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割のいい“ネットオークションの出品代行バイト”、実は??

2007年02月26日 15時30分更新

文● 松本佳代子、イラスト●さとうゆり

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ITが身の回りに普及する中で、それに絡んだ犯罪も確実に増えている。その片棒を担がされていたのかもしれない。そんな例を紹介しよう。

 東京都調布市に住む専業主婦の山崎みゆきさん(40、仮名)は、新聞に折り込まれていた求人広告に目を通していた。2歳の息子を預けてまで働く気はなかったが、家事と育児の合間にできる都合の良いアルバイトを探していたからだ。“リサイクル品をネットオークションに出品する仕事”の求人に偶然出会ったのは、そんなときだ。

 広告に提示されていた条件は“ネットオークションの経験者で、自宅でネットオークションに出品することができる人”だった。ネットオークションのヘビーユーザーであったみゆきさんには理想的な仕事に思えた。大手オークションサイトやショッピングモールサイトのどちらでも、プラスで1000近い評価を得ていた。



値段は問わない、とにかくプラスの評価が欲しい


 すぐに仕事の詳細を聞くために電話をした。すると、広告に書かかれていた条件を改めて確認されただけで、すぐに契約書が送られてきた。電話では詳しく説明されなかったが、契約書によると、仕事内容は“某大手ネットオークションに新規IDを作り、出品代行する”、というものだった。ただし、いくつかの条件があった。出品金額は自由で6割が取りぶんになること。取引相手からの評価を必ずプラスにすること。代行業務の終了後にはIDとパスワードを雇用主に引き渡すこと――などである。

 いずれも、みゆきさんにとっては簡単なことだった。1点だけ気になったことといえば、出品金額が自由で最低ラインが設定されてないことである。落札金額が高ければアルバイト代も多くなるので嬉しいが、逆に低すぎたら雇い主の会社に損をさせるのではないか――そんなふうに考えたためだった。

 会社員の夫にもバイトのことを相談した。夫は「まぁ、やってみたら」とだけ返事した。仕事が忙しいせいか、よほど信頼されているのか、単に興味がないだけか、家と育児のことはほとんどみゆきさんに任せたきりだ。アルバイトについても「オークションの代行のバイト」とだけ話したが、それ以上は聞いてこなかった。



商品を売りさばき、収入を得たが……


 みゆきさんは正式に契約書にサインをして業者に返送した。するとまもなく「リサイクル品」と書かれた大きな段ボール箱が自宅に届いた。中には、新品同様の女性用のブランドものの服やバックなど、合わせて10数品が詰まっていた。もっとも、本物かどうかはみゆきさんには区別が付かなかった。

 出品業務に取り掛かるころには、金額の最低額が設定されてないことはすっかり割り切って、買い手が付かないものはどんどん値段を下げて再出品した。安く売れたところで自分の収入が減るだけだ。値段の縛りがないことと、自分の愛着のない品を売るというのは、とても気楽だった。

 おかげで、ひと月も経たないうちにほとんどの商品をオークションで売りさばくことができた。契約通りに、取引金額の4割を雇い主の口座に振り込んで、プラスの評価を得たIDとパスワードを担当者にメールした。電話報告のときに、仕事の継続も可能だと告げられたが、やはりどこかに不安を感じて断った。

 みゆきさんの収入は合計で3万円弱。もっと頑張れば高く売れるものもあったとは思うが、手を抜きまくって3万なら十分だった。残りの作業は、売れ残ったスカート2点を返却するだけだ。

 おかしいなと感じ始めたのはこのときだ。



突然連絡が付かなくなる


 雇い主からは、商品の返却先を別途連絡すると言われていたが、待ち続けても返事がない。担当者にメールをしたが反応はない。しびれを切らして電話をすると、「その番号は現在使われてない」というメッセージが流れた。つい2週間前には通じた番号だったのに一体何が起こったのだろう? いつか残ったスカートを、高額な商品だと奪い返しに来るのではないだろうか……。

 とてもそうは見えないスカートだが、万が一のために丁寧に梱包してクローゼットの奥に保管した。何が起こるか分からないので、送られてきた書類や梱包されてきた段ボールも、証拠品としてすべて取っておくことにした。そんな状況になると、すべてが怪しく思えてくる。そういえば連絡先の電話番号が、携帯電話だけだったのも怪しい点のひとつであった。

 不安な日々を過ごしていたみゆきさんだが、アルバイトの仕事内容について詳しく話してない夫には、相談できなかった。その後、契約した会社名を検索サイトで調べると、訪問販売で評判の悪い企業と同名であることが分かった。ただ社名が一緒なだけで、同じ会社なのかどうかまでは分からない。



妹の指摘で気付かされる


 さらに半年ほどたって、妹から「オークション詐欺のために、取引評価の高いIDとパスワードを売買する仕事があるらしい」という話を聞いた。「もしそうならば、売れ残ったスカートを奪いに来るのが目的じゃないので、ちょっとホッとしましたが……」とみゆきさんは複雑な心境だ。

 みゆきさんの妹が言うように、雇い主はオークション詐欺の会社で、何らかの問題が発生して行方をくらましたのかもしれない。それとも目的はほかにあったのか。それは未だに分からない。ただハッキリしているのは、まともだと思って始めた仕事が、思いのほか怪しいものだったということだけだ。

 みゆきさんにとって唯一の救いは、まだ自分の作ったIDが他者に利用されてないということである。

編注: オークション用に作成したIDを金銭で譲渡することは、オークションサービスの規約上まずあり得ないことです。また、詐欺罪の共犯者として幇助の罪に問われる可能性もありますので、こういった勧誘には絶対に乗らないようご注意ください。

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