Digital Editionsがブラウザーから離れられない理由
さてここで、アドビがDigital Editionsで何を狙っているのかについて考察してみよう。インターネットでのコンテンツ販売ということで真っ先に思い浮かぶのが、アップルのiTunesだろう。現在の成功例であるiTunesと、Digital Editionsを比較してみると、ひとつの大きな差異が浮かび上がってくる。それはコンテンツの購入方法だ。
コンテンツファイルを整理するという点においては、両者は同じ思想で作られている。一方、コンテンツの入手方法を見てみると、iTunesが単体で購入から再生まで完結しているのに対して、Digital Editionsはウェブブラウザー経由でダウンロードすることになる。
一見してiTunesのやり方に比べて、Digital Editionsはスマートではない印象を受けてしまうが、それではなぜアドビはDigital Editionsにコンテンツの購入機能を追加しなかったのだろうか? そこに、アドビの戦略が透けて見える。
受け継がれるアドビのDRM管理ソリューション
もともとアドビは、Elementsシリーズを除けば、常にプロおよびエンタープライズ向けの製品のみに注力してきた。一見、コンシューマ市場を狙っているように見えるDigital Editionsにも、実はその方向性が貫かれているように見える。
つまり、アドビは、アップルのように直接コンシューマに対してコンテンツ配給を行なうのではなく、あくまでコンテンツ事業者へのソリューション提供にとどまろうとしているのだ。具体的に言うならば、それは電子書籍のオーサリングソフトであるInDesign CS3と、DRM管理ソリューション“ADEPT”(Adobe Digital Editions Protection Technology)の提供である。
かつてアドビは、ネットワークで配布されるPDFのDRM管理ソリューションとして、『Adobe Content Server』(ACS)という製品を販売していた。しかし、ACSの導入が進まなかったからであろうか、『Live Cycle Policy Server』という、イントラネット内での情報守秘ソリューションを開発し、DRM管理の技術を引き継いできた。この製品は現在も販売中だが、主に官公庁などへの納入を想定した製品なのでコンシューマにはほとんどなじみがないだろう。
そして、今回のADEPTにも、ACSやLive Cycle Policy Serverと同じDRM管理技術が採用されている。このADEPTはホスティング型のサービスとして提供される予定で、コンテンツ事業者は有償でADEPTのDRM認証を利用することになる。
電子書籍のデファクトになれるか?
アドビによれば、現時点では利用料金や日本での提供時期などの詳細は未定だが、料金体系は利用方法や事業規模によって変動するものになるという。もし個人に近い小さな出版社でも利用できるぐらいの金額設定だとしたら、これまでよりもずっと電子書籍への参入障壁が低くなり、一気に電子書籍の数が増えるかもしれない。電子書籍の同人誌が登場してもおかしくない。
Digital Editionsは今年後半にLinux版、およびフランス語/ドイツ語/日本語/韓国語/中国語版がリリースされる予定だ。Digital Editionsはアプリケーションサイズが小さいため、携帯電話機を含む各種モバイルデバイス用のものも作れるだろう。
作り手側は紙と同じソフトでデジタルコンテンツを制作可能で、読み手側は購入したコンテンツを視覚的に整理し、読みたいコンテンツを手軽に検索できる──。独自ファイル形式の乱立で普及が進まなかった電子書籍市場だが、Digital Editionsは、その状況を大きく変える可能性を秘めている。
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