を帯びてくると思う。



良好だが、細かな調整も期待したいグリップ


 縦位置グリップに関しては、グリップ形状がα700本体のグリップ形状に近く、ホールド感はとても良好だった。しかし、その位置に関して少々違和感も感じた。

 レンズとの位置関係を重視したためと想像するが、もう少しシャッターボタンが端(外側)にあってもいいのではないかとも感じたのだ。マルチセレクター(十字キー)の位置が、α700の本体より若干親指に近い印象があるのも気になった部分だ。

 試用してみた感想としては、「縦位置でも横位置と同じ位置関係を再現することには、それほどこだわる必要はなく、実際に使用した際に自然に指が届く場所という基準でインターフェースを設計したほうがいいのではないか」と思った。しかし、これはかなり個人の感覚の差がある部分だと思う。一概に良い悪いを決められない部分だし、実際は使い込んでいくうちに慣れてしまう程度のことかもしれない。



撮影サンプル(2) ライブ写真で見る、ISO 6400の実力


 α700を試用している際、ライブを撮影する機会があったので、その際の写真を一部掲載する。掲載している写真はすべてISO 6400で撮影したものを、長辺800ドットにリサイズして掲載している。光源は、タングステンランプがメインで、それに青や赤のフィルターをかぶせたライトもかぶさった特殊なもの。スモークなどもたかれているので、かなり厳しい条件と言える(ホワイトバランスはタングステン固定で撮影している)。

使用レンズ

使用レンズのひとつ「70-200mm F2.8G」。超音波モーターを使用しており、静かで高速なAFが可能。F2.8mmと明るい望遠ズームレンズだ

 明暗差が強いシーンで、背景の白トビや人物の黒ツブレを防ぐ「Dレンジオプティマイザー アドバンス」に関しては、ライブなどのピンスポットのみを使用する照明では輝度差が激しくなる。そのような場合でもディープシャドウがつぶれていなかったり、ハイライトに階調が残っていたりして、その効果を実感できたた。

 これまでは、アーテイストの顔に当たる照明が激しく変化するような状況では、顔が黒くつぶれてしまったり、逆に飛んでしまったりすることがよくあったが、α700ではそういった状況でも、ツブれきらずにトーンが残っていたり、飛びきらなかったりとダイナミックレンジが広がった感じさえ受ける。

 ただし、その場の雰囲気に合わせるためには、“オート”で使用するより“アドバンスレベル設定”で現場の雰囲気に合った自分好みの設定を追い込んで使ったほうがいいようだ。そのような使い方ができる点にも魅力を感じた。ただ、これはライブでの話で、屋外での軽いスナップなどでは“オート”のままでも問題ないレベルと思う。

サンプル

【サンプル1】DT 16-105mmF3.5-5.6(70mm)、ISO 6400、シャッター速度1/200秒、絞りF5.6

サンプル

【サンプル2】DT 16-105mmF3.5-5.6(26mm)、ISO 6400、シャッター速度1/200秒、絞りF5.6

サンプル

【サンプル3】DT 16-105mmF3.5-5.6(80mm)、ISO 6400、シャッター速度1/160秒、絞りF5.6

サンプル

【サンプル4】DT 16-105mm F3.5-5.6(70mm)、ISO 6400、シャッター速度1/125秒、絞りF5.6

サンプル

【サンプル5】70-200mm F2.8G(85mm)、ISO 6400、シャッター速度1/200秒、絞りF5.0

サンプル

【サンプル6】DT 16-105mm F3.5-5.6(55mm)、ISO 6400、シャッター速度1/200秒、絞りF5.6

サンプル

【サンプル7】70-200mmF2.8G(135mm)、ISO 6400、シャッター速度1/200秒、絞りF5.6

サンプル

【サンプル8】DT 16-105mm F3.5-5.6(50mm)、ISO 6400、シャッター速度1/200秒、絞りF5.6

 なお、αシリーズの特徴のひとつである「アイスタートAF」機能もライブで有効に働いた。カメラを構え、ファインダーをのぞいた瞬間からAFが動作するので、ライブのような状況変化の激しいシチュエーションでは大変役立つ。

 ライブでは、アーティストの動きもそうだが、自分の撮影ポジションも激しく移動するので、ファインダーをのぞいたとき、ピントがぼやけていると一瞬とまどってしまう。その後で、シャッターボタンを半押ししてAFを動作させるのでは、どうしてもワンテンポ遅れる印象がある。そのような時、あらかじめピントを合わせておいてくれるこの機能には引かれた。

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