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アドビが“Apollo”でリッチクライアントを変える(後編)

2007年03月11日 11時00分更新

文● 小口博朗

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 米アドビシステムズ(Adobe Systems)社が開発しているリッチクライアント(RIA)の実行環境“Apollo”(アポロ)。

 Apolloの詳細は前編に任せるとして、後半ではこの技術の足下を支える『ColdFusion』(コールドフュージョン)や『Flex Builder』(フレックスビルダー)といった開発環境に注目していきたい。なお、Apolloは開発中だが、この2製品はすでに販売されている。



ColdFusionはWeb 2.0サービスを統合する“ハブ”


ColdFusion 7 MXのパッケージ
高機能なウェブアプリケーションの開発に特化した『Macromedia ColdFusion MX 7』。独自の開発言語として“CFML”を用意する

 『Macromedia ColdFusion 7 MX』は、ウェブサイトの統合開発環境だ。膨大な数のユーザー情報を管理するソーシャルネットワークサービス(SNS)を始め、データーベースをグラフで閲覧できる解析サービス、送信した書類をPDFに変換してくれるウェブアプリケーションなどの開発に利用する。

 ColdFusionは、サーバーにインストールして使用するウェブアプリケーションの実行エンジンであり、ダイナミックウェブサイトの開発言語でもあるという2つの側面を持つ。

 プログラミングやウェブ技術の知識がある人には、PerlやPHPのようなものと言うと分かりやすいかもしれない。ウェブアプリケーションを操作するためのGUI(インターフェース)ではなく、そのウェブアプリケーションが扱うデータモデルをプログラミングする機能が中心になる。

 ColdFusionを利用するメリットとして、複雑なデータベースをGUIで簡単に構築できることが挙げられる。また、データベースからPDF文書や図表を 作成したり、全文検索することも可能だ。さらに、簡単なメッセージ機能も開発/利用できる。

アドビによるColdFusionのデモ アドビ システムズ(株)が6日に開催した記者発表会におけるColdFusionのデモ。顧客情報の氏名や住所などを記録するデータベースモデルを作る様子が披露された

 ColdFusionは、データベースサーバーやJava、.NET、Perl、PHP、Rubyなどで開発されたウェブサービスと柔軟に連携できるのも特徴だ。

 もちろんアドビ純正のテクノロジーであるPDFやFlashとの連携でも威力を発揮する。そのためアドビではColdFusionを、「アドビのテクノロジーのハブとなる戦略製品」と位置付けている。

ColdFusionの位置付け
アドビの発表会では、ColdFusionは、サーバーテクノロジーとPDF、Flashといったアドビ純正の技術をつなぎ合わせる“ハブ”となると説明された


Flex Builderはウェブアプリの“顔”をデザインするツール


 一方、『Adobe Flex Builder』は、ボタンやチェックボックス、データフィールドといった要素を配置して、アプリケーションのインターフェースを作るツールになる。

 ColdFusionが主に表示するデータを管理する役割(バックエンド)なのに対して、Flex Builderは直接ユーザーが目にするインターフェース(フロントエンド)の作成を担うというわけだ。

ColdFusionとFlex Builderの関係
ColdFusionとFlex Builderの関係。ColdFusionはアプリケーションが扱うデータモデルの管理、Flex Builderはデータを操作するためのインターフェースの開発に利用する

 Flex Bilder 2で作成したアプリケーションは、Flash(.swf)ファイルとしてブラウザーに読み込んで利用可能だ。なお、Flexアプリケーションのプログラムに多少手を加えれば、Apolloアプリケーションとしてデスクトップ家で実行できるため、その可能性はさらに広がる。

ColdFusionとFlex Builderアプリケーションの動作概念図 Flexアプリケーションは、“Flash Remoting”という技術を使って、ColdFusionがインストールされたサーバーと通信する

 Flex Builder自体は、無償で公開されているJavaの統合開発環境『Eclipse』のプラグインとして動作する。

 現在はWindows版のみが販売されているが、23日にはMac OSに対応したバージョン2.0.1が発売される予定だ。既存のユーザーは無償でアップデートが可能で、Flash Typeエンジンを使用したフォントの埋め込み、大規模アプリケーションのモジュール化、実行時のCSS適用といった機能が追加される。

 Flex Builderの価格は6万4900円からだが、GUIを備えずコマンドラインから操作する『Adobe Flex 2 SDK』なら無償で利用できる。



アドビ製リッチクライアントの進む方向


Scopio
次期ColdFusionとなる“Scorpio”(開発コードネーム)のロゴ

 ColdFusionとFlex Builderという開発環境に加え、Apolloというデスクトップ上の実行環境が揃ったいま、アドビはこのソリューションを一体どんな方向に進化させようとしているのだろうか? その答えの一端となるのが次期ColdFusionとなる“Scorpio(スコーピオ)”だ。

 Scorpioが掲げる目標は、ユーザー体験と開発効率の向上だ。アドビは説明会で、既存のHTMLアプリケーションでは不可能なオンデマンド型のプレゼンテーションサービスや、プログラムの診断に役立つサーバーモニタリングソフトを披露。CFMLから直接.NETコンポーネントが呼び出せるようになることも紹介した。

オンデマンド型プレゼンテーションサービス
ナレーション付きのスライドショーをサーバー上で作成するというオンデマンド型のプレゼンテーションサービス
オンデマンドのプレゼンテーション
サーバーの運用状態をモニタリングするツール。ColdFusionを利用して作成したアプリケーションを自身の開発用ツールとして利用している

 また、次世代リッチクライアントの市場でアドビが覇権を握るための大きなカギを握っているのが、PDFの扱いだろう。PDFは資料の配付や電子書籍の販売といった、ウェブページとも紙とも違う新しいメディアとしてその地位を固めつつある。

 Scorpioでは現行のColdFusionが実現しているPDFの作成機能がさらに強化されるのはもちろん、PDFフォームの抽出や差し込み、既存のPDF書類の操作といった機能も盛り込まれる予定だ。

Scorpioで強化されるPDF機能 PDF内のデータの挿入/抽出が可能になれば、例えばデータベース内のユーザー情報を利用し、書類内の宛名まで自動で差し替えたPDFを一挙に作って、一斉送信。PDFファイル内のアンケートに答えて返信してもらい、その入力内容を元に自動でデータベースを作るといった応用も可能になる

 アドビのこうした動きに対して、前編でも紹介したようにマイクロソフトからも同様のウェブ開発統合環境の“Microsoft Expression Studio”が発売されている。次世代リッチクライアント市場の覇権を巡って、今後両社の争いは加熱していきそうだ。



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