米アドビ システムズ(Adobe Systems)社は現地時間の19日、PDFや電子書籍を閲覧/管理できるソフトウェア『Adobe Digital Editions 1.0』を公開した。米アドビの製品ページから無償でダウンロードできる。
これまで同社が開発中のソフトを公開しているウェブサイト“Adobe Labs”にてβ版を提供していたが、今回、正式版をリリースすることとなった。
Digital Editionsは、DRMがかけられたファイルの閲覧に対応しており、電子書籍販売に使われることを想定されたビューアーになる。対応フォーマットは、PDFおよびIDPF Open Publication Standard(OPS)。
アドビによれば、Digital Editions対応のコンテンツは、『Adobe InDesign CS3』で簡単に制作できるとのこと。現状ではO'Reilly MediaやRandom Houseなどの出版社がサポートを表明しているほか、ソニーも自社の電子書籍リーダーで対応するという。
電子書籍といえば、これまで多くの会社がチャレンジしつつも、なかなかスタンダードを築けずに終わってきている分野だ。プロ向け印刷ソリューションで絶対的な地位を占めるアドビならば、今度こそ電子書籍を普及させてくれるのではないか──。そんな期待のDigital Editionsの実力を早速試してみた。
Adobe Readerいらずの軽快さ
論よりは証拠、まずはDigital Editionsを使ってみよう。ダウンロードしてDigital Editionsを起動すると、何もない空白のライブラリ画面が表示される。まずは無償公開されているサンプルライブラリーから電子書籍をダウンロードしてみよう。
ウェブサイトのライブラリーで読みたい書籍を見つけたら、脇にある“Read”ボタンをクリックすると、ダウンロードされたファイルが自動的にDigital Editions側のライブラリーに追加される。これだけで書籍の購入は終了だ。DRM認証などの作業はすべてバックグラウンドで行なわれるので、ユーザーが特に意識する必要はない。
閲覧は非常に快適。Adobe Readerのもっさり感とは無縁で、ページ送りも拡大縮小もきわめて機敏に動作する。もちろん手持ちのPDFファイルを読み込むことも可能なのだが、PDFインタラクティブフォーム、JavaScript、電子署名、3Dグラフィック、注釈、JPEG 2000で圧縮された画像──などを含むPDFには対応していない。これは、軽快な動作を実現するためのものだろう。実際、電子書籍の閲覧に的を絞るとしたら、これらのPDF機能はそれほど必要ではないわけで、適切な判断といえる。
もちろん、しおり、目次、ブックシェルフ(フォルダー)など、書籍の閲覧や整理に必要な機能はひと通り揃っている。アプリケーションのサイズがわずか3MB程度で、しかも軽快とくれば、Adobe Readerから乗り換えたいと思う人もいるのではないだろうか。
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